数日前、祖母の葬儀での出来事だった。
私の地元は小さな港町の商店街にある。
私はその商店街の旧料亭の孫なのだ。
田舎に帰れば、過去に名を馳せていた料亭の孫として私の知らない婦人から挨拶される事もしばしばある。
小さな街だけに住民は大抵顔見知りで、あの家はどうだとかいう噂話もすぐに広まる。
特に商売の上がっている店は有名で、付き合いも広くあった。
今や、その賑やかな時代を生きた世代も順に葬儀を迎える程の年月が経っていた。
祖母の葬儀には、花輪が7つ程飾られた。
その2つには私の胸に小さく突き刺さる名前が記されていた。
ひとつめは、とある会社の名前。
その会社は田舎町では手広く商売をしている家族で経営され、その家のおばあさまは私の祖母と仲が良かった。
社長は私の父と同じ私立の小学校へ通っていた。
当時、私の田舎では小学校受験は珍しかったそうだ。
そして、その会社には私の従兄が正社員で長年お世話になっているという、世代を超えた仲の良い家柄だった。
とある偶然のきっかけで、その家の長男と私は出会った。
私より1つ年上の彼は容姿も素晴らしく、お互い一目惚れをし、恋は一気に加速した。
当時、私には彼氏がいて、形として略奪愛になってしまったが、彼と当時の彼が知り合いだった為、どうやら海辺で行われた男同士の会議で和解したと、後に知らされた。
急加熱した恋は、すぐに冷却された。
無論、親族を通して蜜に繋がっている家柄だけに私の受付している通夜にも彼の両親は焼香に来た。
通夜の後の食事の頃、仕事あがりの彼も焼香に駆けつけた。
主人といる私は微妙な想いでその場に居合わせた。
ふたつめは、従兄の嫁の実家からの花輪。
...私がまだ高校生だった頃、放課後しばしば地元のファミリーレストランに集まっていた。
ある時は誰かの彼氏を連れて、ある時はその友人を連れて。
ある種、そこにも出逢いがあった。
そこで友人がある年上の男を連れて来た。
私達は特に深い会話をするでも、連絡先を交換するでもなく分かれた。
当時、私には彼氏がいたし、その時は友人にとってその男がお気に入りの存在であるような気がしていた。
その男との再会はそれから数週間後に行われた従兄の結婚式だった。
その男は従兄の嫁の弟だったのだ。
まさか親戚になるなんて。
その後、友人と一緒に笑い転げたのは言うまでもない。
それから、その男と私は仲良くなった。
私には彼氏がいたが、親戚というのを口実に夜のドライブへもしばしば。
寧ろ、恋に発展するのか否かの危ういラインを楽しんでいたのかもしれない。
結局、その彼氏とは破局に終わり、男とは煮えきれぬ関係の儘、疎遠になり、その後、いくつかの恋を経て、私は今の主人と結婚した。
そんなふたつの花輪は私の祖母を静かに葬っていた。
微妙なゆかりを思い出す葬儀だった。
皆、変わらず元気にやってる様で何より。
mack.§
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