知り合いのお姉ちゃんの話し
あのさ眞綾ちゃん
いい人はね早く亡くなるよね
ってポツリ
結婚して5年
諦めていた子供がやっと
きてくれて二人三脚の妊婦生活が
始まった
お姉ちゃんは完璧主義で
ストレートな物言いの人
何でもキチキチとこなす人
旦那さんは一つ上でマイペース
笑顔が可愛い人でね
これがまた大人しくて
言われた事だけこなす人
噛み合わないのよ…ことごとく
お姉ちゃんは細かくて厳しくて
言われた事すらまともに
してくれない！とよーく
ぼやいてた
妊娠してからイライラが
止まらなくて
お口もかなりキツくなってた
だから旦那さん
よーく八つ当たりされてた
でも文句は言わずに
言われた事だけするパターン
お姉ちゃん
臨月でイライラピーク
大変なのはよくわかる
だけど僕には
本当のところはわからない
わからないしマネも出来ない
できる事はいってね
すぐには出来ないかも知れない
けど
僕に出来る事はやるからね
遠慮なく言って
と言われたらしく
そんな言葉もらっても
楽になんてならない！と
ブチ切れたそう
立ち会い出産で
子供が生まれてすぐに
凄いね！本当に凄いよ！
偉い！凄い！しか言えないけど
本当にそう思ったんだ
僕と君の子供を
産んでくれてありがとう
と言われて
皆んなが聞いてるのに、何？
恥ずかしい！
とプイッとソッポをむいて
しまったらしい
子供のミルクやらオムツやらお風呂やら率先して育児に参加はしてくれるけど、言った事しか
してくれないらしくて
何でいちいち言われないと
動けないの？
と、またイライラしたそう
子供が幼稚園に入って
送迎から参観日まで色々参加
してくれる旦那さんを周りは
いい人だね…と褒められて
え？自分の子供なんだから
当たり前でしょ！
といちいち意見して反抗
してしまったらしい
子供の七五三の時
「やっと7歳になったね
君が毎日美味しい料理作って
ちゃんと育ててくれたから
伸び伸びいい子に育ってるね
ありがとう
本当に産んでくれてありがとう
足りないところは言ってね
手伝うから」
って言われて
全く、いちいち
しつこい！
言われないでもやって！と
思ってしまったらしい
子供が9歳の時
旦那さん白血病になってね
入院の日々が始まった
病院にいくたび
ごめんね・面倒ばかりかけて
子供はどう？元気？
君は元気？寝てる？
と病人に言われて
落ち込んでしまったそう
こんな私に、いちいち声かけて
心配して
ずーっと優しい言葉をくれてるのに
目の前の事にイライラして
思いやるなんてできなかった
って反省してね
病院にいった時
私と結婚してよかった？
間違いだったんじゃない？
優しい言葉をいつもかけてくれるのに、私はいつもソッポを向いて
ばかりで、素直になれなかった
本当はね
有難いし、嬉しいんだよ
だけどさ、毎日に余裕なくてさ
ムッとして当たり散らしちゃうん
だよね
仕事してもしなくてもいいよ…とか
言われたらバカにされてる…とか思ったり、嬉しいくせに家庭に入るのが不安で仕事も捨てられなかった。
いつも優しくて
当たり前に感じてた
ごめんね
私を選んでくれてありがとう
結婚してくれてありがとう
子供を産ませてくれてありがとう
あなたの奥さんで幸せだよ
だからさ
早く良くなって帰ってきて
と10年分の思いをぶつけたそう
1ヶ月後…
何でも聞くよ…って約束したけど
ちょっと無理みたい
僕はね、不器用で真面目で
一生懸命な君が大好きなんだ
守ってあげたい、助けたいから
結婚したけど
僕の方が元気をもらって
勇気をもらって
守ってもらって迷惑かけて
しまってるよね
本当に申し訳ない
ねえ
産まれてきてくれてありがとう
僕と出会ってくれてありがとう
僕を選んでくれてありがとう
僕を守ってくれてありがとう
僕はもう君を守れそうもない
って酸素マスクしながら
細い声で一生懸命に
話してくれたそう
3日後眠るように静かに
亡くなりました
あれから15年が過ぎて
17回忌が終わって
お姉ちゃんが
私の中には16年前から
あの人も生きてる
私の中にずっといるんだ
私はね2人分生きるから
図々しく太々しく生きるんだ
憎まれっ子世に憚るんだ
あの人はいい人だった
いい人はね早く亡くなっちゃうんだよね
って
それを傍らで聞いてた男の子
もう立派な高校生
パパに瓜二つな顔立ち
マイペースまでそっくりだそう
お姉ちゃんの話を聞いてね
当たり前ってないんだな
未来永劫なんてないんだな…って
つくづく思ったんだ
今に感謝しないと
目の前の人に感謝しないと
感謝の気持ちは言葉にしないと
伝わらない
って思ったんだ
今日のあたりまえが
明日あるとは限らない
憎まれっ子になろう
私も世に憚ろう！って
この息子ちゃんの口癖が
ありがとう
いい笑顔で言ってくれるんだ
お父さんにそっくりだね
あなたは世に憚ってね！って
願ってるんだ
ってひとりごと