スザナの葬儀が終わりテリィはスザナの部屋に自分のわずかな荷物を取りに来ていた。すると枕の下から手紙らしきものを見つけてそれをとりあげてみると自分への手紙だった。


テリュースへ

あなたがこの手紙を読んでるということは私はもうこの世にはいないのね。私をいつも世話してそばにいてくれてありがとう。そしてごめんなさい。私のせいでキャンディと別れることになってどれだけ辛かったか計り知れないわね。あなたが私に微笑みかけてくれてもその瞳の奥はいつもどこを見ていたか誰を考えていたかわかっていたわ。それでも私はあなたのそばにいたかった。愛してくれなくても良い、名ばかりの婚約者で良い、ただ一緒にいてくれるだけで幸せでした。あなたは私を選んだといってくれたけどそれはキャンディが私のために自分を犠牲にして去っていってしまったおかげ。キャンディは自分の気持ちより苦しむあなたを見てられなかったのね。あなたもキャンディを苦しめたくないからキャンディを追いかけなかった。そんなあなた達は本当に愛し合っているのだと思い合っているのだと痛感させられたわ。だからもうすぐ私が死ぬとわかった時にどうしても伝えたい事があって…。それはテリュース今度こそキャンディと幸せになって欲しいの。今さら私がこんなこと言うのおかしいかもしれないけど…。できるだけ早く絶対連絡してね。キャンディも今もあなたを愛しているに決まってる。お願いね、きっとよ。


手紙はそこで終わっていた。達筆なはずのスザナの文字が震えていた。やっとの思いで書いていた。おそらくその直後から昏睡状態になったのだ。


テリィはしゃがみこみ涙を流した。「ありがとうなんていってもらう立場じゃないのに、君は…」



スザナが亡くなりもうすぐ一年という時に母のエレノア=ベーカーから手紙がきた。封を開けると

“テリィ元気にしてる?最近はどう?私は今度エリザベートを再公演することになったからあなたに負けないように頑張るわ。そうそうキャンディのアドレス書いておくわ。実は私たち文通してるのよ。とある場所でお茶も御一緒したことあるの。どこかではキャンディに聞いてみて。じゃあね”母より


エレノアはテリィに連絡をして欲しくてアドレスを教えたくてたまらなく手紙を送った。


「今さら手紙を出して連絡してどう思うのだろう。もしかしたらどこかの奴と幸せに暮らしているかも知れないのに…」そう考えるとなかなか手紙を出せなかった。もし返事が無かったら、今さら迷惑なのよ、二度と送らないでという返事がきたらと思うとペンが進まなかった。


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半年たちやっと決心した。ダメならダメで諦めがつくよな、いちかバチで出してみるか。そう思いやっと手紙を出した。


キャンディ変わりはないか?

…あれから一年たった。

一年たったらきみに連絡しようと心に決めていたが、迷いながら、さらに半年が過ぎてしまった。

思い切って投函する。

一ぼくは何も変わっていない

この手紙が届くかどうかわからないが、どうしてもそれだけは伝えておきたかった。

                 T・G


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手紙を投函してから何週間か経ったが返事の手紙は来ずテリィは手紙の返事を諦めていた。ある日次の舞台の稽古がいつもより早く終わり帰宅して、まぁ無いだろうと思いポストをのぞくと手紙が入っていて差出人の名前が書いていた。キャンディス=ホワイト=アードレー。テリィの顔がパァーっと明るくなった。

「名前がアードレーのままだ!!」

テリィは弾む気持ちで封を開けキャンディからの手紙を読んだ。


テリィお手紙ありがとう。

返事ですが私も何も変わっていないわ。

あなたを忘れようとしたけど無理だったわ。

それだけは伝えておきます。

               キャンディ


テリィはいても経ってもいられず気付くと汽車に乗っていてポニーの家に向かっていた。


そしてポニーの丘で2人は10年ぶりに再会。急に来てキャンディはびっくりしたがこれまでの思いを爆発させているかのようにテリィはキャンディを抱き締めてしばらく離さなかった。




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それから2人はすぐに結婚してイギリスのストラトフォード=アポン=エイボンで幸せに暮らしていてもうすぐ第一子が生まれる。


         完