それは、私が東北地方のガソリンスタンドの現場にたまたま出た日の話です。
東北支社の課長に昇進して、本社の総務課から現場に戻りました。
いつもは、仙台の支社のオフィスにいますが、この日は知り合いのBMWのタイヤ交換、オイル類の全交換を指名されたからガソリンスタンドに出ていました。
BMWの持ち主は、私の名付け親の弟子で、有名な寺の副住職でした。
ガソリンスタンドで作業している間も近くで作業を見たり、自分でタイヤを装着したりしていました。
そんな時、後ろから声をかけられました。
真田さん、お久しぶりです。
東京のテレビ局のプロデューサーでした。
この辺りに、凄い心霊スポットがあると聞いて特番作ろうと思っていますが、真田さんご存知ですか?
私は、知らないけど、この人なら知っていると思うよ。
私は、副住職に話を振りました。
副住職は、知ってはいるけど、相当危険だよ。
禁足地だから、肝試しで行ったバカが何人も死んでいるよ。
そう応えました。
是非、そこを教えて下さい。
勿論、謝礼は出しますから。
そう言って副住職に10万渡しました。
作業が丁度終わったから行こうか?
一度寺に戻るよ。
そう言って、一行は副住職の寺に行きました。
副住職は、事前にお祓いをして、強い御守りを全員に渡しました。
お笑い芸人と売れないアイドルと言う、お決まりのメンバーでした。
禁足地だけあって、異様な雰囲気の場所です。
アイドルは、禁足地に入るなり顔色が悪くなったそうです。
お笑い芸人も頭痛がしているのに頑張って歩きました。
神聖な池があった。
いきなり霧が立ち込めました。
霧の中から女性が現れました。
副住職は、印を組んで黙っていました。
カメラで撮影していました。
それを意識したお笑い芸人が女性に抱きつこうとした瞬間、身体が動かなくなりました。
そして、池の中に引き釣り込まれた。
ロケは中止だ、引き上げるぞ。
俺を置いて行くなよ。
お笑い芸人は、水中から出て来た。
アイドルは、嘔吐していました。
副住職が真言を唱えて女性を食い止めた。
どうにか寺まで帰って来ました。
君達、3日間はこの寺から出るなよ。
出たら命の保証はしないよ。
あの女性は、池の主だったよ。
しかも、憑いて来た可能性が高い。
御守りを見てみろ。
全員の御守りが粉々に割れていました。
君達は、この御守りに守られたんだよ。
2日目の夜、お笑い芸人が抜け出して東京に帰ろうとしました。
しかし、東京駅で突然倒れて亡くなりました。
3日目、副住職がもう一度、お祓いをしました。
護摩を挙げていたら、火の中から女性が現れました。
貴様ら、無事に生きれると思うなよ。
他言したら殺す。
そう言って女性は消えました。
七日間は、今回の事を話してはいけないよ。
喋舌ったら、命落とすよ。
アイドルとスタッフは、約束を守りました。
しかし、プロデューサーは、6日目の夜、馴染みのキャバクラで、お気に入りのキャバ嬢に話をしてしまいました。
翌日、プロデューサーは遺体で発見されました。
手足を粉々に折られ、身体中の血液が無い状態で発見されました。
鑑識も、どうしたらこんな殺し方出来るんだ?
手口が分からない。
そう言ってました。
それから数日後、私のオフィスに副住職が来ました。
あのプロデューサー、約束を破ると思っていたよ。
死相が出ていたからね。
今頃、地獄の一番底で鬼の責め苦にあっているよ。
あのアイドルも、長くは生きられないよ。
そう言って帰りました。
アイドルは、それから半年後に急性白血病で亡くなりました。
やはり、副住職は、名付け親の優秀な弟子だったと改めて思いました。
今では、中僧正になって、住職として忙しい日々を送っています。