fff -歓喜に歌え!- 私的解釈

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初回観劇で、いろいろ腑に落ちなかった
fff -歓喜に歌え!-
2回目を観て、噛み砕けたか?といえば
咀嚼はできていないけど、私なりに解釈して
そういうことかと、納得?した次第。

ネタバレしてます。

お芝居は、
ベートーヴェンの生い立ちから、
交響曲第9番を生み出すまでの話なのかと思えば、

いくつかの名曲を生み出した過程を辿りながら
未だ苦しみ続き、死の間際にあって
最後の足掻きをしている
ベートーヴェンの精神世界の中の話なのか。

実際に交流があった人物と
会ってはいないけど、作曲する上で
インスピレーションもらった人物との
虚実ない混ぜ。

ベートーヴェンの生命力となる命の炎。
朝美絢演じるゲルハルトに助けられ、
学を身につけるあたりで
小さな情熱が灯り、
その炎達が団員となり奏でる交響曲。
団員達はベートーヴェンが内に秘める
情熱でもあり、燃える命。
このあたりの演出が見事過ぎて唸る。

最後は歓喜の歌で終わるけど、
このお芝居の根幹に横たわるのは
交響曲第5番の「運命」。
謎の女、真彩希帆が現れる時や、
要所要所で、ドアノックの音や、
机を叩く等、タタタ ターンの
フレーズを思わせるリズムが刻まれる。

劇中、このリズムは「四つの」と確か
言ってたと思いますが、
巨匠小林研一郎が説明するには、確か
交響曲5番は、冒頭に始まる「三連符」が
あちらこちらに散りばめられてるんだそうです。

ナポレオンと夢の中?で邂逅し、
音符が隊列を組むように
どんどん膨らんでいく様は、
二階席で観てみたい。

ナポレオンとの対話の中で、
ナポレオンの理想が欧州連合という話。
何を突然言い出すのか、と思ったら
歓喜の歌は、ヨーロッパ全体を讃える
欧州連合の曲らしい。知りませんでした。
ちなみに、何故知天使ケルビムなのか?と
思ったら、やはり
歓喜の歌の歌詞に出てくるらしい。

この辺の小ネタ薀蓄を
お芝居に盛り込んでくるあたり
ウエクミ先生らしいと思う。


端的に言えば、
謎の女は、誰もが抱えている悲しみや苦しみで、
女性に振られ、難聴になり、
苦しみ・孤独と戦うベートーヴェンが、
その苦しみから逃避している限り、
喜びは生まれないわけで、
自分の苦しみと真っ向から立ち向かう覚悟を
決めたことで
希望の炎が再び燃えあがり、
歓喜の歌を生み出したってことか?
なんか、悟りを啓いた仏陀のようだ。

そして歓喜の歌を作り出したことで、
音楽は、完全に一般大衆のものになり、
それが文化=耕された精神
となって、ナポレオンができなかった
「統一」を音楽によって成し得、
神様にも認められた..

なんとなく、良くも悪くも宝塚だし、
ざっくり楽しめれば
いいのかもしれないけど、
色々解釈を考えてしまいました。

お芝居全体が、交響曲の構成のようで
最後の光り輝く歓喜の歌は、
第四楽章のコーダのよう。
この、終了間際の最大の盛り上がりは、
ああ、あと少しで演奏が終わってしまう、
と寂しく思いながら団員がこれでもかと
楽器を全身で奏でるクライマックスを
芝居でも体感させてくれるところが凄いです。


最後に忘れないでと
客席を温かく見つめながら歌い上げる望海風斗。

昨日は初見の芝居についていくのが精一杯で
浸ることができなかったけど、
今日は、改めて
望海風斗の素晴らしい歌声を堪能し、
存在しない美しさを表現するかのような
真彩希帆の繊細な歌声に聞き惚れました。

一筋縄ではいかないこの作品。
望海風斗と真彩希帆だから
乗り越えられる作品。

叶うことなら
回を重ね、熟された頃にまた観てみたい。
きっとまた違う見方になるでしょう。