旦那が死んで、残された息子が3人とも社会から望まれない男だった。
おじいちゃんは、戦争後、ハワイでひと財産もうけ、地元に土地を購入して農業を始めた。
このおじいちゃんが、どんな男だったかが謎なんである。
おじいちゃんも社会に望まれない男であったんなら、それは父親の血を受け継いで、しかたがないね。みたいにみんな思うけれど、おじいちゃんは社会でなんらかの役割を望まれている人であったのに、おばあちゃんの産んだ息子3人とも、そうじゃない。となると、まあ、おばあちゃんがおかしい。みたいにはなるね。
で、旦那が死んだあと、おばあちゃんは肩身がせまくなった。
社会に望まれない息子3人は、いったい、どうやって生きていくのか?
が、女学校も出ている、お嬢さんである。
身内に相談できなかったら、学校の恩師に相談するとか、先輩や同級生に相談するとか、そういう道もある。
嫁は、母校の先生や先輩に、何かあれば相談したりしているし、大学の同級生とも年賀状のやりとりも続いている。
そして、お嬢様であれば、何かあったときに、こういうコネクションをつなげておかなくてはいけない。ということぐらい考えるだろ。普通。
何かあったときに、とてもひとりでは生きていけない。
これがお嬢様なんであるから。
が、この家に嫁に来て、ことごとくに、そういうコネクションを断ち切らされようとした。
自分の身内との付き合いも、彼女の社会的な付き合いも、すべてを断ち切らせ、自分らと同じような社会に断絶した環境に置こうとした。
が、これを、旦那が守ってやれないから、離婚するんである。
旦那が、そうするおばあちゃんや親にたいして、なんらかの処置をして、彼女のこれまでのコネクションを維持してやれる度量があれば、別に何の問題もなかった。
が、彼がこれをできないから、離婚するんである。
こんな環境の家で、もし、旦那が死んだら、彼女はとても生きていけない。
だから、さっさとこの家から、おさらばするんである。
それは、彼女は3年間という時間、この家に付き合ったけれども、とても無理である、という判断は、もっと早くからしていただろう。
結婚前からしていたかもしれないし、結婚した当日にそう思ったかもしれない。
そして、成田離婚のように、速攻で離婚する人もいれば、彼女みたいに、それでもちょっとは旦那に期待して3年ぐらい付き合ってみる人もいる。
が、速攻離婚できれば、それこそ、3年もの間、いろんな屈辱に耐えなくても済む。
けれど、自分の中に何が残るか。
そうはいっても、自分なりに努力した結果、やっぱり駄目だった。とは思えない。
あんなところに嫁にやらされるなんて、なんて屈辱を受けたんでしょう。という思いが延々と心にこびりつく。
そして、おばあちゃんは、残念ながら、こういう思いを、身内の女性に刻みつけてしまっている。
つまり、おばあちゃんが紹介した男と結婚した身内の女性が、それこそ新婚旅行から戻ってきて、即離婚した。
そして、あんな男を紹介するなんて、とおばあちゃんを恨み続けている。
その人は、奥さんの母校と同じ学校を出ていて、離婚後、誰とも結婚することなく、その周辺の大学でずっと教鞭をとり、最近退職してこちらに戻ってきた。
その人もお嬢さんで、いろんな趣味をもっていたり、たくさん着物を持っていたりする。
そして、そういう理由でおばあちゃんに恨みを抱いているので、おばあちゃんの息子であるうちの父親なども、パシリのように使われている。
そして、母親なども、いろんな贅沢品を見せつけられたりする。
が、こういった彼の身内に、奥さんは会ったことがない。
もう、会わずに離婚するんであるが。
つまり、彼だけをとってみれば、そういうまともな身内もいろいろいたりして、おばあちゃんと両親たちを除けば、そんなに悪い家柄というわけでもない。
そして、家業の得意先の中にも、茶華道の先生なんかもいたりして、そういう人たちと奥さんが交流していけば、商売もまた違った展開になっていったかもしれない。
で、奥さんもただのお嬢様だったら、おそらくそういう展開にしていっただろう。
なんせ、お嬢様という人たちの交流できる範囲というのは、大変にせまい。
まあ、お坊ちゃんも一緒だと思うけど。
が、彼女の中には7人の人格がいて、その中の2人は男性人格であって、彼の家族をなんとかするというミッションがあったために、そういう展開には至らなかった。
だし、そこを社会に望まれていたんだからしかたがない。
が、女性人格たちにしてみれば、女性にとって結婚というものは一大事であるのに、それがこんな風にミッションのひとつとしてやらされ、籍まで汚されるなんて・・・みたいな感じである。
が、全員適当な人たちであるので、一瞬そういう考えに至ったとしても、別にまあいっか。で終わる人たちである。
こんな風に、おおらかであるということも、裕福である人の特性である。
であるために、過去のことをいつまでも恨み続けていたりするというのも、それは、その人もそれほど裕福なお嬢さんというわけでもない。
おばあちゃんは、よほどに男に縁のない人である。
そうである女性だ。ということで、おばあちゃんをいろいろ恨んでいたりする人は、許してやったらどうか。
そして、そうであるおばあちゃんから、男など紹介してもらうべきではない。
そういう男と縁のあった自分もまた、男に縁のない女であると、あきらめてほしい…
そして、結婚も失敗し、男には縁はなかったけれども、女性でありながら、その年代でありながら、博士号を取得し、大学で教授にまで昇進して、任務をまっとうしたという輝かしい業績を手にしたことを、誇りに思っていただきたい。
以上です。
そして、なぜか、こっちにいろいろととばっちりが来るので、こういう人たちの面倒ばかり見させられているお父さんも、嫌。
お父さんがいなかったら、こういう人たちと関わる必要ないもんね。