ドライブと言えば琵琶湖

山中超えの見慣れた景色少しずつ 暗くなっていく空

もやもやしたままの心となりすました自分

もう頭の中も心の中も混乱状態だった

彼が「19歳だよね いいね〜若いし楽しい時だろ」と

(会おうとしていた人は19歳なのか きっと 今頃 探しているかも)と思いながら無言で頷く

男性と2人きりなんて‥

飛び乗ったはいいけれど怖い人だったらどうしょうなどと後悔したところで どうにもならないって言うか

私 19歳に見えるのか?

なんて とぼけたような疑問まで

琵琶湖大橋から少し波立つ水面と窓を少し開けると秋風が 心地よかった

湖岸に車を止め「俺は 26歳なんやで おっさんやろ〜」と言いながら

「最近 気に入ってる曲やねん」と

ハウンドドッグのバラードを聞かせてくれた

(後に歌手を知ったのだけれど)

なんとなくの歌詞の意味は解るけれど

恋愛経験が無いとその心情は解らない

それにしても同じような洋服を着た子がいるとは余りにも偶然過ぎて怖かった

こんな偶然もあるものなんだなぁと

相手は 大人だし私は まだ高校生15歳

15歳のちびっ子からしたら本当に大人の人だから 

緊張しまくっていた怖い事されたらどうしょう

(それは 刺されるとかの怖さ)

大人の怖さは 頭に全く浮かばない想像すら無い

車の中にバラードが流れ

少し寒いくらいの風が少し開けた窓から入ってくる

沈黙の中突然 

彼がこちらへ寄ってきた何事かと びっくりしていると

私の顔の近くまで 彼の顔が

慌てるは 驚くはですくんでしまった

「もしかして 初めて?」頷くだけで 精一杯だった

「そっか びっくりさせてごめんな 帰ろっか」

と私の心臓は 飛び出すのではないかと

もしかして 心臓の音が彼にまで聞こえているのでは?と火照った顔を 

秋風が冷やしてくれる

初めて宝塚のあの恋愛物語のドキドキを経験した

帰りの沈黙も私の胸の音が聞こえていないかと

それまでのイライラやモヤモヤした気持ちが一気に遠くへ飛んでいってしまった

それは始まり恋の始まり金木犀の香りと少し冷たい秋風が運んできてくれた初恋の始まりだった