年が明け
長い休暇で海外に行き
その帰り
あの店が気になっていた

空港から
あの店に行く

昼間の店は
カフェになっていた

ニット帽とサングラス
大丈夫だろ
トランクを引き
その店の入口に来た

入口を開けると

いらっしゃいませ

彼女じゃない

おひとりですか?
あのー
ママは?

お知り合いですか?
いや…

満席なんで
カウンターでいいですか?
はい

トランク預かりますよ
あっ…じゃあ…
こちらの席どうぞ

女性客が多い

カウンター越しに
案内された女性が
俺を見ている

ランチいいですか?
かしこまりました
食後のお飲み物は?
カフェオレで
かしこまりました
少しお待ちください

1人の客は
俺だけだ

はぁ…臣くん
何してんだろう…

えっ?

思わずそっちを見てしまう

今頃海外でも
行ってんじゃない
長い休暇毎年あるみたいだし
どこいるんだろ
もうすぐ歌番組あるじゃん
そうだけど
紅白見て以来だよ
かっこよかったなぁー
そうだけど

やばいかなぁ
ファンが近くにいた

お待たせしました

あっ…豚汁

おいしいですよ
ごゆっくりどうぞ

いただきます

この豚汁…

前にここで食べたのと
同じ味

それとアジフライ
ひじきの煮物
玉子焼き
サラダがたくさん

おいしい…

夢中で食べていた
久しぶりの日本食

そんなにかっこいいの?
臣くんて
紅白見てないの?
見てたけど
誰だかよく見てないし
もう☆さん
ありがとうございました
ごちそうさまでした

彼女の声が聞こえてきた
さっき俺の話をしていた
お客さんと話している

前会った時の
赤いドレスとは違い
Tシャツとジーンズ
エプロン姿の彼女が
いた

横を向いて見ていると
目が合った

つい会釈をしてしまった

彼女は少し微笑み
会釈をしてきた

ごちそうさまでした

手を合わせ
頭を下げる

ありがとうございます
カフェオレお持ちします
下げますね

はい

彼女は気づいてない
忘れたのだろうか
そうだよな

はい カフェオレ
お待たせしました
ひろくん

覚えてた?

サングラスしてても
わかった

昼間はカフェなんだ
うん

雰囲気違うし
そうね

ゆっくりしてってね

少し話さない
じゃあちょっと待てる?
うん

彼女がカウンターの奥に
消えた

午後の暖かい日射しが
俺の眠気を誘った