姉とのおしゃべりで爆笑した。

 

 

亡兄はかなりのグルメだった。

学生時代、学校の帰りに新宿の家に寄ると、当時まだ日本には出回っていない珍しい食材をデパートで買ってきて色々食べさせてくれた。

 

外食もよくお誘いをかけてくれた。

1番印象に残っているのは当時、新宿に最初の高層ビル、京王プラザホテルが建った時。

「今夜、ここに泊まっているんだけど、夕食にいらっしゃい」

と電話がかかってきた。

 

 

買ったばかりの白いスーツで、いそいそと出かけたら、ホテルのロビーは外国人だらけで、華やかな社交場だった。

 

異次元の世界。

 

着飾った白人の人達は気取る訳でもなく、目が合うと微笑んでくれるそのフランクさもカルチャーショックだった。

 

 

話は戻って…

 

 

義兄はとにかく「美味しい物を食べたい」、「食べさせたい」とういう気持ちが人並み外れている人だった。

 

 

とにかく美味しい物をせっせと買い込んでくる。

 

いちごの季節は毎日いちご。

マスカットの季節はマスカット。

マンゴーの季節になると毎日マンゴー。

 

 

姪がジムに通っていた時、一週間の食事メニューを提出させられた。

 

それを見たトレーナーが

「まるでカブトムシですね」

と言ったそう。

 

カブトムシは食べても、スプーン一口か二口だと思う。

 

 

ケーキも3人家族だから、通常、3個のはず。

ところが6個だったり、9個だったり…

 

 

それを見ると姉は

「いつもこうして余計な数を買ってきて、私がそれを食べなきゃいけない。

私が太ったのも、あの人のせい」

と怒っていたらしい。

 

 

「今、思うとあの人はみんなで食べようと買ってきたのに、何故か私は1人で処理しなくてはならないと思い込んだいたのよ」

 

 

「そんな事に気づきもせず、ひたすら食べていたというのも笑える!」と私。

 

 

確かに姉は私と違って胃は丈夫だし、旺盛な食欲の持ち主。

 

向上心、向学心、行動力、全て私は足元にも及ばない。

暮らしの中のセンスも妥協せず、自身のオシャレも気を抜かない。

唯一、弱点は食欲。

 

 

「もっとあの人の優しさを汲んであげれば良かった」

と、姉の反省。

 

 

 

が、亡くなった後でも、私が行くと何故か人数分以上用意されているのだった。