ぴんぽーーん。


我が家のチャイムが鳴る。


『はーい』


返事をして、ドアを開けると、


『やっほー!』


そこには、いつにも増してにこにこ笑顔な彼の姿。


『いらっしゃい』


そう言って彼を家に入れると、


『ありがとー!


お!いた!』


彼はすぐに目的の存在を見つける。


そう、今日の彼の目的は、私と会うことではなく。


『うひゃー!ちっちぇー!かわいいー!!』


最近我が家にやってきた、仔犬に会うことだった。


動物好きな彼。


一昨日、仔犬を飼い始めたんだ、という話をしたら、どんな子!?会いたい!ってテンション上がっちゃって。


こうして、ほんとに会いにきたってわけ。


彼の分の飲み物をテーブルに置きながら、


『遊んでくれるのは嬉しいけど、まだちっちゃくてすぐ疲れちゃうから、ほどほどにね!』


と言うと、


『わかったー!』


と満面の笑みで返事をする。


…うん、動物と一緒にいるときの顔好きだから、今かなり幸せ。


そんなことを思いながら、やり残していた家事を済ます。  






ほぼほぼやることが終わって、あれ、そういえば静かだな、と気付き、彼のいるはずのリビングを覗くと、


『…ふふ』


案の定疲れてしまった一匹と、それにつられたのだろうか、彼が幸せそうに仲良く眠っていた。




昨日、髪を切った。


今までの髪型から、結構大幅に変えてみた。


とりあえず、髪を切った後に友人とご飯を食べにいったときは、好評だったんだけど…


…彼は、なんて言ってくれるかな。


そう思いながら、待ち合わせをしているカフェに入る。


彼は先に席についていて、私を見つけると、ふにゃ、と笑い、こっちこっちと手招きする。


『おはよう』


『おはよ。今日のランチはこれらしいよー』


『へぇー』


…。


あれ。


メニューを決め、注文を終えて、一息ついて。


……。


…あれ?


何も、触れてくれない…?


え、気付いてない?結構切ったんだけど…!笑


内心わたわたしているうちに、料理が運ばれてきてしまった。


なんてことない会話を続ける私たち。


だけど、心の中ではちょっともやもや。


…男の人にとっては髪型とか、そんなに気にならないのかな。


そう思って、まぁいっか!と割りきったとき。







『…あ、言い忘れてた。  


髪型ずいぶん変わったね。


似合ってる。かわえーね』







そう言って、優しく笑いかけてくる、彼。


もう、さっきまでのもやもやなんてどっか行って。


ただただ、嬉しさだけがそこにあった。


彼が参加している草野球の、観戦に来てみた。

なんだろう、みんなきゃっきゃして楽しそう。笑

私はあまり野球のことはわからないけど、好きなことを全力でやってる姿は、とっても素敵。




試合が終わり、彼が私の元へとやってくる。

『おつかれさまー』

『いやー負けた!4番さんが全然ストライク入れてくれないんだもん!』

草野球チームの中で一番仲のいい、十数年来の友人『4番さん』の文句を言う彼。笑

『すっごい楽しそうだったねー』

『んー?うん、まぁ、やっぱね、好きだわ笑

あ、そうだ、よかったら、ちょっとやってく?』

そんな彼の提案で、気付けば私の手にはグローブとボール。

『私、ほとんどやったことないんだけど…』

『だいじょーぶ。力入れすぎずに投げてみ?』

言われて、ボールを投げてみる…が。

『…ああ!!』

変に力が入ってしまったのか、全然彼のいる方向とは違うところに飛んでいくボール。

笑いながらボールを取りに行く、彼。

元の位置へと戻ってきた彼は、私が取りやすいように、緩くボールを投げてくれる。

だけどそれを、私はグローブの端に当ててしまい、ボールは転がっていって。

しばらくそんな、キャッチボールとも言い難いものを続けていた私たち。

『……、ねぇ』

『んー?』

『こんなキャッチボール、楽しくないんじゃない…?私、変なところに投げちゃうし、全然キャッチできないし…』

あまりに彼に申し訳なくなっちゃって、そう聞くと。

『いいよ。俺、あなたのボール、どこに飛んでいったって取りに行くから』

そう言って笑った後、ほら、投げなさいよ、と催促するので、ちゃんと彼に届くように願ってボールを投げる。

高く上がったボールを追いかける彼。

ボールから視線を外さないまま、聞こえないくらいの小さな声で、彼はぽつりと呟いた。









『っていうかね、俺、あなたといれればなんだって楽しいんですよ』