地図と時計を持たずにコロナ山脈を縦走しなければならくなってしまった身としては、確かに第1目標の山は越えた。再びの登りは霧が深くて前方がよく見えず、目指す山なのかのその前山なのか判断がつかず、不安とイライラが増すばかりだったが、この急な登り、第2目標の山に相違ない、登山靴の紐締めなおそう・・・てな心境だ。
 
 確かに新型コロナウイルス感染の第1波を越えた段階で、日本は欧米諸国と比較して感染者数も死者数も少なかった。それを首相は「日本モデルの成功」と声高らかに語っていた。前もって政権がモデルを示しそれを国民が実行したから成功した訳でもないのに、わが国の首相は自慢げに良いとこ取りをしていた。
 アメリカなどの他国メディアの論評では「日本のコロナ政策はことごとく間違っていた。にも拘わらず幸運にも日本はコロナ感染の波を上手く乗り越えた」とあった。私もそう思っている。
 その幸運の原因を多くの人が探求している。かの山中教授は「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」のなかでそれをファクターXと呼びその候補を幾つか挙げている。
 ●マスク着用や毎日の入浴などの高い衛生意識
 ●ハグや握手、大声での会話などが少ない生活文化
 ●BCG接種など、何らかの公衆衛生政策の影響
 ●2020年1月までの、何らかのウイルス感染の影響
 ●ウイルスの遺伝子変異の影響

 10万人当たりの死亡者数を欧米諸国とではなくアジア諸国と比較すると日本は優等生ではなく、下から二番目の劣等生だ。「日本モデルは成功」などと言えないことがよくわかる。何故アジアでは欧米より感染者数も死亡者数も少ないのか?という観点からの論説を知りたいと思っていた。
 7月9日の「羽鳥モーニングショウ」では、玉川氏の、児玉龍彦名誉教授(東京大学先端科学技術研究センター)へのインタビューを紹介し、その中で教授はファクターXに関係することを語っていた。その趣旨をまとめると 
 「東アジアは歴史的に見てインフルエンザやコロナのウイルスがずうっと発症し世界に広がっていく、いわば震源地だった。そこで東アジア人は新型コロナウイルスに対する何らかの免疫を持っている人が多いのではないか。新型コロナに対しては初感染ではなしに既感染ですでに何らかの記憶を持っている、と考えられる。





 コロナウイルスのうち人に感染するのは7種類で風邪のウイルスもその一つで、SARSもMERSもコロナウイルスがその原因。それらの免疫に対する免疫は交差免疫と呼ばれる。交差免疫によって新型ウイルスに対する死亡率が低く抑えられた可能性がある。
 風邪コロナは新型と50%の相同性を持ち、MERSは55%、SARS 80%の相同性を持つ。SARSの時から言われているように、一部の免疫は交差免疫として成立していると考えられる」
 世田谷区などの、新型ウイルス感染者の抗体を多数調べた結果、これらのことを教授はIgM抗体とIgG抗体の上がり方で説明していた。勿論この仮説に対し異論もある。
 更に、児玉教授は7月17日の参議院予算委員会で参考人としてエピセンターについて話をした。こちらはより衝撃的な話だった。