日本SF史に残る伝説のデビュー作、27年の時を経て装いも新たに堂々復活ひらめき電球



『妖精作戦』笹本祐一



夏休み最後の夜、オールナイト映画をハシゴした高校2年の榊は、早朝の新宿駅で一人の少女に出会う

彼女の名は小牧ノブ―この日、榊たちの高校へ転校してきた同学年の女子だった
そして彼女は超国家的秘密機関に追われる、並外れた超能力の持ち主でもあった
その日から高校を異常事態が襲う

正体不明のヘリが墜落し、無人戦闘機が襲い来る

そしてノブの身を守るべく秘密裏に雇われた腕利きの私立探偵の奮闘もむなしくノブは連れ去られた

後を追った友人たちは横須賀港に停泊する巨大潜水空母に浸入する―


“「気違いじみたサイズのふねだ」
「原潜カサンドラ?これか、しのびこむ予定の潜水艦て?」
「らしい」
「香典ははずんでやるからな」
「決行はいつだ」
「明日の晩だ」
「決行って何よ?」
「あれ、言ってなかったっけ、この潜水艦に榊とノブちゃんさらったヘリが降りたんでね、取り返しに行くの」
「うっそー」
「残念だけどホント、早くしないと潜水艦出てっちゃうからね」”


斯くして、太平洋上の原潜からスペースシャトルに乗り込み月面基地へ―

果たして彼らの運命や如何に!?



当時まだ“ライトノベル”という言葉は存在しておらず、若者向けのSF的な読み物は今と比べてはるかに少なかった

そんな中、朝日ソノラマ文庫より刊行された『妖精作戦』は衝撃的であった

その頃のSFの世界を駆け巡る超人的な登場人物たちと異なり、現代日本の高校生としてリアルな主人公たちが活躍する“学園もの”というジャンルは、SFジュブナイルにおいて、まさに型破りであったのだ―


何より、その軽妙な台詞の掛け合い、疾走感溢れる文体、魅力的なメカニックとアクション、そしてあくまで若者目線の世界観はまさにライトノベルのはしりであったと言える


この作品以降、『ハレーション・ゴースト』『カーニバル・ナイト』『ラスト・レター』と続巻も新装復刊予定―



自称“現役最古のラノベ作家”が贈る、日本SFの歴史を変えた4部作の幕開けをぜひ得意げ



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