2004年7月58歳で急逝した著者が、最後に挑んだ暴力と愛と復讐のバイオレンス小説ひらめき電球



『酒気帯び車椅子』中島らも



家族をこよなく愛する小泉は、中堅の商社に勤める平凡なサラリーマン


彼は土地売買の極秘巨大プロジェクトを立ち上げるのだが、必死の思いで進めた仕事の目処がたったある日、計画を知るという謎の不動産屋から呼び出される


そこで彼を待っていたのは暴力団だった


家族を狙うという脅しにも敢然と立ち向かう小泉だったが、容赦ない暴力が彼と家族を襲う…


“まだ死ぬわけにはいかない。私にはすることがある”


家族と自分の体を壊された男が裏社会に仕掛けた戦いは、驚天動地の恐るべきものだった!?―



この作品は著者の死後刊行された、最期にして意欲的な渾身の問題作

夫人の談によると、著者はこの物語を“ある日突然思いついて、一気に書き上げた”そうである


著者・中島らもは若い頃から、アルコールやドラッグで度々体を壊し入退院を繰り返しながらも、コピーライター・作家・劇団長・テレビ、ラジオ出演・バンド活動などの仕事を精力的にこなす、破天荒な生活を送ってきた


晩年も、大麻取締法違反で逮捕された上に、初公判の大阪地方裁判所で、弁護士から自重するよう求められていたにも関わらず、持論の「大麻開放論」を展開し、懲役10ヶ月執行猶予3年の判決を受ける


さらにその後、自らの獄中体験を綴ったエッセイ『牢屋でやせるダイエット』を出版し、手錠姿でサイン会まで開く始末


2004年7月、知人のライブに飛び入り参加し、打ち上げの飲み会の後、神戸の飲食店の階段から転落し頭部を強打、脳挫傷による脳内血腫のため手術を行うも、脳への重度なダメージから意識が戻ることなく、自発的呼吸すら困難な状態に陥る


事前の「植物状態にになったら、すぐに殺してほしい」という、本人の希望に基づき人工呼吸器を停止、死去


遺骨は、これも本人の希望で、夫人の手で散骨し、墓は作らなかったという―



自由で奔放、絶えず生死をさまよう様な、波乱万丈の生き方をしてきた中島らも―


その最後を締め括るに相応しい、破天荒な遺作をぜひ得意げ



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