一家心中を企てていた青年。父親の身勝手な人生に付き合わされ、家族中が振り回されてきた。
この父親を殺して、自分たち家族も死んでしまおう。なんどそう思ったか。
しかし、父親の心の闇に触れるたび、それを止まらざるを得なかった。
父親は、未亡人の母親に、ずっと性的虐待を受けていた。
夫を亡くし、3人の息子を抱えた女性。その性的欲望は、他の男へ向かず、自分の息子に向いた。
社会的体裁を気にし、未亡人の自分が、他の男に身をゆだねていくことが憚られた。
が、独り身の寂しさはどうにもならない。自然とその欲求は、共に暮らしている息子へと向かった。
未亡人の女の欲求など、年端もいかない若い男が受け止められるはずもない。
悪夢のような生活が、誰も知らない家の中で繰り広げられていたにちがいない。
その傷が、ずっと父親を苦しめ続け、またその家族を苦しめ続けている。
母親から逃れるように結婚し、家を出て、社会から断絶した。
母親は相変わらずのうのうと生きている。自分たち家族の苦しみも知らずに。
気がついたら、とんでもないところに家族そろって堕ちていた。
そして、社会が誰も相手にしていないのに、社会的体裁を気にする家族の姿がある。
他の男のところに行ってくれた方が、よっぽどよかった。
未亡人に言い寄ってくる男の誰かに、身をゆだねてくれた方が、よっぽど幸せになれた。
嫁いだ夫に生涯の貞節を誓った女のように見せたかったのか。
その裏で息子を食い散らかし、不幸にした女に、誰が貞節を見るか。
馬鹿な母親が、しょうもない見栄を張っただけである。
一度男を知った女が、男と離れて暮らせるはずもない。
あそこの奥さんは、旦那が死んで、次はどこの男に手を出すのか。
田舎なら、そんな噂が飛び交ったって不思議じゃない。
そして、女なら、そんな風に男を欲しがったって不思議じゃない。
そんなことを異様に拒絶する女ほど、心底男を貪る淫乱女である。