「万引き家族」 | MCNP-media cross network premium/RENSA

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「万引き家族」(2018/ギャガ)

 

 監督:是枝裕和

 脚本:是枝裕和

 

 リリー・フランキー 安藤サクラ 松岡茉優 池松荘亮 城桧吏

 佐々木みゆ 緒方直人 森口瑤子 山田裕貴 片山萌美

 柄本明 高良健吾 池脇千鶴 樹木希林

 

 おすすめ度…★★★☆☆ 満足度…★★★☆☆ 

 
 
多分、カンヌのパルム・ドール受賞の経緯がなかったらまた違った感じでスクリーンと向き合えたかもしれない。
 
そもそもこれまで是枝裕和という映像作家が手掛けてきた世界観を前提にして観るのと、単にカンヌ受賞作品だからという贔屓目で観るのとでは、全然別の視点になっていくのだろうと思う。
 
すでにカンヌ受賞ということで「万引き家族」を称賛する各メディアの偏重報道に対する様々な反応があり、万引きという犯罪行為を正当化するような姿勢を非難する声も上がっている。
 
是枝監督の意図するものはその万引きという犯罪行為そのものよりも、年金受給者であった親族の死を隠して年金をもらい続けてきた事件の方だということだけれど、あまりにも万引き描写のエンターテインメント性に重きを置いてしまったのでおかしな作品になってしまった。
 
今回の作品もこれまでも疑似家族や親子の問題をテーマに多くの作品を送り出してきた是枝監督ならではの着眼点であり、その意味では一連の作品群の延長線上にこの「万引き家族」があるのは間違いない。
 
それがパルムドールの冠を頂いたことでまったく独立した作品として独り歩きを始めてしまったというところだろうか。
 
個人的にはすべての事実が明らかになってからの疑似家族の人たちそれぞれの思いが吐露される後半で救われたというか、正直前半の日本の格差社会を象徴する貧困・幼児虐待といった暗部を抉る展開は息苦しくて不快感すら感じた。
 
これは観客それぞれの日々の生活によっても感じ方も違うだろうし、おそらく最終的に感動作とストレートに受け取れるのは、それだけその人が充実した毎日を送れている証拠でもあるのかもしれない。
 
そうか「万引き家族」はある種のリトマス試験紙でもあるのか…。
まあそんな単純な話ではないのだけれど、これほど観る人によって感じ方が変わっていく作品も久しぶりかもしれない。
 
リリー・フランキーはいつもの感じ…あの「凶悪」の演技を見てしまうとどれもこれも大差ない…だし、安藤サクラが上手いのはいまさら絶賛するものでもない。
また松岡茉優が別の意味でファンが増えそうな一面を見せるものの、彼女の演技力は昔から安定している。
 
驚愕したのは樹木希林のある意味での怪演。
メイクによるものだとしても最初はまったく別人に見えてしまったあの存在感はすごい。
 
子役の二人を絶賛する声が多数も、「誰も知らない」の柳楽優弥のようにいずれ俳優として大成するかはまだ未知数。
 
後半に出てくる池脇千鶴と高良健吾の佇まいになぜかホッとしてしまった。
 
それにしても最近のハリウッドが反トランプ丸出しのメジャー作品を多数輩出しているのに対して、日本の映画界は相変わらず安穏としているなと思っていたけれど、こうした反権力のスタンスを内包した作品が話題になるのはいいことだと思う。
 
いずれにしてもカンヌの称賛の声がこの映画のどこに琴線を感じたのかなんとなくわかる気がするだけに、日本での受け止め方もただカンヌ万歳だけに終始して本質をごまかしてしまうのはいただけない。
 
ボクはこの映画、嫌いです。
 
 ユナイテッドシネマ前橋 スクリーン2