これまでイワン・コロフ、ニコライ・ボルコフ、クリス・マルコフ、アレックス・スミルノフ、ニキタ・コロフなど「ロシア出身」を名乗るプロレスラーは多く存在したが、いずれもギミックであり、冷戦の終結に伴い登場したソビエト連邦初のプロレスラーとして注目を集め、新日本プロレスに登場したサルマン・ハシミコフのテーマ曲。このテーマ曲の思い出は、ライヴ観戦した1989年5月25日大阪城ホールの格闘プロリンピックIN大阪大会にて、当時ビッグバン・ベイダーが保持していたIWGPヘビー級王座に挑戦、得意の水車落としでベイダーを破り新王者となった試合が印象的。この曲は、川井憲次音楽担当の映画『紅い眼鏡/The Red Spectacles』のメインタイトル・テーマ。

 

 

『紅い眼鏡/The Red Spectacles』は、1987年にキネカ大森などで公開された。それまでもっぱらアニメを手がけてきていた押井守の初実写監督映画作品である。後にケルベロス・サーガと呼ばれる押井守の作品群の第1作に当たる。映画公開に先駆けて1987年1月にラジオ日本『ペアペアアニメージュ』の番組内で押井守脚本による全6回のラジオドラマも放送された。

 

当初は、声優の千葉繁のプロモーション・ビデオを作るという話で16mmフィルムで撮影する500万円規模の作品として1986年1月に企画されたが、徐々に話が大きくなり、35mmフィルム撮影の映画製作にまで膨らんでいた。千葉は押井が監督を務めていたアニメ『うる星やつら』の人気キャラクター「メガネ」を演じており、製作したオムニバスプロモーションは『うる星やつら』の音響製作会社、プロデューサーの斯波重治も同社の音響監督であった。本作のプロテクトギアも『うる星やつら』に登場するメガネのパワードスーツが起源である。

 

 

川井 憲次は、作曲家。東海大学工学部原子力工学科中退、尚美音楽院中退。本人が自分のことを「かーい」と表すため「かーいさん」と呼ばれている。インストゥルメンタルバンドであるfox capture planのカワイヒデヒロは甥。サントラ界の大御所として知られており、アニメ、ドラマ、映画、ゲーム等、幅広いメディアミックス作品で活動している。川井によれば、その作品のヴィジュアルから音を引き出していくため、何も無い状態から音楽を作ることは苦手と述べている。アニメでは映像ができていない場合が大半である為、絵コンテのビジュアルから音楽を作るという。感覚的な音楽作りを得意とし、映画『クロユリ団地』の楽曲制作時間は1曲4、5分という速度だったという。父の影響で幼少時から音楽を聴いており、小学生時にはフォークを中心に、中学生時には洋物ポップスばかりを聴いていた。高校生時には初購入したエレキギターがきっかけでバンドを作ったが、そのせいで浪人する。大学生時には音楽クラブに入ったせいで中退し、親の手前で音楽の専門学校に入ったが、こちらも半年ぐらいで退学する。しかし、その頃から作曲の仕事が入るようになったうえ、ある歌手のバックバンドのリハーサルコンテストの張り紙を見て本物の大学生との混成バンドを結成し、応募する。バンドは優勝したがお金になる仕事には恵まれず、結局は川井だけがギタリストとして活動することになり、自然消滅する。その頃から自宅録音に興味を覚え、舞台やCM音楽などを手がけ、劇伴作曲家としての活動を開始する。自宅スタジオには当時、矢沢透などが年中訪れていたという。

 

 1986年、植岡晴喜監督、つみきみほ主演のダーク系ファンタジー映画『精霊のささやき』を担当。映画『紅い眼鏡』で押井守と出会い(「自宅録音で制作費が浮くから」起用されたといわれる)、以後『機動警察パトレイバー』や『攻殻機動隊』の劇場版の作曲を担当する。『BLOODY MALLORY』などのフランス映画、『美しき野獣』『南極日誌』(佐久間正英との共作)などの韓国映画でも作曲を担当する。また、日本のテレビ番組のBGMとしても利用されることが多い。2012年には紅白歌合戦のメインテーマを担当、2015年には大河ドラマの劇伴曲を担当した。

 

2005年、AMD Awardの「Digital Contents of the year」に出品された『イノセンス』で「Best Music Composer賞」を受賞。2008年、第41回シッチェス・カタロニア国際映画祭に出品された『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』で日本人としては3人目となる最優秀映画音楽賞を受賞。

 

 

■サルマン・ハシミコフ(The Red Spectaclesメイン・タイトル)

https://www.youtube.com/watch?v=BnjJTQYv5eo

 

■The Red Spectacles 20th edition