わたしの部屋は和室で畳の上にはフローリング風のカーペットと言えるだろうか木製の敷物がある。8畳あるので大分大きいその上に本棚や洋服が入っているクローゼットそして桐の和箪笥が置かれる
本棚は安いもので10年以上使っているうちに観音開きする扉があるのだが扉が片方壊れて現在は片側しか扉がない。やはり家具は値段が張るが高いものを揃えるべきで婚礼家具が高いのも頷ける。
この部屋に住んで45年、家は祖父が建てたようで家は築80年の旧家で太い柱を使われている。部屋に住んでいる年がわたしの年齢でもある。
祖父はわたしが幼い時に心臓病を患い他界、祖父が死んで数年後に祖母は脳梗塞と両親には聞いていたが実際は。肺が止まった不審死を遂げた、父と母はウィルス性の流行感冒で50代の若さで他界し独身のわたしは現在80坪の旧家で一人暮らししている。
わたしが持つには相応しくない桐の箪笥は祖母の使っていた遺品だが祖母の実家は裕福だったようで白い桐の箪笥は45年以上たったにもかからわなく経年劣化が見られず高級タンスだったようだ。
旧家には合わないベッド、40インチLEDテレビやノートパソコンなど今風のデジタル家電がわたしの部屋あるが使われなくなったフルタワーのパソコンもイミテーションとして部屋を飾り立てる。
わたしの部屋の隣は10畳のダイニングとキッチン、風呂トイレは土間に降りて再び廊下を上がる必要がありどうして家の中央に土間があるのか不思議な構造の家である。
最近夢と現実の境界がわからない、あまりにも現実に近い夢をみる所為で実際に起きていると思ったら夢の中だったり夢だと思ったら実際に起きてる事柄だったりするので頭がおかしくなりそうだ。
家の天井や壁は黒く大黒柱などの主要な柱も濃茶色のおかげで夜ともなれば暗黒の世界に変貌する。だからどの部屋も小玉の照明だけは部屋を使わなくても点灯させている。
小玉を点灯させているのが悪いのかわたしが夜、トイレに行くとすべての部屋の蛍光灯が点滅をするのだがトイレで用を足し部屋に戻ると点滅は収まり通常の照明に戻る、昼間試しに点灯させたが点滅したことはないから蛍光灯や小玉の変え時ではない。
冬には何も起こらなかったが春になり彼岸を過ぎようとしていた頃
なかなか寝付けなかった。
ダイニングは板の間、フローリングといえば今風の合板を想像するが旧家というと合板ではなく無垢材が使われていて板のゆがみや撓りは皆無、その板の間で何かが転がる音がした。
”ゴロゴロコロコロ・・・・”
丸い球体でそれも硬質の物体が1メートル以上転がる音に驚いた。
ダイニングにはテーブルや椅子のほか食器棚があり何かにぶつかる音が当然する訳だが転がった音は永遠に続くように聞こえたから恐ろしさもあり見に行くことが出来なかった。
尿意を催したので睡眠から覚めるとキッチンに誰か人ではない者がいるきがしてあまりトイレに行きたくなかった、眠ろうとしたが尿意でどうしても眠れない、我慢に限界が来るとトイレに起きるしかなかった。ダイニングを通過するのでついでに先程の音が何だったのかその原因を知るべくダイニングの板の間を探したがおかしなものは何もない。
確かに聞こえたと考えながらベッドに入ったらすぐに夢を見た。
夢に現れたのはおかっぱ頭でかすりの着物を着ていたのですぐにある物の怪が浮かんだ、それはテレビで放映していた心霊バラエティに画像を参照しながら説明をしていた。夢に現れた子供は心霊番組で紹介していた姿と全く同じ赤い頬っぺたが印象的な座敷童である。
夢では会話は不可能であり相手が話ても聞くことしか出来ないが口で話すことは出来ないが脳で考えたことは相手に伝わるようだ。
「この家に子供はいないのか」
「遊びに来たわけではない」
遊び相手が欲しいのかと思ったがそうではないらしい。
「腹減った」
仕方なく米を炊くしかないかと思ったので米を研ごうとした。
「われは肉が食いたい、血の滴る肉がな」
どうやら子供の生肉が食いたいらしいとなれば幸運を齎す座敷童とは大違い座敷童は神の使いと言われているがこいつは物の怪だ。
「子供の代わりにお前の腕1っ本我によこせ」
奴はそういうと今まさに噛みつくところでわたしの腕を奴は涎を垂らしている。涎というより生暖かい黄疸で粘着性が強く簡単には千切れない、なんという不快感だろうか。
物の怪とは離れた距離だった、逃げられる距離の筈だったのに気が付いたら目の前で私の腕を噛みつこうとしていたから驚いた。腕を持っていかれるそう思った時にわたしはベッドから跳ね起きた。
夢だったのだ。
尿が膀胱に溜まったおかげで夢から覚めることが出来たようだ。
悪夢だった、実に嫌な夢だった。
目を擦りながらトイレに行こうとしたが何か変だ、わたしの部屋の入口には障子があり障子を開け閉めするのだがその障子の前に障害物がある。目覚めたばかりでぼやけていたが凝視すると箪笥が通行止めにしていた。
”なんで?”
障子に対し直角に桐の箪笥は設置してあったのに障子と平行に今は置いてあるから箪笥を動かさないとトイレどころかダイニングにも行けない。
箪笥の引き出しは8段だが4段で上下分割できるタイプだが上の箪笥は小さな引き出しが小物入れになっていて悪いことに石鹸や洗剤が入れてあった、衣類だけなら上側の箪笥を持ち上げられるが持ち上げるには小さい引き出しをすべて抜かなければ持ち上げることが出来ない。
引き出しを抜けば持ち上げることができると思っていた。
「あれ、抜けない。くそっ」
遠い昔祖母が箪笥の場所を変えようとしていた時どうして引き出しを抜かないのだろうか疑問に思ったことを思い出した。
昔の箪笥には引き出しが外れないように引き出し止めが装着してあったのだ。
昔の職人は細工が得意だった、すごいなと感心するばかり。
嫌今はそんなことを思ってる場合ではなかった、早く箪笥を移動させなければ尿漏れしてしまう。
箪笥の中身をすべて出してしまえば箪笥を動かせるだろうがその間に尿は漏れてしまう。
「あーー、すっきりした」
目についた部屋の片隅にあったコンビニの袋で思いついた。
我慢する必要がなくなりゆっくり箪笥を動かせばいいしビニール袋に入れた尿はキッチンの流しで流せばいい、そういえば昔家の猫が
人のまねしてシンクの排水溝で尿を出すのを思い出したら笑みが自然と零れる。
だが今考えることはそのような品性のない事ではなく重い桐の箪笥を一体誰が何者がどのような目的で移動させたかそれも寝入った瞬時にだ。
以前にも使った覚えがない茶碗が食卓の上で割れていたり鍋がコンロの上に置きっぱなしになっていたりと不可解なことが起きた。
鍋など使ったら調理が終わるとすぐに洗い格納する、古い家には似合わないシステムキッチンには格納場所が多いがいつも同じ場所にしまう。
侵入者が家に入ったかと思ったりしたが家の鍵は壊されていないし
歩き回った足跡もないから侵入者はいないようだ。
では誰が・・・
よる9時ごろ部屋でテレビを見ていた時だったダイニングから陶器が接触する音がする。
"カちゃん”
家ねずみが食料探索のため重なった皿を動かしたのだろうと寝ていて思ったが翌朝湯呑茶碗が3つ割れていたので家ねずみのせいではないだろう、では一体何者が・・・。
そんなことを思っていた時、あの桐箪笥が動いた訳だ。ねずみや猫に動かせるわけがない、物の怪の類がこの家にはいる。
全体的に暗い家なので普段は日没前の明るい時間に風呂へ入るようにしているがその日は仕事が残業で夜8時に帰宅、汗を仕事で掻いたので下着を脱いですぐ風呂場で洗った。洗濯機はあるが一人住まいなので洗濯機を使うと大量の水を使うため公共料金を節約のために洗濯機の使用は出来るだけ避けていた。
「それ汚れが落ちていないよ」
背後から声が聞こえたので振り返ったら誰もいない。
誰もいる筈はない、一人住まいなのでいるわけがない。
いる筈ないのに声は確かに耳に聞こえた。
何者かがいる気配がする。
手早く洗って早く風呂からでようと考えた。
ただ顔を洗う時や洗髪する時は一瞬でも目を瞑る必要があった、目を瞑り再び開けたとき電灯が落ちていたら暗闇に誰か立っていたらと考えたら洗うのにも勇気がいる。
祖父母や両親の霊ならば恐怖は感じないし脅かすような事もしないが今風呂場に現れたものは姿を現さず洗濯の邪魔でもするようにバケツをひっくり返す。そんな霊のいる場所で頭を洗わなければならない。
浴槽はヒノキで壁とタイルは人工の大理石で浴槽と洗い場には混合栓でシャワーヘッドはホーローシャワーのホースはステンレスの蛇腹、このように風呂場には金がかかって作られている。それだけではなく防音設備もユニットバスよりもしっかり作られエコーがかかる温泉並みとなっている。
”かコーン”
よく大衆浴場で風呂桶などで音が響く、大勢いて響く分には問題ないが一人で風呂に入ってるとき響くのは気分がいいものではない。
髪の毛を洗ってるときは何も起こらなかったが脱衣所で着てていた時に風呂場から怪音が聞こえてきた。
”ペタッ、ペタッ”
濡れている足音ではない、ただ濡れているだけでは音はしない。
血で濡れたような粘り気がある液体が足の裏についている時のような音である。
すぐにダイニングへは行けない、土間を超える必要があるからだ。
土間を飛び越えダイニングの床へ飛び移ろうとしたがなぜだか足が固まって動けなくなった。
足音は1っ歩1っ歩聞こえるのが大きくなって近づいてくるのがわかった。
額から汗が湧き出し流れ落ちる。
鼓動が早くなる。
鼓動に感応するように汗ばんできた。
浴室のスライドドアが開こうとすると鼓動はさらに早くなる。
10センチ開いたと思ったら徐々に開こうとしているが止めることはできない。
完全に開くと意識が遠くなりわたしはそこで記憶が停止した。
”う、う~ん”
意識を取りもどすとわたしはダイニングの板の間で倒れていた。
ダイニングの掛け時計で時間をみると11時、2時間はダイニングで倒れていたようだ。
不意に思い出したが桐の箪笥の小物入れ引き出し、取っ手に小さな靴下がかけてあった。よく母が履いていたもので勿論わたしが掛けたものではない。
だとしたら今迄の怪現象は他界した母が引き起こしたというのか
断じて違う、風呂で聞いた声は子供の声で母の声ではない、母の霊はおるかもしれないがその他にもこの家にはいるようだ。
部屋で寝ていると毎日のように物音が聞こえてくる。
ねずみが食べ物を漁りにきたりネズミが悲鳴をあげたときは蛇がねずみを食牙にかけたり近所の猫が侵入してねずみを追いかけまわしたりと日々飽きることはないが動物以外でも音を立てる。
水道の蛇口を開けたりするのは蛇やネズミでは出来ないし走り回る足音は耳につきまるで人がいるような音を出す。
一度自称霊能者と名乗る女に相談したことがあった。
その霊能者のことは半信半疑で信頼する価値はない女だった。
ネットの友達から紹介され面白半分で家に迎え入れた、元々どうにかしてくれると期待していなかった。
「冗談じゃないわ、本当に出るなんて聞いてないわよ」
「ちょっと待ってよ」
ネットの友人と知り合いの霊能者は私の家へ入るなり飛び出していった。どうやら何かを見たらしい。
心霊妄想癖のある男から金を稼いでやろう、今回も楽して儲けられると思っていたが実際に出るとは夢にも思ってなかったようだ。
大金を払わなくて済んで良かったが一体エセ霊能者は何を見たのだろうか、ちょっと気になるところだ。
エセ霊能者が来た日の夜、いつもより話し声が騒がしい。
”ぼそぼそ”
声自体大きいのだが人間の話す五十音とは異質で例えばウはう’と聞こえ何を話してるか分からない、言葉自体人間のものとは違うみたいだ。
たまに覗いているようだし騒音は立てるが脅かすような真似はしないし首を絞めるなどの攻撃はしてこないからまあいいかなと思うようになった。
だが私が見えないことをいいことに霊は増えているようでダイニングの食卓に書いてあった文字を見て驚いた。
”大家さん、新たに入居させてくれてありがとう”
「誰が大家さん?」
この物語はフィクションであり実在する人物、団体
とは一切関係ありません