二国記エピソード2

 エピソード0で語られなかった泰麒の物語。

 Ep0「魔性の子」で、高里(泰麒)は幼い頃に神隠しに遭い、1年後に突然帰ってきたことになっています。

 その間、何があったのか、高里は何者なのか、最後に高里自身が思い出し、十二国の世界に帰還することになりますが、何を思い出したのかははっきりと明かされる事はありませんでした。

 このEp2で、それが明らかになります。

 泰麒は何故、蓬莱に生まれたのか。

 神隠しに遭い、どこに行き、何をしていたのか。

 

麒は、生まれる前に蝕によって蓬莱に流されてしまいました。

 蓬莱での母親となる女の体に宿り、生まれ、人間の子として育てられますが、その間、十二国の世界では必死の麒麟捜索が行われます。

 他国の麒麟の助けもあり、十年の後、ようやく泰麒を発見し帰還させることに成功しますが、蓬廬宮で育った麒麟とは違い、麒麟としての自覚も無く、麒麟としての力の使い方も知らず、転変すらできない泰麒なのでした…。

 

頭が、「魔性の子」と同じ文章だったので、思わず表紙を確認してしまいました。

 「魔性の子」は、高里(泰麒)と広瀬の物語でしたが、今回は泰麒の物語です。

 十歳の頃に神隠しに遭い、一年後に突然帰ってきた高里。

 これは蓬莱の側から見た話です。

 元々の泰麒が生まれた世界から言えば、蝕によって生まれる前に蓬莱に流され、十年後にようやく帰ってきた麒麟の話になります。

 「魔性の子」を読んでも、この一年については謎のままでしたし、まだ十二国記の世界観について理解が浅かったこともあって、何が理解し切れないような、スッキリしない感じを残していました。

 そんなこともあって、泰麒の話だと分かった時には嬉しかったですね。

 十歳にして、ようやく故郷に帰還した泰麒。

 さぁここから麒麟としての活躍が始まる…のかと思いきや、事はそんなに容易ではありません。

 生まれた瞬間から麒麟として育てられてきたわけではなく、ただの人間として十年を過ごしてきたので、麒麟が何なのかもわかりません。

 妖魔を使令する術も知らず、姿を転変させることもできません。

 それでも周囲は、「その時が来ればわかる」「その時が来ればできる」「何も心配する必要はない」と泰麒を励まし、精いっぱいの愛情を持って泰麒を育てます。

 しかし泰麒は、そうした周囲の愛情を受ければ受けるほど悩んでしまうのです。

 期待に応えられない自分。

 それは蓬莱に暮らしていた頃からの悩みでした。

 両親や祖母の期待に応えられず、いつも失望させたり怒らせてしまう。

 どうして上手く出来ないのか、どうして期待された通りにできないのか。

 幼い高里(泰麒)はずっとずっと悩んでいたのです。

 そして本来の自分の世界に帰還した泰麒でしたが、ここでもやはり同じ悩みを抱えてしまうのでした。

 

んな泰麒に転機が訪れます。

 驍宗、李斎が騶虞(スウグ)という妖魔を捕らえに行く際に、泰麒も誘われ同行することとなります。

 しかしその途中、妖魔の中でも最高位の力を持ち、麒麟や王をも寄せ付けないという饕餮(トウテツ)の巣に迷い込んでしまいます。

 饕餮に襲われ重傷を負った李斎はなんとか逃したものの、驍宗を救うためには自分が饕餮に対峙するしかない状況に、泰麒は決意します。

 そしてとうとう饕餮を使令に降ろしてしまうのです。

 妖魔の頂点に立ち、麒麟や王も手に負えないとされる伝説級の妖魔を使令にしてしまった泰麒。

 その様子を間近で見ていた驍宗は、子供だと思っていた泰麒に畏れを抱きます。

 泰麒は饕餮を使令にすることで、その麒麟としての力が並外れていることを証明することになりましたが、困ったことに本人は全くの無自覚です。

 そんなことよりも、驍宗が蓬廬山から下山してしまうことの方が重大で、驍宗が王であるという天啓を自覚できないまま、契約をしてしまい…。

 

て、「魔性の子」では、高里(泰麒)は神隠しに遭った後、一年で蓬莱に帰ってきました。

 つまり、泰麒はこの物語で麒麟として目覚めた後、それほど時を置かずに再び蓬莱へと渡ることになるわけです。

 なぜ再び蓬莱に渡ることになったのか?

 なぜ麒麟である記憶もなくしていたのか?

 そこはいまだ謎として残りました。

 でもスッキリしない気分ではなく、またいつか続きを語られるのを楽しみに、本を閉じました。

 

 

 

 

 

屋で偶々見かけて買ってみました。

 20年ほど前の本なのでちょっと古いのですが、子供の頃から慣れ親しんだタミヤのマークを見て、思わず手に取ってしまったというわけです。

 少ないお小遣いを握りしめて模型屋に行ったことを思い出します。

 戦車も、飛行機も、船も、車も、バイクも作りました。

 キットを一つと、必要な塗料を買うと、1ヶ月のお小遣いがほとんど無くなります。

 それでも良いと思えるほどの魅力があって、たくさん作りましたよ。

 正月にお年玉を貰うと、ラジコンも買いました。

 当時の自分にとってはとてもとても高い買い物でしたが、それだけに「凄いものを手に入れた!」という満足感はいまだに覚えています。

 ラジコンキットの箱は、すごく大きいんです。

 普段買っているプラモの箱とは比べものになりません。

 自転車で買いに行くのですが、カゴに入らないのです。

 プロポやバッテリーも一緒に買うと、それはもう本当に大荷物です。

 その大荷物を、家に帰って部屋で広げる時の興奮!

 大事な大事な思い出です。

 子供時代の楽しみは、タミヤのキットのお陰であるところが大きいのです。

 

の本に書かれている内容は、私がプラモやラジコンをやっていた頃よりもずっと昔の話ですが、私が親しんだタミヤというメーカーがどんな歩みを経ていたのかがわかり、とても興味深かったです。

 私がプラモを作っていた当時、既にタミヤ製というのは抜群の安心感があって、作りやすさも精密さも、タミヤのプラモなら間違いないという意識が確かにあったのです。

 本書を読むと、それは必然なのだということがよく分かります。

 徹底的に取材をし、作りやすさを追求する。

 そして何より、模型好きが設計している。

 

はスマホやゲームが遊びの主流になっていますから、私が子供の頃よりもプラモを作る人はだいぶ減ったでしょう。

 私が行っていた模型屋さんは3軒ありましたが、全て閉店してしまいました。

 寂しいなと思いますが、そういう時代なのでしょうね。

 でも、タミヤの新製品ニュースや、タミヤのマークを目にすると、やっぱりついつい見てしまうんです。

 そういう方、多いのではないでしょうか?

 

しぶりにプラモを作りたいなと思いました。

 

 

 

2020年 本屋大賞ノミネート作品

校生の時、事故により両親を亡くした霜介は、それ以来、心を閉ざしていた。

 感情がなく、食欲もなく、人と関わらない。

 両親が残してくれたお金で生活には困らないが、ただただ心の殻の中に閉じこもり、「生きる」こともわからなくなっていた。

そんなある日、唯一の友人とも呼べる古前から、ある展覧会の会場設営のアルバイトを頼まれ、そこで偶然、日本を代表する水墨画家である篠田湖山と出会う。

 湖山は霜介に水墨画の感想を聞き、そのまま霜介を自分の弟子にしてしまう。

 水墨画に何の興味もなく、経験もなく、それどころか、ずっと心を閉ざして生きてきた霜介は突然のことに戸惑うが、とにかく湖山の元を訪ねてみることに。

 そこから霜介の心の成長が始まる…。

 

匠である篠田湖山をはじめ、様々な人物との出会いによって、霜介が心を取り戻していきます。

 水墨画に取り組む中で、考え、悩み、驚き、感動する。

 そして、人と気持ちを通わせる。

 それは霜介が長い間、避けてきたことでした。

 戸惑い、悩みながらも少しずつ変わっていく霜介の様子を見ていると、その純粋さとひたむきさに感動します。

 全編を通して、とても優しくて、透明で、澄み切った物語でした。

 これほど清々しい気持ちで読み終えたのは、いつ以来だろうと思うくらいの、本当に読んで良かったと思える本でした。

 

 

 

   

二国記エピソード1の下巻

 身も心も疲れ果て、力尽きようとしていたところをネズミのような半獣である楽俊に助けられたことで、再び旅を続けることとなった陽子。

 巧国に流れ着いてからずっと、何度も騙され、酷い目にあってきた陽子の心は荒み、命の恩人であるはずの楽俊のことすら信じられず、疑いの目で見てしまいます。

 

かし、旅の途中で妖魔の襲撃を受け、倒れた楽俊を見捨てて逃げてしまったことで、陽子の心に変化が起きます。

 信じる心を取り戻し、ずっと付き纏っていた不安を克服することで、失くしていた剣の鞘も陽子の元に戻ることとなりました。

 

州国の港町、烏合で再会した陽子と楽俊は、延王と会い助力を乞うべく旅を続けますが、その道中で、陽子が慶東国の女王であることが判明します。

 もちろん本人には全く自覚がないのですが…。

 

かしこの時、慶東国には陰謀によって偽王がいました。

 麒麟が選んだ王ではないため、国は荒廃していく一方で、民は苦しんでいました。

 その様子を知った陽子は葛藤します。

 本物の女王として慶東国に行くのか、元の世界である蓬莱に帰るのか…。

 

巻は、上巻のように次々と痛い目に遭うわけではなく、代わりに様々な葛藤をすることになります。

 自分とは何なのか?どこで、どう生きるのか?

 楽俊によって救われた陽子が、葛藤を乗り越えて、人としてさらに強くなっていく様子が力強く、こちらの心にも響くものがありました。

 

 

 

 

二国記エピソード1

 平凡な生活を送っていた陽子が、突然、異界へと連れ去られる。

 正しくは、異形の怪物に襲われ、謎の人物であるケイキに連れられて逃れた先が異界だった…ということになるが、当のケイキとは世界の狭間での妖魔との戦いの中ではぐれ、たった一人で異界を彷徨うことになってしまう。

 様々な困難に見舞われる中、ケイキから渡されていた不思議な剣でなんとか切り抜ける陽子。

 

の刀身には、時折、陽子がいた世界の様子が映し出される。

 陽子の両親、学校の担任教師、そして友人たち。

 安心できる、帰るべき場所があり、周りの人々は自分にとっての味方だと思っていたが、彼ら、彼女らの本心を聞き、それも脆く崩れ去ってしまう。

 周りに合わせ、いい人、いい子、いい友人であろうとした自分は、そのせいで自己主張がなく、周囲からは「得体の知れない人」だと思われていた。

 危害を加えない、危害を加えられることもない、安心できる関係の中で自分は暮らしていると思っていたが、その実、それは上辺だけの希薄な関係であった。

 

分の生き方は間違っていたのだろうか?

 元の世界に帰りたいと切実に願いながらも、帰る場所などないことを思い知り、異界で一人きりの陽子に、本当の孤独が襲い掛かる。

 そして、度重なる苦難の中、とうとう陽子は力尽きようとしていた…。

 

上巻のあらすじとしては、こんな感じでしょうか。

 妖魔に襲われ傷つき、海客(蝕によって流れ着いた異界の人間)として追われ、親切を装った住人や、同じ海客からも騙されて、安心して休める場所も食べるものもなく、そしてケイキと再会することも叶わず、心身ともにボロボロになっていきます。

 まさに踏んだり蹴ったり。

 泣きっ面に蜂もいいところです。

 本当に気の毒になってきます。

 上巻でここまで酷い目にあったのですから、下巻では救われることを願います。