第1話 それぞれの道


アンジーがアメリカに行った後、グランチェスター家にテリィとキャンディが呼び出された。

屋敷にはウィレム王が来ていた。テリィ達を見て頭を下げた。



「はじめまして。ウィレムと申します。オランダで国王をしている者です。今回急にお呼び出しまして申し訳ない。うちの愚息とそちらのお嬢さんの事で話を。」


「はぁ。僕はまだなんにも聞かされておらず教えてください。この度はこちらの娘こそご迷惑をおかけしまして大変申し訳ありません。」


「実は愚息がお嬢さんに好意を持ってまして。先日バッキンガム宮殿で偶然会ったみたいで。SPを撒いて2人きりで会ってたようなんです。幸い他には見られてなかったのですが公になると困るのですよ。ベルギー王国の王女と縁談が進んでましてな。その、お嬢さんに愚息に近づかないで欲しいと言ってくれませんか。」


「何ですって、娘が?キャンディ君は知っていたのか?!」


「私もこの間本人から聞いて。でも娘は王子とは付き合うとかは思ってないんです。この間のバッキンガム宮殿のときも一目見ようとしただけで変装してたのにバレてしまって、と言っていました。娘はあのあとすぐにアメリカへ行きました。今後会うつもりは無いと言っています。だからどうか娘の事は…。」


「アメリカのどこへ?」


「CAになりましたので、テキサスやシカゴなどアメリカ中を回ると思います。」


「そうですか。じゃあ、お嬢さんは愚息に会うつもりは無いとおっしゃってるんですね。」


「はい。アメリカにいるアードレー家を住まいとしているのでへたな動きはできないと思います。」


「わかりました。それだけ聞ければ結構です。お時間とらせましたな。これで失礼しますよ。」


ウィレム王はバッキンガム宮殿に帰っていった。


「キャンディ、どう言うことなんだ?アンジーがオランダ王子と付き合っていたのか?」


「大学時代にアリスも一緒に友達として仲良くしてたみたいなの。お互いに離れてから気持ちに気付いたみたいで。でもアンジーは身分が違うから諦めるって。せっかくレオを忘れられる人が現れると思ったのに、あの子はまた苦しい恋を。こんなことまで私達に似なくても良いのに。」


「そうだったのか。あいつ大丈夫だろうか。立ち直れるだろうか。もしこっちに帰ってきたいと言ったらいつでも受け入れてやろう。」


「そうね。立ち直れるまでそっと見届けることしかできないなんて辛いわ。」


「俺たちの娘だ。大丈夫だ。信用しよう。」


「そうね。」


「にしても…。」


テリィがボソッと呟いた。キャンディと離れていた10年間はまさに辛いなんていうもんじゃなかった。あいつも自分が味わった辛さを…と思うと。胸が痛かった。




──さらに3年後。アンジーは25歳になっていた。仕事は順調でオランダ以外の世界中を回っていた。

アリスは秋に結婚が決まりアードレー家はお祝いムード一色になっていた。


「ママ、アンジー結婚式に来れるって。何とかシフト空けてもらったらしいわ。」


「良かったわね。これで全員揃うわね。」



明るいニュースのコーンウェール家のある新聞の3面にオランダのニュースが載っていた。


オランダ王国のコンスタンティン第2王子とベルギー王国のマチルダ王女婚約。挙式は12月26日。



ベルギーのブリュッセル空港のホテルにアンジーはいた。嫌でも婚約のニュースは目と耳に入ってきた。


「コニー、おめでとう…。」


独り言の様に呟いた彼女の眼は潤んでいた。この3年間なるべく休みを入れないようにがむしゃらに働いた。おかげで仕事ぶりは認められ史上最年少のチーフパーサーに抜擢された。


「笑っておめでとうって言えるようにならなくちゃ。」



10月某日

アリスの結婚式に参加するために久しぶりにシカゴに向かったアンジーはシカゴ・ミッドウェー国際空港に着いた。

ユニフォームを着て颯爽と歩く彼女はCAでも憧れの的だった。

タクシーでアードレー家に出発した後にオランダからSPに囲まれたコニーが空港に着いた。



シカゴの某教会。アリスとリアムはここで挙式をあげることになっている。


「アリス、実はまだ君に言っていないことが…。」


「えっ、リアム何なの?」


「実は俺たちの結婚式にコニーが来るんだ。ダメ元で招待したらOKもらってさ。当日まで内緒にしてくれと言われてたから。アリス、アンジーが来るまでは黙っていてくれ。」


「わかったわ。」


「これがきっかけであの2人に進展あれば良いんだけどな。」


「でも12月にコニーは結婚するのよ。アンジーの誕生日に。アンジー大丈夫かな。ちゃんと最後までいてくれるかな。」



アンジーはアードレー家でドレスに着替え召し使いにヘアメイクをしてもらっていた。

と誰かがノックしてきた。


「どうぞ。」


「アンジー久しぶりだね。元気だったか?」


アンジーの顔がパアッと明るくなった。


「バートおじさま、ご無沙汰してます。」


「元気そうで良かった。もうすぐ君のパパとママとアレクも到着するよ。」


グレアム家、コーンウェール家とアルバートとジョルジュだけの細やかな挙式だったがとても厳かに行われた。

アリスはほとんど泣いていた。アンジーとキャンディとアニーも泣いていた。


アードレー家で披露宴が始まるので教会から車で皆移動した。


大広間にコニーが来ているとは知らずにアンジーは大広間の扉をあけようとしていた。



To be continued