某県某市傍聴商店街の端っこ、「カフェ誇大妄想」にて。

今日も暑くなりそうだ。

マスター:いらっしゃいませ!

訪問者:こんにちわ高輪君。小島君がよくここに来ると聞いたんだが?

マスター:これはこれは商店会長。今日も暑いですね。

で、小島くんにどんな用が?

商店会長:急ぐ用じゃないんだが、あの件に関して小島くんが詳しいと聞いてね。

先輩:小島はおれですが?「あの件」ってなんですか?

商店会長:ああ、すまん。初めまして。商店会長をしている山本です。

実は先週孫たちと一緒に恐竜展に行ったんだが、恐竜そっちのけでアンモナイトが欲しくなってしまって…

先輩:横浜でやってる「巨大恐竜展」ならおれも行きました。巨大な生きもの大盤振る舞いでしたよね。魚竜化石は?

商店会長:あれもすごかったが、なんとなく夏祭りで作ったイルカのはりぼてみたいで…

ショニサウルスの頭骨レプリカ。ショニサウルスは全長22メートルと推定され、頭骨は長さ4メートル

世界最大の魚竜ショニサウルスの頭骨。目に骨のリング(強膜輪)があるのはいかにも古代の爬虫類…

先輩:ショニサウルスには本当に歯がなかったって図録に書いてあった。

商店会長:夏祭りのイルカ…イルカの飾りを作ったら手抜きだって言われてね子供に…作ったやつは時間がないから歯をつけなかったって言ってた。

先輩:あのイルカ生き生きしてていいなと思ったけど…じっくり見なかったから歯があったか覚えてない。

ふゆ:イルカって歯がびっしりで怖いじゃない。最近は海水浴客にかみつくイルカもいるそうだし。

商店会長:…やっぱり魚竜よりアンモナイト…

先輩:世界最大のあれですか?

世界最大のアンモナイト。

世界一大きなアンモナイト(レプリカだけど)。100年前から「世界一」だそうです。

商店会長:そうじゃなくて、欲しいのはこういうの。ただ…

先輩:ただ?

世界最大でも日本最大でもないけどきれいなメソプゾシア。北海道産。

北海道のメソプゾシア。日本一きれいなでかアンモナイトだと言われたら信じます。

商店会長:どうして、殻の一番外側に模様がないんだろう。

先輩:はて?

商店会長:実は買えそうなアンモナイトを少し検索してみたんだけど、どれも成長すると模様が消失するらしいんだ。

棘とか筋模様とかが。

先輩:殻をつるつるにしないと大人と認められないのかな?

マスター:殻の防御力を上げるために筋模様が必要で、大人になるといらなくなるのかもしれない。あ、専門家に聞いたわけじゃないけど。

商店会長:仲間のアンモナイトが認めても私は認めん。このメソプゾシアの場合、左上のてかってる部分のところに筋模様が見えるだろう?そこから右側は不規則なまだら模様になっていて、模様を作る気がないとしか…あれがいいのになあ。

先輩:会長さんの言う左上の部分、殻の延長線上に線が見えるな。これが「失われている住房」かな?

この線の上にアンモナイトの身が入っていて、その分を殻が覆っているとするとこの筋模様は外から全く見えないことになるな。

商店会長:なんともったいないことを…

先輩:アンモナイトにとってはガキの特徴なんですよ。早く大人になりたい。

マスター:化石なんだからこちらが思ったような物が出てくるわけないです。大きなアンモナイトっていったら大体こんな感じだし…

国立科学博物館のでかアンモナイト。フタバスズキリュウの部屋の反対側にいます。こんな状態でよく「パキデスモセラス」ってわかるなあ

先輩:さすがにこれは大きすぎるでしょ!

商店会長:理想のアンモナイトを見つけて応接室に飾ろうと思ったんだけど。北海道に探しに行くか。

先輩:売りに出てるのでもっと小さいのを探した方が好みのものが見つかるんじゃないかな。

商店会長:最低60センチは欲しい。
先輩:どうしてもって言うならもう好みのアンモナイトをでっちあげるしかないですよ。筋模様も突起もお望み次第。

このアンモナイトは作り物だけど途中で模様が薄くなっている。本物で型取りしたのかな。

アンモナイト看板。反対側から見比べると作り物であることがわかる。結構リアルだ。

商店会長:わあ、作り物まで外側の模様が薄くなってる…

先輩:イルカの人とかに頼めない?

商店会長:もうやだ。あの男は余計なことはするくせにこちらが頼んだことはしぶしぶ最低限しかしないやつだ。人気なんだけどむら気野郎なんだ。

マスター:…恐竜展の呼び物の大きな恐竜は?

商店会長:孫たちが興奮してしまって展示どころではなかったな。ショップでおもちゃねだられるし、食事のコーナーにはテーブルもなかったし。嫁が入場前に菓子パンを配ったのは正解だな。腹ペコになるともううるさくて。

マスター:図録は買うべきです。あとで見返せるし別の恐竜展のと見比べるのも面白いし。お孫さんの世話が大変ならなおさら。

商店会長:本が嫌いな子たちだし、わたしは恐竜にはそれほど興味ないし。

マスター:お孫さんがそのうち読むかもしれないですよ。

ふゆ:そんなこんなでうちのカフェの図書室はあれやこれやの図録だらけなのよね。