
これだけ禁じ手を盛り込んだ007もなかったのではないか。
強いて言うなら「女王陛下の007」以来ということになるが、ショーン・コネリーが続いた直後にジョージ・レーゼンビーが唐突な代役を任されたこれがベタ酷評されたのに比べると、これまでのダニエル・クレイグの四本の積み重ねがあった締めくくりという形で賛否両論に持ち込んだ格好。
もともと東西冷戦と消費社会のシンボルとしてのジェームズ・ボンドのキャラクターは「スカイフォール」でいったん完全に死んだのだと思う。あそこで使われた水=寒色=死と火=暖色=生を潜るのを境に交代させた色彩設計演出の片鱗をここにも持ち込んでいる。ただしあれだけの掌握力はない。
冒頭の駅の列車の別れのシーンで、車内車外の横移動撮影を交錯させた映像は新鮮。メロドラマでは縦の構図にしがちなのを完全に外した。
クライマックスの島の騒動でロシア日本に加えてアメリカが抗議するという設定だが中国は何も言わないのかな。
脱出とか人質奪還といった大事なところで、あれなんでそうなるのと思わせるすっぽ抜けが目立つ。
ダニエル・クレイグとは「ナイブス・アウト」以来の再共演になるアナ・デ・アルマスがうって変わって思い切りセクシーでアクションでも大活躍。