うえまさのニッキ


良い温泉を知るには、温泉を良く知っている人に聞くのが一番良い。自分の中では温泉TVチャンピオンの郡司勇氏を勝手に師匠と崇めている。然し郡司氏のお勧めは温泉マニアにとっては垂涎ものだが、家族で行くとなるとマニアックなところ故、若干憚れる所もある。昔から有名でオーソドックで且つ教科書的な所(最低ここを押さえたらいいよ的な所)のバイブルとしては、温泉教授として有名な松田忠徳氏の「全国温泉ガイド」を用いている。その中で見つけた「木津温泉」は、泉質、雰囲気等惹かれるところがあって、いつか行きたいと思っていた。今回、長女が京都に行きたいと言ったのきっかけに、これ幸いと訪れる事にした。然し、同じ京都と言っても、京都市からはかなり離れており殆ど別の処である。木津温泉は結構僻地にあるので、行く気で行かないといけない。岡山からだと手前に城崎温泉があるので、そこを通り過ぎていくには後ろ髪が引かれる思いもあるし。





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憧れの温泉に行くとどうしても期待してしまう。事前に妄想してしまって、それが過度の期待になってしまうと、得てしてがっかりする事になる。木津温泉「ゑびすや」にある家族湯を温泉教授が絶賛していたので、宿はここに決め、この風呂に入る為に泊ったようなものだった。





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宿に着くと、受付の横に「温泉教授松田氏絶賛!ゑびすやの家族湯」というポスターが貼ってあった。早速、家族湯の予約を聞く。すると不思議な事を言い始めた。「予約は取ってあるんですが、行ってみて空いていたら入っていただいて結構です。明日の朝8時くらいなら十分空いてると思います。」要はもう予約でいっぱいと言う事なのか?でも空いてたから入っていいとは?もし入っている最中に予約の人が来たらどうなる?





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家族湯に向かうと、その前の所で客が従業員に何か文句を言っているようだった。「空くのを待ついうても、一体いつまで待てばいいのか?私等さっきからずーっと待っとんで。」初老のご夫婦は怒り心頭気味。従業員は只管平身低頭。やっぱりなぁ~、こうなる事は分かっていたような気がした。これでは家族湯に入るのは無理かもしれない。暗澹たる気持ちになって、大浴場へと向かった。



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大浴場は「椿の湯」と「行基の湯」と二つあって男女入れ替え制になっている。この時間の男風呂は椿の湯であった。先客が一人いたが程なくすると先に上がって、広い浴槽を一人占めする事になった。お湯は内湯と露天では違うのだろうか?内湯では温泉をあまり感じなかった。露天は内湯に比べれば湯温は低く41℃位と思った。まだ露天では若干温泉らしさを感じたが、この程度のお湯で遥々ここまで来たのかと思うと、急に虚しくなってしまった。おまけに奥から2番目のカランを使用したが、壊れているのかお湯がチョロチョロとしか出ない。他の場所が空いているんだから移ればいいものの、今の自分にはこの状況が相応しく思え、勢いのないお湯で身体を流した。


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念の為、もう一度家族湯へ行ってみた。するとどうだろう、今度は家族湯の一つである「静の湯」が空いていた。この湯は…、思わず絶句した。全くさっきのお湯と違う。肌当たりが柔らかく、非常に湯あたりの良いお湯である。また温度も40度くらいで熱過ぎず、若干アルカリの滑りも感じられる。掛け流しの為かお湯も新鮮で非常に気持ちが良い。思わず「このお風呂持って帰りたい!」と思ったほどだ。


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先程までの沈んだ気持ちが一遍に晴れ晴れとした気分に変わった。このお湯なんだ、やっぱり。本物は違う。思わず30分程も浸かってしまった。あまり長湯をすると他のお客さんに迷惑になるので、もっと入っていたかったがここは我慢して上がる事にした。




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このゑびすやには「清張の部屋」なる物がある。松本清張がここへ滞在して小説を書いた書斎が当時のまま残してあるのだ。2か月ほど滞在して「Dの複合」とい小説を書いたらしい。小説家は羨ましい。こんな静かな所で、良い温泉に毎日浸かって仕事が出来るのだから。役徳と言うものかもしれないが、自由業と言うのに今でも憧れている。でも自分には特別な才能が無いので土台無理な話ではあるが。




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料理に関して言えば、甘い物をおやつに食べすぎてしまったのであまり食が進まなかった。然し、地産地消の一つ、魚の煮付けは美味かった。何の魚か忘れてしまったが。ただ量が多いと思う。食いしん坊には良いかもしれないが、多すぎて残してしまったのでその方が気になって仕方がなかった。残さず食べようと頑張ってしまうと、最後は拷問になってしまうので。





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家族湯は24時間と言う事だったので深夜にもう一度家族湯を訪れた。然し、もう一つの家族湯「ごんすけの湯」は入浴中になっていた。「静の湯」の方は空いていたので、再びこちらに入った。やっぱり素晴らしい。何度でも入りたい。おかげで気持ち良い眠りに着くここが出来た。




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次の日の朝、朝食後「ごんすけの湯」に行ってみた。すると今度は空いていた!ここのお湯ももう一つの「静の湯」と同じお湯なので、良いのは言うまでもない。天井を見上げると見事なステンドガラスがあった。お湯といい、雰囲気といい、ここの風呂は別世界であった。暫し時の流れを忘れるとはまさにこの事、良い癒しの一時になった。




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今回、ゑびすやの家族湯に入れた事は幸運だった。これほど素晴らしい風呂に、ここに泊ったからと言って皆が入れる訳でないのが残念だ。次回来た時にはもしかして入れないかもしれない。出来れば、泊った人が希望すれば必ずどちらかの家族湯が利用できるシステムを構築してくれたらと思う。家族湯を知らない人もこのお湯を知れば、ゑびすやの魅力を新たに発見するかもしれないので。その辺は宿に前向きに取り組んでいただけたらと思う。










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〒629-3241 京都府京丹後市網野町木津196-2 

電話0772-74-0025
ホームページ有り http://www.h-ebisuya.com/
アクセス 北近畿タンゴ鉄道「木津温泉」駅より徒歩3分。車の場合は京都縦貫道宮津天橋立ICよりR178,312経由


立ち寄り湯

時間

11:00~15:00/16:00~19:00
(入館は20:00までとなっております)
入湯料 大人・・・700円
小人(2歳~10歳)・・・400円
備品 タオルは付いておりませんのでご持参下さい
(ご希望の方には200円でご用意しております)


泉質 アルカリ単純泉 (低張性・アルカリ性-温泉)

   泉温40.2度/他 毎分120リットル自噴

お勧め度(★★★★☆)家族風呂に必ず入れるなら満点だが。

木津温泉 ゑびすや