6月6日(月)の昨日、多分20年振りに、御料理「花ぶさ」に出掛けました。池波正太郎の食のエッセイ「散歩のとき何か食べたくなって」に惹かれて何度となく通った「花ぶさ」へ、又また出掛けたのには、ある訳がありました。
(花ぶさ入口)
5月19日に行われたペタンク大会の試合の合間、ラジオ体操の沢さんとのお喋りの話題が「古山高麗雄」から、何故か駒込神明町で所帯を持った「池波正太郎」に移り、彼の著作「散歩のとき・・・」に話が及んだとき、沢さんは「あの本に出てくるお店にも殆ど行きましたね」と語ったのです。そこで私「あの本に登場する花ぶさが私も大好きで何度も行きましたが、閉店したみたいですね」と語ると、「とんでもない、ずうっと営業を続けていますよ」との返事。
いっだったかお店の前を通り、何故か暖簾が目に入らなかった私は、店仕舞したものと早合点していたようです。慌ててインターネット検索すると、お店へのコメントから察して以前にも増して繁盛している様子。ランチも始めたらしく、わが身の不明を恥じつつ、昨日はそのランチを食しに末広町のお店に出向いたのでした。
12時03分に入店。カウンター10席の内2つほどが空いています。”具だくさんのかき揚げ丼”を注文し、店内を見渡すと、料理人が4人、仲居さんも4人。8人もの人たちで店を切り盛りしています。カウンター10席とテーブル席一つの一階と、宴会も可能な二階を合わせてもそれほど広いとは思えないこのお店に、8人もが働くとは気合いが入っているなと、まず感じました。
料理を待つ間に何度かお茶のお代わりをして呉れたり、隣の席のお客さんに、ご飯のお替わりを尋ねる仲居さんたちの接客態度を見るにつけ、かっての20年前の女将の接客態度を思い出しました。馴染み客ばかりでなく、通りがかりに初めて入った客への親切が、今も変わらずにこの店の気風として残り続いていました。
ほどなく出された”具だくさんのかき揚げ丼”のかき揚げが大きく、揚げたてで実に美味いのです。魚介類が豊富に入り、タレは醤油つゆのみならず塩でも食せます。ご飯はお代わり自由のタケノコ入りの混ぜご飯。最後には”甘み”まで登場して、これで1000円は全くお安い。近隣のサラリーマンやご近所の主婦さんたちが入れ替わり入店し大繁盛の理由がわかります。”客の満足がもてなすものの喜び”。その心意気がまだ残っている貴重な料理店です。(具だくさんのかき揚げ丼)
池波は散歩のときにこの店を見つけ、大いに気に入り、夜の部に出される「千代田膳」の名付け親ともなりました。この膳が5250円、こちらも20年振りに食したいとの思いに駆られます。思えば私は、山は深田久弥「日本百名山」を、食に関しては「散歩のとき・・・」を、バイブルにして来たと思います。彼がそうしたように私も、ここから徒歩5分のうさぎやに寄ってどら焼きを買って、満ちたりた思いで帰ってきました。