【映画鑑賞】「武士の家計簿」(2010年日本松竹) | しろくま・まちゃるWORLD!

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【作品情報】
監   督 森田芳光
出   演 堺雅人、仲間由紀恵、西村まさ彦、宮川一朗太、小木茂光、嶋田久作、伊藤祐輝、藤井美菜、草笛光子、松坂慶子、中村雅俊、他
上映時間 129分
ジャンル  人間ドラマ>時代劇>江戸末期>実話ベース


【あらすじ】

明治10年。
海軍主計大監・猪山成之の元に父・猪山直之(堺雅人)から東京転居に際し加賀の実家の処分に関する金銭出納の一切を記した手紙が届く。

検算を乞う父の文に対し、成之は「父の計算に間違いなどある訳が無い」と算盤に生きた父の武士としての生き様を思い返す。

 

時はさかのぼり…江戸末期、天保年間。

猪山家は、加賀藩御算用者として代々算盤で主君に仕えてきた家柄であり、7代目である猪山信之(中村雅俊)はその腕を認められ猪山家当主として初めて知行取りとなった。

猪山家のお家芸は「武芸ではなく算盤」であり、家族は皆その自覚を強く持ち、「猪山家は真っ直ぐだけが取り柄」を誇りに感じていた。

 

その息子である直之も、やがて給金取りとなり「算盤馬鹿」と言われるほど真面目にお勤めに励むが、そんな真面目さが故に融通が利かない事がある事を信之は心配していた。

直之が城下の町中を歩いていたところ、「お救い米」の配布先でもめ事が起こっていた。

 

憤慨している農民が言うには、「お救い米が途中で消えている」という事であり、その詳細を記した紙束をたまたま直之が拾って、それを念の為に調べ直していくと、実際に城の蔵から出されたお救い米が配布先に至るまでに3割ほどが行方不明となっていた。

 

すぐに上司である御算用頭・合田源治郎(ヨシダ朝)に相談するが、「相分かった」と言うだけで、それどころか、直之に対し「病気の妻がおるのだ。つつがなく勤めたい。」と言い、それ以上の調査については止める始末。

 

直之は自分の判断でさらに調べを進めていくと、不明なお救い米は公然の秘密として裏金の資金源となっていた。

 

加賀藩目付方の奥村丹後守(宮川一朗太)とその腹心・安倍(小木茂光)は、独自に調べを進める中で、お救い米に関して自分たちの調べと同じ報告書が一介の御算用役人から提出され、上役である御算用頭や御算用奉行に握り潰されている事を掴む。

 

やがて御算用方に目付方の大掛かりな監査が入り、不正に関係した御算用者については厳しい罰が下されることになる。

お救い米横流しを黙認してきた御算用奉行は切腹、御算用頭は御簡略屋敷送り(※)の沙汰が下る。

 

※御簡略屋敷送り=藩主から拝領した屋敷を召し上げられ、長屋暮らしとなる事は、当時の武士にとって大きな恥辱であった。

 

お救い米の不正を告発する詳細な報告書を一人で書きあげた直之は、奥村丹後守の推薦もあって、藩主・前田斉泰の側仕えである御次執筆役に任ぜられる異例の大出世を遂げる。

 

当主の大出世で前途洋々に思われた猪山家。

しかしそんな猪山家にも家族も気が付いていなかった隠された秘密があった。

その秘密は、直之の子、成之の4歳の初袴の祝いの宴で露見する。

この時代の侍の家にありがちな「武士としての体面を保つ為の借金」が日々少しずついつの間にか大きく膨らんでおり、祝いの膳に並べる鯛を買う事すら不可能な事態に陥っていたのである。

御算用者としての猪山家当主・直之が出した結論は、「借財をなるべく多く返す為に武士としての体面はさておき、恥と言われても家財一切を売り払う」事であった。

 

当時の体面を重要視していた侍としては、それ相応の家禄のある侍程、家財を売り払うという行為は周囲に自家の恥をさらす事となるのは間違いなく、家族一同が大騒動となる。



 

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代々加賀藩御算用方に勤めた猪山家において、その「家計簿」たる入払帳を記した8代目当主・猪山直之。

 

その家計簿や書簡、日記などを歴史学者の磯田道史が神田神保町の古書店で発見し、そこから読み解いた内容で当時の一般的な武士の暮らしや文化、価値観などを映画化した本作。

 

多少脚色はあるものの、基本的には、当時の一般的な侍の家で起こった出来事を描いてみせる。

 

平和が長く続いた江戸末期。

御算用方という経理の部署のせいかもしれないが、この映画での武士の姿は、藩という大企業に勤めるサラリーマンに見える。

 

家族の形態はもちろん当時よくあった2世代・3世代同居や親戚筋との日常的で日々密接な交流がイマドキの社会とは大きく違ってみせるが、どこかほのぼのとして、どこかのんびりとしつつ…「サザエさん」でも観てるような気がしてくる^^

 

通常の時代劇にあるような、斬り合いや戦場への出陣、映画やドラマにするような大事件や驚天動地な出来事話を盛り上げている訳でもなく…ただひたすら武士の日常が描かれ、「家」や「侍」としての誇りや伝統、そして価値観など、世代に受け継がれていく様を垣間見せてくれる。

 

敢えて大事件があるとすれば、幕末期の「大政奉還」「維新の戦い」「明治政府成立」という歴史の大きな流れ。

 

そんな大きな流れの中においても、猪山家はあるがままに、時代を受け入れていく。

 

そんな日常の風景が淡々と描かれる本作ながら、どこか心を掴まれた気持ちになるのは、今の日本人が無くしてしまった日本人や家族の姿がそこにあるからかもしれない。