私が、ベルリンで行っている音楽活動の1つに
金管アンサンブルがあります。
その中でも特にユニークな取り組みとして、此のグループでは
現代音楽の世界初演を、手がける事が多いのが特徴です。
何しろ、普通に演奏される金管五重奏のレパートリーでは飽き足らず
「現代音楽グループ」として“売り出して”いるのですから・・・
お仕事の回数が、年間を通してそんなに多いとはいえません。
昨年、正式にインターネットサイトを立ち上げましたが、
実際に、グループとしてコンサートを行ったのは、
ほんの数回を数えるだけです。

しかし・・・
その内容が非常に濃いのも事実です。
精神衛生面を考えると、むしろこれでいいのかも知れません・・・
観客も非常にマニアックですし、ハード・コアです。

昨年行われた、ベルリン郊外の”コットブス”という街の秋の音楽祭が
パトロン/主催者として3回の演奏が企画、催されましたが、
今年は更にマニア度が揚がってトランペット独奏、トロンボーン独奏、
ともに無伴奏の曲や、トランペット・デュエット+打楽器、
金管4重奏+打楽器、そして、通常の金管五重奏と普段、全く耳慣れない
曲の数々をお届けします。


「音楽は言葉と同じなんだからね、気持ちを/意味を相手に
 伝えなくてはいけないんだよ」

とは、師匠のありがたいお言葉ですが、その言葉としての機能を託された
様々な記号、作曲家によって生み(書き)落とされた音符を、
話し手である私たち演奏家(者)が、理解する事から始まります。

一見、演奏不可能/理解不能にみえる指示や特殊奏法も、
その彼らの伝えたい、明確な意図をメッセージとして、
観客である聴衆へ演奏/音を通して、伝える/橋渡しする
義務があるのです。

その過程は、外国語の習得/翻訳の作業に似ているのかも知れません・・・
文化や社会情勢によって生まれ、変貌していく言葉/“スラング”
と云っても良いと思います。

もしかしたら、其れは”人間そのもの”の姿なのかも知れません。

トランペット奏者
具志 優