神のクイズ シーズン3








ケース02「ホスピス」


(症例)ベーチェット病/肝性脳症
ホスピス病棟で患者パク・ インソンが殺害事件を起こす。犯行理由は、殺すと脅されていたから。しかし被害者は、動くこともままならない末期の癌患者だった。パクの幻覚なのか? 捜査を進めるジヌは、病院が隠す秘密を知る。




ケース02は死生学に関する話しでした。



医師であるシン・ヒスは殺人者であるパク・ インソンを殺害後、窓から投身自殺をはかります。



どうして? なぜこんなことを?


前にも言いました

彼らのためです


1日でも長く生きたかったかも

あなたにとっては使命でも

それは越権であり犯罪なんだ


違います

彼らは

彼らの権利を私に託したんです

パクさんも

もう少し早く逝っていれば

殺人者にならなかった

でも苦痛から解放できてよかったわ


苦痛に耐えるのも、彼らの権利だ


違うわ

それは残された者の言い分よ

誰かが苦痛を軽くしてやらないと

絶対に



-ハン・ジヌ、シン・ヒス









(死ぬ直前の朦朧とした状態で

 父親との最期のやり取りを回想)

 


お父さん

私たちのせいで天国に行けないの?


かわいい娘と妻を残して

どこに行くんだ


いいの、大丈夫よ、心配しないで

安心して旅立って

そのほうが私もうれしいから

楽にしてあげる

遅くなってごめんね




(シン・ヒス、父の酸素マスクを外す)



大好きよ、お父さん


ありがとう、愛しているよ



(回想後)



私も愛している…お父さん


(シン・ヒス父、息をひきとる)



シン・ヒス、シン・ヒス父-







シン・ヒスは13年前に父親を、11年前に母親を亡くしています。

相続の問題で、親族が延命治療を希望したせいで、2年の脳死状態の後、父親は睡眠中に死亡しています。

彼女一人で看取ったそうです。




ホスピスのホ院長はイ医師の協力のもと、シン・ヒスの思いを巧みに利用します。



病院の評判は

シン・ヒスさんのおかげだった

広告塔になるくらい

そんな彼女が卵巣ガン末期だと知った

彼女が必要だったあなたは

臨床試験が終わってない薬を与えた

事業の道具として

彼女が必要だったあなたは

犯行を黙認した


そしてパクさんに

イさんを殺させた

あなた方にとって

“死”は商品でしかなかった

その商品を売るために患者を惑わせた

まるで偽の宗教だ



-ハン・ジヌ-









ハン・ジヌの疑問に対して恩師のチャン教授はこう答えています。



教授、完全な死は存在しますか?

何の未練も後悔もなく、苦痛のない死


さあな、見方によって違う

生涯、苦しんだ者にとって死は希望だ

楽して生きた者にとって

死は終末を意味する

断定するのは難しい

しかし確かなことは

彼女が言ったように

死は個人のものだということ

どんな生き方をしたとしても

もちろん自殺は除くとして


でも

死が自分のものなのはいいことですか?

人間が最後に幸せになる権利だから?


いいや

生の始まりは選べないが

最期は選ぶことができる

それが生と死のバランスだ



-ハン・ジヌ、チャン教授








子供だったシン・ヒスにとって延命治療を受けている父親の姿を見るのはつらいものだったと思います。

心の傷も深いことでしょう。
そんな彼女にとって終末期の患者に精神のケアをする仕事を選ぶのは自然だし、その仕事を使命だと思うのも自然の流れだと思います。

しかし余命を奪う権利は、ハン・ジヌが言うように越権行為だと私も思います。

仮にその思いがどんなに高尚なものだったとしても。

ましてや本人の同意も得ずにするなんて。その殺害方法も枕を顔に押し付けて窒息死させる方法はどうかと?? 

余命わずかだったとしても、そんな苦しい死に方で死にたいと願う人はいると思えないし。
「苦痛から解放してあげる」という思いが強すぎたが故に歪んでしまったのかもしれません。




ハン・ジヌが言うように「苦痛に耐えるのも、彼らの権利」なのでしょうか? 
日本の終末期における緩和ケアは、終末期の患者に対して疼痛コントロールが主なのですが(注①)、韓国では事情が違う(注②)のかもしれません。
終末期の癌性疼痛を経験したことがない私ですが、痛みに苛まされて余命を送るよりは、たとえ身体の負担になろうとも痛みが軽減した状態で、少しでも穏やかに過ごすことができたらと思います。



注①ホスピス財団(公益財団法人 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団)http://www.hospat.org/  のHPなどを参考に。
注②ホスピスケアや緩和ケアにおける疼痛コントロールに対する誤解も問題点として挙げられる。Young S.Hongは韓国の医師の多くは麻薬性鎮痛薬の仕様による嗜癖を恐れてその処方を恐れて、その処方を増やすことを躊躇していると指摘している。2001年の韓国ホスピス・緩和ケアの調査では、がん患者の7466名中、疼痛罹患率は52.2%であった。疼痛のある患者のうち61.2%がほとんど毎日苦痛を感じ、64%の患者は現在の疼痛コントロールに満足していないという実態があった。また医師は痛みのある患者の35%に鎮痛薬を処方していなかったという報告がされている。
このように、韓国での末期がん患者の大多数は何らかの痛みを抱えており、症状コントロールの中でも特に癌性疼痛コントロールが重要である。