傷口に塩ではなくてはちみつを塗りこむようにひだまりにいる(月原真幸)

塩をぬりこむというのは多かったですが、こちらははちみつ。

はちみつとひだまりというと、なんだかはちクロのことを思い出してしまいました。

はちみつは本当に肌にいいらしいですが

ひだまりも、傷にはいいはずです、きっと。

質問にこたえないままその舌は塩キャラメルの塩をみつける (やすたけまり)


塩キャラメルって、全然塩辛くなくて、むしろ甘いんですよね。

甘さを際だたせるための塩を舌で探り当てる、ことばは出さない。

私ったら塩を忘れたおにぎりのような顔して突っ立ってたの (遠藤しなもん)


「塩を忘れたおにぎりのような顔」というのがいいなあと思いました。

塩を忘れたおにぎりを「食べたときの顔」じゃなく、「おにぎりのような顔」ってとこが。

誰か、あとから塩をかけてくれた人はいたでしょうか。


飽和することを知らない瞼裏で塩分濃度はただ増すばかり (はせがわゆづ)


どんどん流れ出ていく涙。

塩分濃度が増すんだから、水分だけが流れてしまって

ひりひりするような塩分だけが自分に残ってしまうような感じでしょうか。痛くてつらい。


つい今日も彼女の好みに茹でていた玉子に塩をおもいきりふる(五十嵐きよみ)


どきどきする歌です。

たぶんゆで卵だから朝ご飯で、だから二人は一緒に暮らしているのに、

彼はまだ、前の彼女に対する感覚が抜け切れていない。うわーくやしい。


ヘルシンキの海のことなど思いつつじゅんと脂をこがす塩鮭  (久野はすみ)

久野さんはヘルシンキに行かれたことがあるんでしょうか。

フィンランドのほうでとれた鮭。

一日のなんでもないところから、ヘルシンキまでとんでいける感覚がいいなあと思いました。


もう我慢しなくてもいい父親と減塩されていない生ハム (矢島かずのり)


我慢しなくていいお父さんのことがとても気になります。

普通は、塩分を控えろと言われたら、控え続けなくてはならないわけですから。

そうなると、この生ハム(高級品?)を食べる食事は

家族にとって大きな意味があるようです。



塩分の多いみずうみ照れながらあなたとふたりに浮き足立つ (富田林薫)


「塩分の多いみずうみ」は、「浮き足立つ」の序詞で

この歌は別に、死海にきてるかどうかは関係ないんじゃないかなぁと思います

(が、どうでしょうか)