“その部品がなければ、ロケットは飛ばない”―
最先端技術の特許をめぐる、大企業vs中小企業の熱き戦い
第145回直木賞受賞作ひらめき電球



『下町ロケット』池井戸潤


規模は小さくとも世界に誇れるエンジン技術を持つ、下町の工場・佃製作所

経営者である佃は二代目だが、七年前まで宇宙科学開発機構でロケットエンジンの開発担当をしていた

しかしロケット打ち上げ失敗の責任をとり辞職し、父親の跡を継ぐことになった―


不景気の最中、主力製品の売り上げは落ち込み、頼みの綱の大口顧客からもそっぽを向かれてしまう

更にライバル企業のナカジマ工業から、特許侵害という訴訟で卑劣な法廷戦略を仕掛けられ、否応なく法廷闘争に巻き込まれた佃製作所は、会社存続の危機を迎える―


一方で、大手町に本社を構える帝国重工の航空宇宙開発部では、ある問題が発生していた

帝国重工が作製するロケットエンジンに不可欠なバルブ技術が、特許において何者かに先を越されてしまったのである

その相手こそ佃製作所であった


帝国重工の担当者は、佃に特許の買い取りを要求するが、佃は特許使用や売買ではなく、自社製品の納品を申し出る

それは、もう一度この手でロケット打ち上げに関わりたいという佃の夢を叶える為の決断であった―


だが大企業の傲慢な論理の壁に阻まれ、話し合いは平行線のまま…
その上、社内では佃の方針に対して意見が対立し、次第に佃は窮地に追い込まれていく―


“カネの問題じゃない
これはエンジンメーカーとしての夢とプライドの問題だ”


それでも男は、夢を打ち上げると決めた―


果たしてロケットを飛ばせることはできるのか!?



『空飛ぶタイヤ』『鉄の骨』でも描かれていた、大企業vs中小企業の構図、痛快なカタルシスと感動は本作でも健在


モノ作りに情熱を燃やし続ける男たちの矜持と、卑劣な企業戦略の息詰まるガチンコ勝負―


“夢だけ追いかけても飯は食っていけないし、飯だけ食えても夢がなきゃつまらない”


かつてロケットエンジンに夢を馳せた佃、そして仕事にかける男たちの意地とプライドを賭した戦い、今年度最高のヒューマンドラマをぜひ得意げ



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