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「ヴェノム」

 “VENOM”(2018/アメリカ/ソニー・ピクチャーズ)

 
 監督:ルーベン・フライシャー
 原案:ジェフ・ピンクナー スコット・ローゼンバーグ
 脚本:ジェフ・ピンクナー スコット・ローゼンバーグ
     ケリー・マーセル
 
 トム・ハーディ ミシェル・ウィリアムズ リズ・アーメッド
 スコット・ヘイズ リード・スコット
 
 おすすめ度…★★★★☆ 満足度…★★★★☆
 
 
何度も予告編を観てきてだんだん「これは観なくては」という思いが強まり、タイムテーブルがちょうどよかったこともあって公開初日の夜の回に駆け込み。
 
いやー面白かった。
当初想像していたのとはだいぶ違っていたけれど…「アベンジャーズ」シリーズとのクロスオーバーとか「スパイダーマン」との競演とか…それはそれで割り切っていいかと思えたからよし。
 
もっともアメコミで構築された世界観についてはまったくと言っていいほど知識がないから、これまでも「アベンジャーズ」ありきで各作品と接してきたので、観おわってからこれはこれで別物として楽しもうとようやく腑に落ちた部分はあるけれど。
 
さて作品の方は、最近のマーベル作品には珍しく前半はやや単調でテンポが悪い。
宇宙空間からスタートするのでワクワク感はあったものの、その後の展開では「なんじゃこれ?エイリアン?プレデター?」という感じで乗り遅れそうになる。
 
さらに主人公であるエディ・ブロックが事件に巻き込まれるまでがいかんせんメリハリがないというか、ほぼ想定通りの展開が続くので「これでマーベル作品?」と不安は増す。
 
ところがヴェノムがエディに寄生してからは一気にスリリングな映像が続く。
特に映画ファンを意識したと思われるサンフランシスコの街でのカーチェイスは、夜と昼の違いこそあれスティーヴ・マックィーンの傑作「ブリッド」を思い起こさせる疾走感で圧巻。
 
一方で事前のプロモーションでは必要以上に「凶悪」「残虐」を誇張したヴェノムのキャラクターはビジュアルがすべてという感じで、日本映画の「寄生獣」のようなグロさやエグさはなく、むしろコミカルかつ爽快感すら覚えるかもしれない。
 
そもそもハリウッドではこうした残虐な映像は控え気味になっているのが現状で、その流れは日本映画にも影響してきている気がする。
実際、エグイ映像でお馴染みの佐藤信介監督の作品も「GANTZ」の頃の無慈悲な映像から最近ではかなり抑制のきいたものになってきている。
 
一方でアメリカのテレビドラマの世界では「ウォーキングデッド」シリーズのような相当エグイ映像作品があるものの、年齢制限などが細かく設定されていて視聴レベルの規制が可能であり、逆に日本ではそのあたりが甘くなっているので、特に地上波でオンエアされる作品はかなり大人しくなっている印象。
 
今回の「ヴェノム」のレビューなどを読んでいると想像していた残虐性が見られないことに対して不満を発する声が多く見られる。
子供の頃からアニメやゲームで当たり前のように殺し合いや戦争などを二次元の映像で見せられている弊害だろうが、自分はこの「ヴェノム」がそういう意味での見せ場がほぼ皆無なのはよかったと思う。
 
一連の人気SFアニメの設定がそもそも戦争だったりするのに、それを何の疑問を持たずに楽しんでしまうのは個人的にはずっと疑問に思っていた。
まあ自分がそういう作品やゲームにはまらない下地もそんなところにあるのかもしれないけれど。
 
前述の「アベンジャーズ」シリーズへのリンクを期待したのはエンドロール後のおまけ映像なのだけれど、ここではあっさり裏切られ「アントマン&ワスプ」のラストでも描かれた登場人物が砂となって消えていくシーンどころか、そこそこ長尺のCGアニメの短編が挿入されるのみ。
 
あとで知ったことだけれど「ヴェノム」に関しては「スパイダーマン」と世界観を共有するだけで、「アベンジャーズ」シリーズのそれとはリンクしていかないとのことでそれはそれで納得。
 
主人公のエディを演じるのはトム・ハーディ。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」での二代目マックス役や「ダンケルク」でも観ているはずだけれどあまり印象に残っていない。
 
エディの恋人役のミシェル・ウィリアムズは「マリリン 7日間の恋」でモンローを演じた人という程度の認識で、ヒロインとしての華やかさはなくクライマックスにかけてミニスカートで奮闘する姿はちょっと無理があるのかな。
 
敵役のリズ・アーメッドはパキスタン系イギリス人。
悪役としては小粒で魅力に乏しいものの、またしてもアジア系のハリウッド進出ということで、これからもこうした傾向は続いていくのだろうか。
 
いずれにしても次回作を期待させるダークヒーローであることは間違いなさそう。
 
 
 ユナイテッドシネマ前橋 スクリーン7