Key of Life ―― Noといえない旅人

ツアーで立ち寄る土産物店
差し出されるのは、アイスハイビスカスティー

甘さの奥に、ほどよい酸味
エジプトの強い陽射しを、ほんのひととき忘れさせてくれる

 

けれど -----

気づけば店の奥へと案内されているこの“お約束の流れ”は
Noと言えないグランマにとって、まさにアキレス腱だ

 

トルコでも経験済み
色とりどりの絨毯を前に
「小さいのなら…」と息子にラインを送ったことがある
返事は一秒で来た
「いらない」

 

自他ともに認める“脇の甘さ”
すでにスパイスやオイルで、そこそこの出費
今度こそ財布の紐を締めようと 心に誓い店内をひと回りする

 

----- そのとき

壁の写真に目が留まった びっくり
考古学者 ハワード・カーター が 
ツタンカーメン の墓を発見したときの一枚

つい先ほど、墓所で見たばかりの写真だ
見上げていたのは、ほんの数秒だったと思う

 

その“数秒”を 彼は見逃さなかった

すっと近づいてきた青年は
カーターの隣に写るエジプト人は自分の祖父だと言い
その祖父が作ったというアンクを奥から持ってきた

 

----- 話半分 えー
いや、眉に唾どころか、心の中では二重三重に警戒していた

それでも

気づけば 勝負はついていた

 

というのも -----
神殿のレリーフに描かれたアンクが、ずっと気になっていたのだ

旅も終盤
息子への土産を、そろそろ決めたいと思っていた

 

アンクは古代エジプトのヒエログリフ
意味は、「命」

お守りとして、これ以上ないほどふさわしい

 

……完全に 見透かされている

 

仕方がない

息子には、少し大きめのアンクを
自分には、“祖父が作った”という小さなアンクを

決め手は 壁画に残るあの淡いブルー

 

グランマの心に残ったのは、もうひとつの呼び名
Key of Life

人生の鍵

この小さなお守りに
これからの時間が穏やかに流れていきますように -----

 

そう願いながら、ふと現実に戻る

財布の紐は 結局 -----
最後まで、ゆるいままだったけれど