「コーヒーが冷めないうちに」 | MCNP-media cross network premium/RENSA

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「コーヒーが冷めないうちに」(東宝)

 

 監督:塚原あゆ子

 原作:川口敏和

 脚本:奥寺佐渡子

 

 有村架純 伊藤健太郎 波瑠 林遣都 深水元基 松本若菜

 薬師丸ひろ子 吉田洋 松重豊 石田ゆり子 

 
 おすすめ度…★★★☆☆ 満足度…★★★☆☆
 
 
 
残念ながら4回どころか一度も泣くほどの感動は味わえませんでしたが、有村架純のふわっとした存在感もあってほっこりした気持ちで劇場を後にできます。
 
まあ予告編で大体わかっちゃうタイプの作品ですが、主人公の数さんを巡る謎解きが最後に配されていてちょっとしたミステリ感覚で楽しむのがよさそうです。
 
その席に座ってコーヒーを飲んだだけで自分が望む過去に戻れる不思議な喫茶店が舞台のファンタジー。
ただし過去に戻っても未来は変えられないというのがミソ。
そしてコーヒーが冷め切る前に飲み干さないと自分は過去に取り残されてしまい、今を生きている自分は歳も取らずにそのまま席に座り続けることになる。
 
石田ゆり子演じる謎の女性は、その過去に戻ったまま取り残された存在で、コーヒーを片手にひたすら読書を続ける。
その一方でコーヒーを飲み続けるがゆえに時々トイレには立つ。
店の常連客達はその一瞬の隙を狙って席に座り過去に戻る体験をする。
 
このトイレには立つという設定と他人が過去に戻っている間はトイレから出てこないというタイミングの妙があまりにきっちりしすぎているのはちょっと興ざめする。
 
あるとき、彼女をトイレに立たせるため、コーヒーのおかわりをどんどん勧めて席を空けさせたりするのはちょっと笑う。
 
自分はもともとコーヒー好きだったけれど、胃を悪くしてから自然に飲まなくなったこともあって、最近はコーヒーを少しでも飲むと利尿作用ですぐにトイレに行きたくなるので、あのシーンは少しむず痒さを覚えてしまった。
 
作品の中でそれぞれが過去に戻るエピソードもそれほど深いものではないので、涙腺を刺激するには少し弱い気はするし、オムニバス風にするよりも後半の数のエピソードにもっと時間を割いてもよかったかなと思う。
 
監督はTBSを中心にドラマで活躍する塚原あゆ子。
直近の石原さとみ主演「アンナチュラル」はなかなか面白かったし、これまでも比較的ミステリ系の作品を多く手掛けているので、今回の咲品も手堅くまとめている感じはある。
 
ただしテレビ出身の監督の常でどうしてもテレビドラマ的な演出に寄りすぎて映画的な盛り上がりに欠くきらいは否めない。
 
主演の有村架純はむしろバイプレイヤー的な立ち位置で存在感を発揮するタイプだけに、今回のような少し引いた感じのヒロイン像では安定感がある。
一方でこの作品では表情だけで感情を表現するシーンが多くやや苦慮していた様子も垣間見えた気はする。
 
これまでも死者との再会がテーマになった作品は「ツナグ」や「黄泉がえり」古くは大林監督の「あした」など多く作られてきたけれど、過去が現在にやってくるのではなく、現在から過去にアプローチするというタイプの再会がテーマの作品はちょっと珍しいかもしれない。
 
連ドラならシリーズ化しても面白そうだけれど、一本の作品として完結させるにはもう少し深いエピソードが必要だった。
 
個人的に面白かったのは薬師丸ひろ子と石田ゆり子の対比。
実際の二人の年齢差は5つあるが、結婚離婚歴のある薬師丸に対して未婚のままの石田、アップになったときの年齢相応の老いは確実に薬師丸なのだが、一方の石田はいつまでの少女のような存在感を持ち続けているのは見事。
 
この先彼女がどういうスタンスで女優として輝きを放っていくのか興味は尽きない。
 
 
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