「羊と鋼の森」 | MCNP-media cross network premium/RENSA

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「羊と鋼の森」(2018/東宝)

 

 監督:橋本光二郎

 原作:宮下奈都

 脚本:金子ありさ

 

 山崎賢人 鈴木亮平 上白石萌音 上白石萌歌 堀内敬子 城田優

 仲里依紗 森永悠希 佐野勇斗 光石研 吉行和子 三浦友和

 
 おすすめ度…★★☆☆☆ 満足度…★★☆☆☆
 
 
もともと原作は未読だし、予告編を観た限りでは山崎賢人の演技は今回も期待できそうにないし、そこそこ上映時間も長いから寝落ちしそうだし、上映期間にタイミングが合ったらでいいかな。
 
酷暑が続く休日の午後、少しでも涼んでから帰りたいという思いもあってシネコンへ、タイムテーブルに間に合ったら観ようか…間に合ったらしい。
 
興味は大方の映画ファンが注目の上白石姉妹の共演を観ておきたいの一択。
 
熱帯夜続きで寝不足の疲労も溜まっていて心配だったけど、不思議と睡魔に襲われることなく2時間半弱スクリーンと対峙できた。
 
だから始末が悪い。
何だろう、この無味乾燥な感じは。
確かに全編に流れるピアノの旋律も心地いいし、大自然の映像も美しく、ゆったりと進むストーリーも分かりやすい。
なのに、何も胸に響かない…いい台詞はたくさんあるのに、どの言葉もほぼほぼメロディと溶け込んで全身に染み渡らない。
 
恐ろしいくらいにすべてが浅い。
初めから終わりまで上っ面をなぞった様な感じで、感動という言葉まで到達しない。
 
ひとつは山崎賢人の相変わらずの大根ぶりというか、彼の演技者としての資質の問題なのだろうが、毎度のことながら台詞と感情がまったくシンクロしていないし…無感情の主人公を演じた「斉木楠雄のΨ難」が直近のベストアクト…どのシーンを切り取っても感情移入できないのは辛い。
 
そしてこの作品の最大の欠陥は、山で生まれ森で育ったという主人公の背景が全く活かされていないこと。
 
オープニングの主人公直樹が高校時代に板鳥の調律の音色の背景に森を見るというシーン。
あまりにも唐突に森が見える映像が挿入されるのでその段階で観る側が置いてけぼりを食らう。
 
それと悪い人が一人も出てこないのはいいとして、どうも三浦友和の板鳥以外の配役が嵌っていないというか、鈴木亮平演じる先輩調律師に関しては大河ドラマ「西郷どん」のイメージもあるかもしれないが、どうみても繊細な調律師というのとはずれている気がして仕方なかった。
 
もちろん原作ではどう描かれているかはわからないけれど、この映画を観る限りそのあたりのミスマッチも最後まで気になった。
 
いずれにしても最後まで主人公の葛藤や苦悩が映像と音楽を通しても伝わらず、最後に彼が自分なりの目標を見つけていきなり覚醒するのも何か白けてしまった。
 
上白石姉妹はそれぞれの実際の性格も勝手に想像しながら楽しむことができたのは救いか。
 
監督の橋本光二郎は「orange-オレンジ-」に続いての山崎賢人とのタッグだとあとから知り、なるほどそういうことかと妙に納得したが、きっといろんな意味で優しい監督なんだろうと思う。
 
タイプとしては「白夜行」や「神様のカルテ」の深川栄洋監督に近いのかもしれないけれど、深川監督には優しさの奥に妥協しない彼なりの拘りを見ることができた。
 
他のキャストで意外だったのは主人公の弟を演じた佐野勇斗。
この夏も話題作が続々待機中だが、思っていたイメージと違う演技を見せてくれたので少し注目してみようと思う。
 
ただ原作は興味を抱いたので機会があれば読んでみたい。
 
 
 ユナイテッドシネマ前橋 スクリーン6