それは突然夫婦喧嘩が絶えず祖父母も困りはてていた頃

私の心の限界も等に越えている


その日はあの可愛い憧れの子と映画へ行く約束をしていた

用意をしていても

容赦なくあれこれと父の悪さを祖父母に説明しろと言ってくる

離婚したいのだろう

あの知らないおじいちゃんと暮らしたいのだろう

祖父母は離婚させたく無い

その間に挟まれ

私は祖父母に「もう大人なのだから自分の好きにさせればいい」と祖父母は私の事も兄の事も心配してくれていたのに 今となっては あの時心配してくれていた事もありがとうと言えない


母にも 

「勝手にすればいい けれど兄も私も勝手にするから」と 


本当の限界だ

「あのおじさんは お金目当てなのが解らないの?」

「あの人がこの家をめちゃくちゃにしたのも?」と

 堪えていた心の中が雪崩のように出てくる

自分でも そんな事が嫌で友人との時間も迫っていたから出て行こうとした

母が「どうして解ってくれないの」と責めようってくる手を振りほどいた時に 母が倒れかけた

これ以上いたら 余計に母を傷つける

家を飛び出し 

友人の所へ行ったが相当の時間を待たせてしまい映画どころではないし友人も怒ってしまった

家庭の事情を話す訳にもいかずひたすら謝るしかなかった

後に 彼女は学校の先生から私の事を聞いたよう

それは 私が突然 1人暮らしになった時クラス全員に 先生が話していた

友人との 楽しみにしていた初めての映画が無くなってしまい時間を持て

余し飛び出してきた家にも帰りたくなくてどうして時間を過ごそうと悩んでいた

当事の北大路は地下鉄ができ

周りには 本屋さん有名なドーナツ屋さんハンバーガー屋さんなどがあるけれど

私の心の中は

家の事や友人の事でごちゃごちゃになり整理がつかない

同じ通りを行ったり来たり

その時 ふっと視線を感じた

下ばかり向いていた私がその視線の方に顔を上げると

手招きしてくる車に乗った男性

はっきり顔も見えず兄の友人?と思い近くに行った

途端 扉が開き「どうぞ」と全く知らない人だった

もう どうとでもなれ何が起こったっていい!とその車に乗った

「探したんだよ洋服しか解らないから」と

あ! 誰かと間違えたんだどうしょうと思っても後の祭りだ


「あの ごめんなさい」と嘘ついた

会うであろう人になりすました

「何処に行く?この時間だからドライブ行く?」

無言で頷いた

何も言わずただ外の景色を眺めていた

「会えて良かったよ もう会えないかと思った」

(やっぱり誰かと待ち合わせだったんだ)

その後 その男性が何を喋ったかも覚えていない

なりすました事に後悔と 待っているであろうその女性に申し訳なかった

あれは何時頃だろうほんの少し 肌寒くなった頃秋の夕暮れ前

まさか その人と本当の恋が始まるなんて1ミリも思わないただ家に帰りたくなくて飛び乗った車に

今でも はっきり顔を思い出すくらい

そして 本気で愛してくれたたった1人の人

土下座しても謝らなければならないくらい私は 出会ってから 何年後かにとんでもない ひどい事をした

もう 何処にいるのか解らないし謝れない

あの 優しい風が吹く優しい日差しと甘い金木犀の香りが漂う秋

あの人と出会った

初めての恋 何もかもが初めての恋

今でも 秋が好きなのは彼と出会ったからだろうか