なんだかんだと、13年位「終の棲家」を探している。
色んな地域で色んな物件を内見したものの、どうしてもいまいちピンと来ず、もはやどんな地域が自分に合っているのかすら分からなくなっていた。
自然豊かな田舎なのか、便利な都会なのか……。
私は迷走し、疲れ果てていた。

そんなある日、ふと閃いた。
「県内の長閑な地域なら、ちょうどよいのでは?」
早速インターネットで調べると、ある画像に視線が吸い込まれた。

それは、県の南西端にある港町の、細く入り組んだ「背戸道(せとみち)」の風景。
紺碧の海を見下ろす、時が止まったような昔ながらの素朴なその雰囲気に、胸がギュッとなったのである。

急いで物件検索をすると、良さそうな物件が1個ヒット。
「おお!じゃあ、ひとまず不動産屋さん抜きで、町探索がてら外観だけを見に行ってみよう!」
即決した私は、町歩きのためのマップと地域情報を引き続き検索。……そしたら見つけたのだ。「森林リトリートツアー」なるものを!

「なぬっ!これなら町の自然も知ることが出来るし、リフレッシュも出来るぞ!」
一石二鳥が大好物な私は、すぐさま「体験予約サービスサイト」にて申し込み、翌週参加する運びとなった。

さて、その当日午前。
集合場所の駅ロータリーにてガイドさんとご対面したのだが、瞬間、なぜか驚愕し、困惑された。
「えっ!?イナダさんですか?」
「はい!今日はよろしくお願いします!」
「え!本当にイナダさんですか!?」
「は、はい……え?」

繰り返される謎の尋問に、心のシャッターが少しずつ下り始める私。
しかし、間もなく謎は解けた。
どうやらガイドさんは、メールのやりとりで、私を「男性参加者」だと思い込んでおられたようなのだ。

その原因は、男女どちらでも通用しそうな「私の名前(本名)」と「ハンドルネーム」らしいが、それにしても、何度かやりとりしてそれでも尚ということは、よっぽど女子力皆無な文面だったのだろう……。

「あ…あちらに車を停めてありますので……。……いやでも、本当に驚きました……」
誘導しながら、尚も真顔でつぶやき続けるガイドさん。
衝撃はかなりのものだったようで、車に乗り込んでも、しばらく放心の余韻は続いた。

片や、私も私で『え…なんで?なんでそんなに引きずる?』と、つられて心のペースが混乱。
互いに、なんともギクシャク微妙な空気のままツアーはスタートし、目的地の森林に向かったのだった。(ちなみにこの日の参加者は私だけ)

森林の入り口駐車場には、10分ほどで到着した。
ここから小高い山の遊歩道を登るのだ。
ご説明によると、「地元の方々が昔から大切に守って来た森であり、人気の観光スポットでもある」とのこと。私は期待を胸に車を降り、未だショックの気配漂う(←まだかいな…😅)ガイドさんに続いた。

遊歩道は緑にあふれ、非常に気持ちの良い空間であった。
山といっても小高い程度のようで、深すぎず開放的。明るく爽やかだ。
そもそもは人工的につくられた森らしいのだが、歴史が古いためか、原生林のような力強さと神秘性も感じられる。
 

 

 

実は、今回の画像は全て、エピソードから4年後(2022年)の
同時期に撮影したもの
です。当時は、山歩きに没頭するあまり、
写真をちゃんと撮っていなかったので、このエピソードを
書くにあたって、再訪し、撮り直して来ました😅

 


 

しかも、足元には大量の落ち葉。歩くたびに「カサカサ」とした音が楽しく、山頂にはふっかふかの落ち葉絨毯が敷き詰められた開けた空間も!
 

 


 

私は、天然絨毯のあまりの美しさに感動し、思わず「わーーー!すごい!」と喜びの声を上げた。
そしたらガイドさん、「今(4月末)が一番、落ち葉が沢山あって気持ちいいんですよ~!冬に落ちた葉が、ちょうどいい具合にカサカサフカフカになるんです!ここでたまにヨガなんかも行われるんですよ!」とニッコリ笑顔。
……お、おおぅ!?ようやく楽し気な口調ではないか!
そっか~本当にこの場所が好きなんだな~。でもって、ようやく「実は女だった混乱」も収束したかな……?

それはまさに、まさに森林によるリトリート効果だったのかもしれない。
フッと心がほどけたであろう私たちは、そこからはのーんびりのびのび。

訪れる人もまばらで、人の目をそんなに気にすることもないので、落ち葉絨毯の上にデーンと大の字になったり、ガイドさんがご持参下さったドリップバッグコーヒーを、その場で淹れてぼんやり味わったりと、心身を大解放。
ゆったりとした、贅沢なひとときを過ごすことが出来たのだった。

帰りは、別ルートで山を降り、道すがら小さなお社にて心静かにお参り。
そして、観光客で適度に賑わう近くの海辺にも立ち寄って下さったのだった。

私は、半日で山も海も気軽に満喫出来る、このコンパクトな自然環境をとても気に入った。
それは本当に貴重な情報と体験。
その上、忘れかけていた「時間と心」の豊かさまで与えていただけたなんて、なんとありがたい。
ガイドさん、感謝です……!

と言うことで、これにてリトリートツアーは終了。……のはずだったのだが、せっかくなので例の「背戸道」の入り口にあるお店でランチをご一緒することに。
……でもって、何故かここからの方が、二人の距離はググッと近くなる。

きっかけは、食事中。私がツアーの申し込みメールに補足として書いた「将来的に移住も考えている」に対し、暮らしやすさ等をガイドさんの生活目線で親身に教えて下さったことから始まった。
そして話は発展し、お互いの目標を語り合うことに……。

ガイドさんはおっしゃった。
「お金を貯めて、将来ここにリトリートの宿を作りたいんです……」
これまで色々な地に住んだことがある中で、ここが最も気に入っているのだそうだ。
「それ!絶対いいですよ!」
私は間髪入れず大賛同!その素敵な夢を実現させるために、自分に出来る事はないかとぼんやり考えた……。

そんな熱い話を交わしながらランチを終えお店を出ると、ガイドさんはついでだからと、憧れの「背戸道」も少しだけ案内して下さった(歓喜!)。

 

こちらは、背戸道の俯瞰写真(やはり4年後のもの)。
現場の写真は、時間が足りず撮りに行けませんでした…(T_T)残念

 


その後、車で駅へ向かおうとしたら、なんと通りがかった港で、たまたま小さな「市(いち)」が開催されているのを発見。
「よかったら、見てみますか?」と急遽立ち寄って下さったうえ、駅まで戻る際は、スーパーなどの生活要所を通り、軽い町案内まで!
それら全て、追加料金も取らず、快くお付き合い下さったのだ。

『なんという細やかで温かなお心遣いなのか!』
私はひたすら驚き、なんとも言えない感動に胸を深く突かれた……。

こうして親戚のように打ち解けた私たちは、駅ロータリーで車を降りても、更に立ち話をした。
お互い目標に向かって模索中なので、話は尽きなかった。

……一体どのくらいの時間が経ったのだろう。
眩しい夕日を背にしたガイドさんが最後におっしゃった。
「もし、この町に引っ越して来たら教えてくださいね!」
「はい!じゃあ宿の夢、叶えてくださいね!今日は本当にありがとうございました!」
笑顔で手を振り合う二人。そこには、出逢った当初の不協和音はどこにも存在していなかったのだった……。

あれから4年ほど経つが、ガイドさんは着々と夢を実現中であろうか。もう叶えただろうか……。
リトリートの宿、とても楽しみにしている。きっとガイドさんらしい、相手に寄り添うような心配りがなされた素敵な宿となるだろう。
 

 



ここまでご覧くださいましてありがとうございます😌
 

余談もあるので、良かったらそちらもご覧ください(*/ω\*)

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尚、内容同じですが、note、amebaowndでも投稿していますので、宜しければそちらでも…😊

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