日生劇場で観劇してきました。

『この世界の片隅に』

観劇回の出演者たち。

原作漫画も読んでなければ、アニメ映画

実写ドラマも見ていません。

戦争ものが苦手なので・・・。

子供の頃にたくさん見せられてトラウマよ。。


観に行くつもりも、なかったのですけど

夫が観たいというので、チケット取る係の私も

一緒に観に行くことに。


漫画は四畳半の部屋を斜めから見た様子を

描いたりしてるらしいのですが

メインセットは、その世界観を現すためか、

正面に対し斜めになっていて

その中央に円盤があって、やはり斜めに

浮いたりする仕掛け。

背景には、すずが描く絵が現れたりする。


主人公のすずは、想像力豊かで

絵を書くのが得意だけど、虚実ないまぜに

なってしまうらしい。(wiki読んだ)

そのせいか、舞台上も

どこまでが妄想で、どこまでが現実なのかが

初見だと、わかりづらいのですが

原作知ってたら、たぶん問題なし。


すずを演じるは昆夏美。

どこか抜けているんだけど、優しい。

心の葛藤とか、繊細さだったり

逆にどうしようもなく、おかしくなったり

とにかく、人ひとりとしての

感情を歌で台詞で表現するのが素晴らしかった。


この舞台、演出も凝っているけれど

アンジェラ・アキのミュージカル初となる

楽曲が、またものすごーく、良かった。

アンジェラ・アキは、ミュージカルの

楽曲作りたくてカルフォルニア大学で

三年?二年?学んだそうな。


その成果が十二分に発揮されていた、と思う。


正直、この題材、ミュージカルとしては

地味だと思うんですよ。

なにせ、広島が舞台で

空襲やら原爆やら出てきて

私はどちらかというと、そういうのから

目を背けたい人なので、

最初は食指動かなかったし、

チケットもいっぱい余ってるらしい。


でも、舞台って凄いですね。

楽曲に乗せることで、世界が動き出す。


すず演じる昆夏美は、

所在なげに歌う細やかな歌声から

力強い歌まで、様々に歌いこなす

信頼おける実力派。

すずは、戦争という非日常においても

旦那さんが好きとか、絵を書くとか、嫉妬するとか

同級生の水島くんに「普通であれ」と

言われる、ある意味どこにでもいる人。


それが、戦況化が進むにつれ、

可愛がっていた姪を亡くし

右手を失い、絶望してしまう。


それまで正確無比な歌声だったのに、

慟哭するような歌声が

全く音程が外れまくっていて、

そのすずを受け止めるというか

対峙する周作さん(海宝直人)も、

無口だからそれまで、歌声控えめだったのに

合わせる歌声が力強く、こちらは音程正確で

その不協和音で異常さが増す。


原爆の悲惨さも、台詞だけ聞いてると

耳を塞ぎたくなるような事実だけれど

そこへ向かうおばさん三人衆が歌う楽曲は

聴いたことのある流行歌?の

楽しげな曲で、観客の心情を重くさせない

配慮なのか、それも現実と現実を

受け入れたくない人の歪みなのか。


アンジェラ・アキの楽曲は、

どれも耳馴染みが良くて、歌謡曲風だったり

昔、音楽の授業で習ったような曲だったり、

昨今、難しい譜面並べて

どやぁ!!っていう楽曲も多い中、

実に舞台と世界に溶け込んでいた。


望海風斗にも楽曲提供していたし、

そのうち、宝塚歌劇にも提供あったりするかも。


他のキャストで、気になった人。

すずの結婚相手。周作さんに海宝直人。

このひとも、安定感あって、良き。

ただ、作品のキャラとして、

なんですずを探してまで結婚したかったのか

よくわかりませんでした。。


周作の姉(すずの義姉)に宝塚OG、音月桂。

素晴らしい歌声でした。

昆夏美とのデュエットも良かった。

娘失って、一度正気失うんですが、

全部自分の選んだ道だから!

と前向きに生きる姿が格好良い。


で、その娘の晴美ちゃん。

子役の中でもひときわ小さいのですが、

めちゃくちゃ可愛くて、そして芸達者。

途中死んじゃうのですが、

その後戦争で親を失った孤児で再登場。

カテコは、その小汚い格好なのが

ちょっとだけ、残念😅


あと、リン役の桜井玲香。

アイドルあがりの彼女ですが、

愛希れいか主演のフラッシュ・ダンスあたりは

微妙と思ってたけれど、かなり上達して

なかなかの実力派に成長していた。。

そして、やっぱり可愛い。


本作、私的には泣いたりして感情移入できる

感動作ではなかったけれど、

原作の世界観を壊さないように

練に練られた脚本と、演出と楽曲は

本当に素晴らしかったし、

その世界観を具現化するキャスト陣たちが

皆、ハイレベルで安心感があり

思ったより楽しめました。


舞台は呉だけに、

呉にきてくれ。だそうです。。