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妄想小説日記 わしの作文

わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

夢で何度も見かけた山村の景色、和服姿の人々

江戸庶民のようだがどこか違和感を匂わす佇まい

知り合いなどいるわけがない、そんな中に見覚えがある人を

見かけた。会ったことはなく初めてだがあまりにも有名で歴史

の本でみただけ。

本で見ただけの人がここには何人もいるのでわたしは一冊のアニメ

を思い出した、銀魂である。

だが銀魂ほど近代日本と江戸文化が重なっているわけではない

建築物は古民家、ビルディングなどないしスーツを着た人もいない

時折、突如として江戸庶民の群れからいきなり近代化が現れる。

 

山本五十六が鍬で畑を耕していると隣の畑では近藤勇がトラクター

に乗って現れたりする。

現代社会ではトラクターがある家には工具だったりオイルだったり

ある訳だが木製の三角屋根の倉庫が一応あるが中には何もない

燃料の予備タンクさえない

 

小高い農道から見てるわたしだがわたしが顔を知っているだけで

知り合いではないから簡単に声を掛けることは無理だった。

ここはどこなのか聞きたかったが諦めることにして背を向けた。

延々と続く農道、信州の畑地帯に似ていると思いながら歩を進めていった。

しばらく歩いていると真っ赤なトラックが近づいてくる、砂埃を巻き上げ車の爆音が勇ましい。日産のダットラのようだが吸気音がきこえるのでSOLEXに付け替えていると考えながら運転手を眺めると

綺麗な女性だった。

目があった。

目が合い気持ちが通じる想いがしたので知り合いかと振り返って

みると車のテールランプが赤く灯って畑のほうへ降りてしまう。

突如わたしの前に土手を駆け上がってきた車が止まった。

真っ赤なダットラは止まると即両側のドアが開き開いたと思ったら

若い女性が二人降りていた。

 

「どこうろついているの?あちこち走り回ってやっと見つけた」

 

「あっちじゃ給油するほど走ったんだよ、ここじゃ減らないから

 いいけどね」

 

「ほぇ?」

「ぼく」

 

「あんたしかここにはいません」

「曾祖父様を筆頭に皆様がお待ちよ」

 

わたしがわかっていないようなので二人は名乗ると

瞬間名前を聞いただけで硬直した。

 

「幸子と久子だよ」

 

写真は貰ったから見ることができたがあくまで顔を識別できるか

そういう次元での友人つきあいで会話したこともない、友人だと

言えるのか判断に迷うそのような間柄なので会いに来たよと言われても呆然としてしまう。

感情が湧き出たのは15分経過してからだった。

感情の昂り或いは感動した場合には自分でも涙腺が開くのがわかる

しかし積み重なった過去の想い蓄えられた悲しみの場合には意図しない場合でも自然と涙が零れる。こういった涙は一旦流れ出すと

簡単には止まらない、止めようがない雫の流れ

 

「ちょっと、男のくせにいつまで泣いてるの」

「泣き止むまで待とう、ホトトギス」

「なにそれ?泣かぬなら・・・でしょ」

「二人とも違うわよ泣くじゃなく鳴くよ」

 

昔の国産車は乗車店員が優柔不断で3人乗ってよいベンチシートに

大人3人座ればぎゅうぎゅうだった。役所は子供を一人の大人と

認めてはいなかったのでベンチシートなる存在が可能だった。

観光バスなどそれゆえに補助席などというものが存在した。

3人乗りのベンチシートはアメリカトラックの真似だろうが

国産5ナンバーとは車幅が違う、特に70年代のアメ車はフルサイズで車幅2メートルを超えるものもあった。

 

「いけない、遅くなるとお母さんに怒られる」

「怒るような母じゃないと思うんだけど」

「生前と死後じゃ性格が変わったの」

 

車は70年代のL型エンジンをチューニングエンジン音から

タービンが回るジェットエンジンに近い金属音に代わり猛然と

加速を始める。

 

今迄何度も見てきた夢の世界が死んだ知人がいることで極楽で

あるとわかったら悩んできたさまざまな事が過ぎ去った日々に

かわっていく、これからは前だけみればいいと思ったら心は

晴れ晴れしていった。ぎ

嫁も持たず子も持てず恋人も持ったことがない、生を受け70年

どんな出会い別れがあったとしても過ぎ去った過去、今は思い出す必要はない、目前にはきれいな女性がいるのだから。

 

「ところでこの車はどうやって手に入れたの、買ったの」

「それがね、昔欲しいと思ってたと頭の中で考えたら現れたのよ」

「だよねこんなエンジン店でないよ」

「こんだけ早いんだったら飛べないの?」

「え!」

「それよそれ」

「なにが?」

「飛べるんじゃない、これ」

「飛べば早くつけるじゃない」

 

久子は幸子がなんで飛ばないのか先程から疑問に思っていた

だが余計な口出しすると怒り出すから黙っていた。

 

「二人はなんで一緒に探してたんだい」

「だって嫁候補だから」

 

神様が選抜した妻候補、何人でも妻を持てるらしく神に逆らうと

天罰が下るようで舅に嫌気が刺しても出ることは許されない。

又子が親に口答えするのも許されないなど規則がある。

最近では逆らうものはいないが太古の昔には少数だがおり

地獄へ送られたそうだ。

 

「見えた、あれがうちよ」

「ほう」

「はは、冗談だろ」

 

合掌造りが3棟積み木のように重なり巨大な3角を築く

屋根は銅板を使い寺院のようだが7色で無秩序に塗られていた

元々家は大きな瓦屋根の純和風の家だったが主たる小岩貞治が

この世界に来た当日にこのような家に一瞬で変わり果てた。

庭には3色すみれが咲き乱れそんなことはなく

小豆色や浅葱色、黄どり色に朱色、砂鉄色鶯色などそんな色の

花びらがあったのかと思うような花が咲き乱れていた。

奇妙な花の色にアクセントをつけるのは溶岩で黒いコークス

薄茶色のレンガが見たことがない世界観を演出する。

 

「幸子、久子二人ともあの子が帰ってくる」

「すぐに探しに行って」

 

家の異変に気付き一人外へ見に行った母イトは家の急激な変貌に

息子貞治が下界で死去したことを感じ取っていた。

食欲が沸かない、埃もないし汚れないので掃除、洗濯も必要ない

何もすることがないので二人はノートパソコンでネットを見ていた

時だった。

別に喉が渇くことがないが普段の習慣からコーヒーを飲むが飲んでも味を感じることもない。

幸子は普段から服を着ていたが久子は下着姿で背中を掻いていた

そこへ母たるイトが突然ドアを開けて入ってきたものだから

2人は声が出なかったのも無理はなかった。

 

「まったくあんたって子は・・・」

「まぁこの緊急時、そんなことはいいわ」

「身だしなみを整えて息子を探して連れてきなさい」

 

「それは本当ですか」

 

「あいつ、やっと来たか」

 

「それでどこへ」

 

「それがわからない、適当にいろんなところを」

 

これが家へ辿り着くまで3人が会うまでの経緯である。

家の上空には到着したがここではじめて幸子は早い段階で

道路を走っていればと後悔した、幸子は方向音痴だったので

今自分がどこを飛んでいるか皆目見当がついていなかった。

 

車なら道路を走ればいいが空には道がない、そこを方向音痴

の人間が飛ぶと堕ちないだけで奇跡であった。

久子は車の免許も車も持っていたから運転には自信があった

だが飛んだことがなく飛行機も乗ったことがないから飛ぶ

ことに恐怖があり運転の交代は拒絶した。

 

家の近くは細い木々で降りられそうもない、しばらく戻って

広い場所を探すことになった。

 

「今降りられそうなところがあった、戻って」

「それがハンドル右に回して方向が変わらない」

「降りて」

「どうやれば降りるんだろ」

「知らないわよ」

 

そんな時ふとアクセルを踏む幸子の右足から力が抜ける。

車は動力を失い失速し急降下、上空600~800メートル

地上に衝突するのは早い。

悲鳴をあげるがあっという間に地面が迫った、ジェットコースター

どころの恐怖ではない生きていた頃の死と対面する記憶が蘇る。

車は山間の小広い畑に落ち突き刺さった、土が柔らかったようで

土埃が煙のように拡がった。

 

「ここは天国?」

 

「あたしらがいるのは極楽浄土でしょ」

 

「う、う~ん」

 

気が付いて心落ち着くと車内は真っ暗、ドアを開けようと

するが全く動かない、後部ガラスから一筋の明かりが差す

光明であった。その光から後部は土の中に潜っていないと

わかり後部ガラスを開こうとした.酸素がなく苦しそうな

貞治に対し幸子と久子は平然としている。

 

「君たち、苦しくないのか」

「なんであんたは苦しんでるの?」

 

人であれば酸素で呼吸するのは当然、呼吸する必要ある

だが人であればの話で人を超越した存在ならば呼吸する

必要はあるのか?

 

「あのね、私達死んで肉体がないものは呼吸する必要はない」

「呼吸しなければ喘息や気管支炎、肺がんとは無縁なの」

「ひつ、それじゃ幽霊じゃないか」

「あんたもね同類よ」

「だから呼吸しなくても平気、呼吸しない事に慣れて」

 

呼吸する必要はないのは理解したがこのままここに生き埋め

になるのはどうしたものか、家に帰らなければ母に会うことも

叶わないしはじめて会う叔父にも興味があった。

 

「兎に角、この状態から元の走れる状態に戻そう」

「どうやって?真っ暗で何も見えないよ」

「せめて見えればなぁ」

 

土砂が車に中へ侵入し思うように体を動かせない

しかしルーフに近いところは空間がありそうだ。

空間を利用し後部窓のスライドガラスを開けてみたが

車が斜めに突き刺さっている為土砂は低い方へ流れて

きて空間を埋めてしまった。

もう駄目かと思ったその時、土を掻きだす音がした。

徐々に埋もれていた土が減って光が差し込んでくる。

 

「今出してやるでな」

「がんばれや」

「おめえらもっと気合いれんか」

 

4,5人の男たちがいるようだ。

ディーゼルエンジンのうなる音も聞こえる。

斜めに突っ込んでいた車が強力な牽引力で引っ張られ

車体が水平になる。

ドアが開かれ土砂が一気に外へ流れて体が自由に動くように

なった。

 

米国製の牧場で使う大きなトラクターから降りてきた

のは木下藤吉郎秀吉だ。

スコップで土砂を掻きだしていたのは中村主水を演じて

いた藤田まこと、激を飛ばしたが大石内蔵助。

車にけん引フックを掛けていたのが夏目漱石だ。

そして使いパシリでやってきたのはあの志村けんだった。

 

「ありがとうございました」

「お互い様だがよ」

「今度トラクターの乗り方教えてけれ」

 

生前武将であった者も立派な百姓姿に変わっていた

志村けんはTVキャラの変なおじさんで現れ笑いが

出そうになった。

車のエンジンも掛かり家路を目指し走り出すと

どういうわけか車内に積もっていた土がいつのまにか消え失せ

綺麗になっていたのには驚いた。

燃料が減らない、壊れない、これが神の作った車なのだ。

 

方向音痴の幸子では不安がありまたトラブルが発生し兼ねない

運転は貞治が交代することになった。

最初は運転に戸惑いがあったがしばらく走ると車が従順になり

勝手に動くようになった。

知っていたように駐車スペースまで車は案内する。

 

家へ着くと門扉が主を待っていたかのように勝手に開いた。

人間社会の下界は令和、上界に年号はなく昭和生まれ大正生まれ

明治生まれ江戸、室町、奈良生まれが混生し人々は好んで

江戸中期の衣装を着こなし道具に至っては昭和以降の平成の

ものまであった。

木下藤吉郎がトラクターに乗ってきたが前進とバックだけ

しか出来なかった、作業機の扱いはわからなかったので

教えてくれる人を探していた。

 

秀吉はなぜ豊臣姓をなのらかったのだろうか

ひとつに武将として頂点に立ったから武士には興味が無くなった

もうひとつには信長と出会い信長という名を捨て織田上総の介

と本来の名前を使っていたからに他ならない。

極楽にきて人間界の頃と違った生き方をする者は多い。

木下藤吉郎はロングのウェーブヘア、織田上総の介はアフロヘア

 

貞治が幸子と久子に案内され家の玄関には珍しい両吊り下げ式

引き戸が使われ開けるものを戸惑わせる、一見すると両開きドア

のようにドアノブが左右についているからだ。

 

「あんな簡素なつくりの玄関で大丈夫か、雨の侵入や防犯は」

「平気よ天候はいつも晴れ、結界があり侵入者はなし」

「だいたいこの家は君貞治が望んだ家なんだぞ」

 

玄関の広間から低く奥行きがある踏み台を一段上がれば家の廊下

廊下の左右には部屋があるようで扉が等間隔でついていた。

扉の傍まで進んでいくと突如として人の姿が現れる、先祖の一人

歩くたびに次から次と現れ会釈したり言葉を投げつける。

 

「一体何人いるんだよ」

「両手でも足りないって歌があったよね」

「ばんばひろふみよね」

「母さんはどこにいるんだ」

「別棟よ」

とりあえず全ての先祖に挨拶しなければならないのが主の務め

順番に各部屋の通路を歩いて行った。

別棟に入り2階へ上がらなければならない

また60度ある急傾斜の階段を腕と足の筋力を使い上るのは

疲れる。1棟で3階まであるので階段3本、更に棟が重なっているので

最上階まで更に階段3本、すべて60度の急傾斜する裸階段だから手すりはないし下は丸見え、階段というより頑丈な梯子である。

 

「貞ちゃん、やっと来たんだね」

「どんだけ待っていたことか・・・」

「母さん」

 

別棟3階でやっと母に会えた。

母は冷静になると貞治から体を離すと諭すのだった。

 

「他のお方がお待ちになっている、早くお行き」

「あとで話そう」

 

いよいよ別棟二部、上の棟ここまで急な階段を6回登ってきた

だがあと2回昇らなければならないと幸子は言う。

階段を続けて昇りたかったがひとつ上る度上がった階層で各部屋を

回らなけれいけなかった。

全員への挨拶は当日に終えなければ挨拶されなかった方は家から

追放されることになる、損な役回りだ。

まるで結婚披露宴で来客のテーブルに主役である二人が歩いて

回るようなものだと思いながら貞治は歩を進めるのであった。

 

「この家はどれくらいの広さがあるんだい」

「曾祖父さまの話だと1反5畝だそうよ」

「一反が300坪だから5畝はその半分だとすると450坪か」

「ねえねえ。坪の単位って見当つかないよ」

「普通の平均的ないえが40坪で大きな家だと50か60坪

  その10倍以上ってことだろうな」

 

450だとすると1500㎡、合掌づくりの一棟が500㎡ということになる。建物の規模であり敷地面積ではない、だとすれば敷地

は少なく見積もっても1000坪はあるということだ。

まるでスタジアムを使ったイベントで会場内を見て回るようなもの

死者だから肉体的な疲れはない、しかし多くの先祖に挨拶するのは

心労的に疲れる。

 

一通り挨拶が終われば自分の部屋を案内された。

扉を開けると何者かがいる気配が感じ取れた、誰かが椅子に座っている。

 

部屋では待っていたのは母だった。

 

家の中では住まうもののみ瞬間移動が可能で其の為母は

貞治たちより先に部屋へ来れた訳で出かけるときや帰ってきた

時は梯子を使わず昇り降りが可能だ。

 

「一人で生きてあ疲れ様だったね」

「これから主としてここで暮らす目標を定めなければならない」

「何もしないでもいいし、畑作業をするのも良い」

「年間の作業スケジュールを企画し皆を導くのが主の責務だ」

「ご先祖様を使えと母さんは言うのか、無茶だよ」

「お前の父も祖父もそうやってきた、お前もそうするんだ」

 

おわり