いつもラブラブなふたりだけと時には荒波に揉まれることも…。一番大きな波を越えたその先には…
テリィと再び愛を育むことになったキャンディ。テリィの公演の千秋楽に招待されて一週間ほど休みが取れてキャンディはニューヨーク🗽へ会いに行った
。
駅に着いたらテリィがマスクをして帽子を深くかぶって待っていた。
キャンディは昔“似てもにつかない人”と間違えちゃったから声をかけるのが怖いなぁ“と思いキョロキョロしてると、
「キャンディ」と後ろから声がした。
振り返ると目の前にテリィがいる、キャンディは満面の笑みでテリィを見つめた。
千秋楽公演も無事に終わり、テリィの運転する車で高級レストランへ行った。テリィの行きつけで個室があり誰にも見られること無くゆっくり話ができた。
テリィの様子がいつもと違う?
キャンディは何か違和感を感じていた。食事をしながらたわいない会話をしながら時間が流れていった。
しばらくしたらテリィが急に真剣な顔をして
「キャンディ話があるんだ」
「なぁに?どうしたの、そんな顔して」
「結婚して俺の妻になって一緒にイギリスへ行ってくれないか?」
「えっ…」
「イギリスのRSCに移籍するんだ。3ヶ月後に」
「アメリカではダメなの?」
「RSCに入団するのは昔からの夢だったんだ。アメリカでキャリアを積んでいつかは…って思ってたんだ。イギリスに行ったらもうアメリカには帰ってこない。だからキャンディ一緒に行こう。片時も離れたく無いんだ。ずっとそばにいて欲しい。」
そう言ってケースに入った指輪を差し出した。
「テリィ…あなたはいつもそう。私の事なんてお構い無しで決めて事後報告でしかしてくれない。昔の私ならすぐにYESと言えたけど今は状況が違うわ。シカゴからきてくれたマーチン先生のハッピー診療所の看護婦がいなくなるし、ポニー先生、レイン先生も私がいないとふたりだけでは十分な子供たちの世話ができないの。」
「オーディションに合格するかわからなかったから君に言えなかった。昔学院を辞めてアメリカに行ったときは俺はまだ子供だったから君を連れて行けなかった。でも後悔してた。初めての主役がとれてニューヨークへ招待したときも君を返したくなかった、手放したくなかった。あんな事故さえなければ、俺は君にとっくにプロポーズしていたんだ。」
「今すぐには返事はできないわ。少し待ってちょうだい。」
「わかった…。」
テリィはすぐにYESと言ってくれると思っていたのでショックだった。
翌日、テリィに見送られてニューヨークを後に列車に乗ったキャンディは辛かった。
せっかくまたこうして付き合う事ができてプロポーズまでしてくれたのにスムーズに受け入れれない自分が腹立たしかった。
10年という月日はそう簡単に一緒になれない何かが漂っていた。
ポニーの家に戻ったキャンディはポニー先生、レイン先生にテリィにプロポーズされたことは言えなかった。
2週間ほど考えたキャンディは断腸の思いでテリィにイギリスへ行かない、すなわち結婚を断る旨を手紙に書いて送った。
自分で決めたことなのにキャンディは毎日、身を引き裂かれるような思いで過ごしていた。
納得のできないテリィはアルバートさんに相談する。
仕事の合間を縫ってニューヨークへ行ったアルバートさんは会員制の超高級barにテリィを呼び寄せた。
「やぁ、テリィ久しぶりだね。」
テリィは憔悴しきっていた。
「アルバートさん、イギリスのRSCに行くことになったのでキャンディにプロポーズしたんですけど、見事に断られましたよ。
俺より今の生活が大事みたいです。」
「何だって‼️どうして?」
「キャンディがいなくなると、ポニーの家や診療所が大変になるからと。だからイギリスへは1人で行くことにしました。」
「テリィ、わかった。教えてくれてありがとう。キャンディは何も言わなかったから…。僕に任せて。必ず一緒にイギリスへ行かせるよ。」
「アルバートさん、お願いしたいことがあって…」
その後ふたりは朝まで飲み明かした。
空回りに元気にしているキャンディをポニー先生、レイン先生は見逃さなかった。
キャンディが診療所に行っている間に、アルバートさんがポニーの家に来て、3人で話し合いをしていた。
その夜夕食を終えたキャンディは2人に呼ばれた。
「キャンディ、何か隠してませんか?」
「な、何も隠してません。」
「テリュースさんにプロポーズされたことも隠してませんか?」
「ポニー先生、どうしてそれを?でももう断りました。終わった事です。」
「嘘おっしゃい、ならなぜそんなに毎日辛く悲しい表情をしているのですか‼️私たちを騙せると思ったら大間違いですよ。」
レイン先生が言った。
「キャンディ、私たちはねテリュースさんと再び始まったときからキャンディから嬉しい報告を待ってましたよ。その報告が来たらあなたが何一つ後ろめたい思いをせずにここから旅立てる様に実は前からいろいろ動いていてもう手配済みです。大おじさまが全て丸く収めてくれましたよ。だから心配しないでテリュースさんの所へ行きなさい。
ポニーの家の子供たちもキャンディの幸せを喜んでいるのですよ。」
「ポニー先生、レイン先生…」
キャンディは涙が溢れて止まらなかった。
「黙っててごめんなさい。本当はテリィのプロポーズ受けたかったけど、そしたらここを見放すことになるんじゃないかと思って、そんなことできないわって思ったから。」
ポニー先生は、
「キャンディ、あなたがいなくても代わりにここを手伝ってくれる人はいくらでもいます。診療所の看護婦も代わりにいます。もし代わりにいるならあなたは安心してその方たちに任せられるでしょう、でもテリュースさんの妻がもし他に代わりにいるならあなたはその方に安心して任せられますか?」
キャンディは雷を打たれたような衝撃にかられた。
「できないでしょう、だからイギリスへ行きなさい。そしてちゃんとテリュースさんに手紙ではなく直接会ってプロポーズの返事をしなさい。大おじさまからニューヨーク行きの切符を預かっています。明日行ってきなさい。」
「はい。わかりました。ご心配おかけしてすみません。明日行ってきます。」
キャンディは身体を震わせながら深々と頭を下げた。
出発した翌日の20時にニューヨークへ到着したキャンディはテリィが迎えに来てくれるまで指定された喫茶店で待っていた。
公演を終えたテリィが喫茶店に来た。
「遅れてごめん、お腹空いたね。さぁ行こう。」
いつものレストランで食事をしていたがキャンディはなかなかプロポーズの返事を言い出せなかった。
「テリィ、あの…」
「俺のアパートでゆっくり話をしよう。」
テリィのアパートへ行きふたりはテーブルで向かい合わせに座りテリィの入れてくれたお茶を飲みながらキャンディは返事を言った。
「テリィ、1度はお断りしたけどもし許されるなら撤回したい。私を一緒にイギリスへ連れて行ってください。本当は一緒に行きたい。もう離れたく無い。誰にもあなたを渡したくない、取られたくない」
キャンディは涙をぽろぽろ流しながらも自分の今の気持ちを正直に言った。
「キャンディ、俺の妻になってくれるんだね?」
「はい。テリィのお嫁さんになります。」
テリィはポケットからケースを取り出し開けて指輪を取ってキャンディの左手の薬指にはめた。
ふたりは立ち上がってしばらく抱き合った。
キャンディは急にハッとなり、
「そういえば、泊まるホテル予約するの忘れてたわ。アルバートさん切符しか用意してなかったからホテル予約しなきゃって思ってたのに。」
「キャンディ、アルバートさんの許可はもらってる。今夜は帰さない、どこにも行かせない、離さない、いいな。」
キャンディは顔が熱くて赤くなっているのが
自分でもわかった。
恥ずかしいながらも小さく頷いた。
テリィはキャンディを抱き抱え寝室へ入っていった。
THE END