夕刊フジ
Photo
パウエルのソフトバンク獲得報道にぶ然とするオリックス・中村本部長

 オリックスへの入団が“内定”していたパウエル投手に関し、ソフトバンクが29日、突如獲得を発表した。「寝耳に水。ア然としている」(中村球団本部長)と球団は代理人に真意をただしたが要領を得ず、連盟へ異議申し立てを行った。30日、連盟の会長を交え中村本部長とソフトバンク側の3者会談が行われるが、泥仕合の様相が大。オリックスはパウエルに対しても法的手段も辞さずの構えだが、果たして-。(夕刊フジ編集委員・高塚広司)

 「契約は最後の詰めが肝心。交渉の途中経過は教えられない」--スケールの大きなM&A(合併・買収)の修羅場を幾度も潜ってきたオリックス本社の社訓の1つだが、今回のパウエル問題を見る限り、子会社の球団までその精神が行き渡っていなかったようだ。

 鳶(とんび)ならぬ鷹に油揚げをさらわれかねない前代未聞の珍事はいろいろな出来事が重なった結果、発生した。

 今月11日、オリックスはパウエルとの契約が合意に達したと発表。1年契約で推定年俸5500万円プラス出来高という契約内容や背番号「50」まで公表した。

 ところが、厳密にいえばこれがフライング。この時点では統一契約書にサインされておらず、「(内定の)発表をしていいか」の問いに内諾をとった段階だった。

 サインがファクスで送られてきたのは22日のこと。このファクスでのサインというのがまたくせ者で、オリックス側弁護士は「効力がある」との見解だが、連盟関係者は「原本でのサインのみ有効」と意見が分かれる。

 さらに、たびたび名前が出てくる統一契約書がまた、ややこしい。

 プロ野球の選手契約は球団がサインされた統一契約書を所属連盟に提出し、「この選手と契約してよろしいか」と承認を得なければならない。連盟会長が契約を承認し、選手が球団の支配下選手になったことを公示、コミッショナーに通告する。この手続きが完了して初めて「契約した」ということになるのだ。

 パウエルに関しては、29日段階でこの公示がなかった。だが、実際問題として、外国人選手には英文でしたためられた別口のメジャー方式の契約書が作られており、それが優先されている。統一契約書は外国人選手にとって、単なる日本球界へ参加するための仮契約に過ぎないとの見方もあるのだ。

 問題は、今回のパウエルのケースで統一契約書に直筆のサインがないだけでなく、『本契約』に相当する英文へのサインもなかったことだ。

 「他球団のことなので詳しくはわからないが…」と前置きして、阪神・沼沢本部長は言う。

 「ウチの場合は、担当者が渡米して統一契約書にサインさせてから正式発表します。日本でサインということもありません。最後の最後に、何があるかわかりませんからね。われわれの場合は仮契約書で半分阪神、統一契約書にサインして100%安心。電話やファクスでは危ない、という認識があります。仮契約の段階では発表しません」

 やはり詰めの甘さは歴然としているようだ。この盲点をソフトバンクが突いた。「日本プロ野球組織(NPB)に身分照会したところ、自由契約だったのでパウエルサイドとは(1月)10日に初めて交渉のテーブルについた。その後もう1度交渉し、先週末にサインを交わした」とソフトバンクの竹内孝規常務。直接の面談で原本のサインもあるという。

 どうみても状況が不利なオリックス。今後採る道は球界の慣習、良識に訴える路線のよう。

 「ソフトバンクやパウエルサイドに憤りを感じている。連盟での話し合いの結果次第では、パウエルに対して法的手段も考えている」と中村本部長。今後、同じようなケースが生じることも考えられ、「球界に一石を投じる気持ちで一歩も引き下がらない覚悟」と不退転の構えだ。いずれにせよ、30日に一気に解決とはいかないだろう。

 昨オフは前川、中村の退団騒動で球界をにぎわし、今季もキャンプ直前思いもよらぬ騒動に巻き込まれたオリックス。2年連続でオフのお騒がせチャンピオンに輝きそうだ。


中村さんの顔からつたわります(ノДT)笑