今日は「漫画の日」らしい。
“100年後に残したい名作まんが”というサイトには、1950年代の黎明期から、1960年代、70年代、80年代・・・と10年ごとに、その年代に出版された漫画が少年漫画、少女漫画別にあげられている。
どれも、確かににその時代に流行った納得な作品である。

「ドラえもん」は、1969年から連載された藤子・F・不二雄による日本の児童向けSF漫画。

60年代少年漫画は他に、サイボーグ007、鬼太郎大全集、巨人の星、天才バカボン、ルパン三世、ゴルゴ13、あしたのジョー、ワイルド7などがある。

ちなみに60年代少女漫画では、小さな恋のものがたり、アタックNo.1などがある。

漫画やゲームなどに登場するキャラクターは映画化や実写化され、グッズやCDが発売されるなど、ポップカルチャーとして多彩なメディアで展開される。
これはメディアミックスとよばれ、日本国内だけでなく世界中で行われているビジネスモデルである。
米国の金融会社TitleMaxの、キャラクターメディアミックス総収益世界ランキングによると、1位ピカチュウ、2位ハローキティ、3位くまのプーさん、4位ミッキーマウス、5位スターウォーズ、6位アンパンマン、7位ディズニープリンセス、8位スーパーマリオ、9位少年ジャンプ、10位ハリーポッターであり、この他にも、機動戦士ガンダム、ドラゴンボール、北斗の拳、ワンピース、遊戯王など、

実にトップ25のうち10日本のエンタメとなっている。

しかし、一方、日本人を対象に調査した「日本を代表するキャラクター(gooランキング2018年)」では、
1位ドラえもん、2位ピカチュウ、3位スーパーマリオで、
また、「世界に誇れる日本のキャラクター(J-WAVEランキング2016年)」では、
1位ドラえもん、2位ハローキティ、3位ピカチュウである。


このように日本では圧倒的な国民的人気を誇り、愛されるキャラクターである「ドラえもん」が、アメリカで人気がないのは、そこに描かれるイデオロギーのいくつかに、受け入れがたいものがあったためである。

「ドラえもん」「のび太」へ掛ける言葉には、作者の日本人的イデオロギーがある。
例えば、「あわてなくていいんだよ、人生は長いんだ」「すぎたことばかりくよくよしたってしかたがないだろう。目が前向きについてるのはなぜだと思う? 前へ前へと進むためだ」などの言葉には、私達が悲しいことや悔しいこと出会った時、友人からの励ましの言葉や安心の言葉に救われており、「人は一人では生きていけないからこそ、お互いに思いやり言葉を掛け合い助け合いながら生きていくことが大切なのだ」というメッセージが込められているのである。
 

このようなメッセージは、世界に広く受け入れられ、世界20カ国・地域で行った「日本のキャラクターやコンテンツの認知好意度(電通総研2016)」では、認知における全体のトップは「ピカチュウ」好意におけるトップは「ドラえもん」となっている。

しかし、「ドラえもん」「名探偵コナン」「ウルトラマン」「クレヨンしんちゃん」などは、アジアでの認知は高いが欧州や北米では低い

「ドラえもん」が北米に上陸したのが2014年と遅かったことが、認知度が低い要因であるが、遅れた理由として次のようなものがある。
第1に、「子どもの自立心の養成に問題が生じる」という点である。
未熟な子どもが難局に直面した時、「のび太」のようにすぐに誰かに助けてもらうようでは、子どもの自立心が養われず、依存心を克服できない子に育ってしまうと考えられたのである。
第2に、「キャラクターに問題がある」という点である。
「のび太」自信なさげで怠惰というキャラクターは、子どもが小さいうちに善悪の価値観を明確に教えるべきとするアメリカの考え方に合わなかったのである。また「ジャイアン」いじめ的行動「しずかちゃん」ジェンダー上のステレオタイプな描かれ方なども、ロール・モデルにならず、自分たちの子どもに真似してほしくないと考えられたのである。これらは、インドパキスタンなどでも同様な受け止め方がなされている。

加えて、第3に、「女性の誘い方に問題がある」という点もある。
「しずかちゃん」に「大好き!」と言ったり、「家においでよ」と誘うセリフが、宗教上・社会道徳上問題であるとの声もあがったのである。
このように、アメリカで人気がなかったのは、イデオロギーのいくつかに受け入れがたいものがあったためといえる。

しかし2014年、遂に「ドラえもん」ディズニーが版権を取得、ケーブルTV「ディズニーXD」で、米国文化や生活習慣を反映した内容に一部修正し、「DORAEMON」として制作・放送されるようになった。
 

2008年に外務省で「アニメ文化大使」となった「ドラえもん」は、これからもますます海外に「日本人がどんなこと考え、どんな暮らしをして、どんな未来を創ろうと考えているか」を伝える役割を果たしてくれるに違いない。