【謎のバス大行列の理由を教えて下さる:2018年 49歳】
私はその日、珍しくもたもた迷っていた。
場所は、たまーに訪れる、隣町の駅直結型ショッピングモール内。
懸案事項は、帰宅ルートの選択である。
「いつもは電車で帰るけど、今日はバスにしようか。どうしようか……」
只今、午後4時になろうかというところ。
ちなみにバスは、1時間に1本しかない上に、電車より時間とお金がかかる。
けれど、停留所が自宅の近くにあるし、今の時間帯なら空席率も高めなので、荷物が多くて疲れている時などは、電車よりかなり楽だ。
ただ、今日は荷物も少ないし、そこまで疲れていない。
だから、本数の多い電車にサクッと乗り、15分ほど歩いて帰ればよい。
なのに、何故か脳内で「バスルート」がグイグイ来る。
一体なんなんだ、この主張……!?
……とか何とか思いつつ、結果、かすかな閃きでバスルートを採用。
発車時刻まであと5分程なので、さっさとモールを出てバス停へと向かった。
ところがどっこい、バス停を見て驚愕。
未曽有の大行列が出来ているではないか!
「えーなにあれー!?何かのイベント!?……って言っても、この先は住宅街だけど?(※ちなみにこの路線は、ここが始発で、住宅街→自宅の最寄り駅が終点)」
思わずたじろぎ、遠目からしばし眺めるも、惰性で列の最後尾につく。
「いや、あの閃きは何だったのか……。私ったら“持ってない”よな~。……それにしても、なんでこんなに混んでるんだ!?」
あらゆることが釈然としないまま、呆然と立ち尽くす。
そして、直感の否定が止まらぬ私は、決断した。
「やっぱり電車にしよう!いくらなんでも、この大行列はないわ!」
と、その時。
少し前方に並んでおられる「ご年配男女混合数人グループ」の元へ、お仲間らしき女性が横から近づいて来られたのが目に入った。
女性は、グループの皆さんに辿り着くや否や、大声でおっしゃった。
「何これ!!何でこんなに並んでるの!?」
そしたら、グループのおひとりがやはり大声で返されたのだ。
「人身事故で電車が止まってるのよ~!」
……なるほどであった。
その後、間もなく来たバスは、ぎゅうぎゅう詰めでとんでもない苦しさだった。
しかも、あれよあれよと後方に詰め込まれため、自宅近くの停留所では降りられず、結局終点まで乗り越す羽目に……。
けれど、私は喜びで一杯だった。
自分のヒラメキが正しかったこと。
そして、グループの皆さんがタイミングよく謎を解き、証明して下さったこと……。
それもこれも、皆さんが声が通るほどお元気だったおかげである。
『どうぞこれからも、末永く健やかであられますよう……。ありがとうございました!』
私は、このバス内のどこかに埋もれておられるであろうグループの皆さんに、ひっそりと感謝の念を送った。
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