
主人公のヴェスパーって少年なのか少女なのかわかりにくいのだが、エンドタイトルでラフィエラ・チャップマンと出るので女とわかる。神話的な両性具有イメージを付与していると思しい。
森からコケやキノコみたいなサンプルを集めているあたり、ちょっとナウシカを思わせる。
それと共に連想させるのはタルコフスキーで、木の壁の家や森の中、川面などの質感は「アンドレイ・ルブリョフ」「ノスタルジア」、荒廃したSF世界という点では「ストーカー」ばり。
種が現実にあるいわゆるF1種みたいに一回しか収穫できないという制限をかけられているという世界観は現実的すぎて意外性に欠ける。
ドローンみたいに自在に空中を浮遊する顔の落書きがしてある物体が寝たきりの父親の声を代弁したり、中身がぐちゃぐちゃした内臓状になっているあたりの有機物と古びた金属の取り合わせは面白い。豚の網脂みたいなシートを傷に貼るあたりの感触も目新しい。
主人公側が暴力をふるわず、武装した敵が高速の蛍みたいな虫に貫かれてやられるというのも非暴力という点では一貫している。
ただ2時間近いのはいささかまだるっこしい。音楽が素晴らしい。