お笑い界きっての読書家で知られるピース又吉が、数々の作品紹介を通して自身を綴るエッセイ集ひらめき電球



『第2図書係補佐』又吉直樹



渋谷ヨシモト∞(無限大)ホールで、2006年3月~2009年7月の間に発行していたフリーペーパー『YOOH!』の中で連載されていたコラムをまとめたものが本書


“僕の役割は本の解説や批評ではありません。
僕にそんな能力はありません。
心血注いで書かれた作家様や、その作品に対して命を懸け心中覚悟で批評する書評家の皆様にも失礼だと思います。
だから、僕は自分の生活の傍らに常に本という存在があることを書こうと思いました。”


と、本人の弁にもあるように、本書は書評や作品紹介というより、本に纏わる思い出であったり、思想であったり、赤裸々な過去であったりと、自分自身を語ったエッセイである―


本書で紹介される作品は

太宰治『人間失格』
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』
織田作之助『夫婦善哉』
吉本ばなな『キッチン』
村上春樹『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』
ねじめ正一『高円寺純情商店街』
村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』
野坂昭如『エロ事師たち』
西加奈子『炎上する君』
京極夏彦『巷説百物語』
森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』
フランツ・カフカ『変身』

など、多岐に渡る57作品―

そのジャンルの広さもさることながら、各作品と共に語られるエピソードの巧妙な語り口に思わず引き込まれる


内容は、貧乏な幼少期やモテなかった学生時代、そして売れなかったお笑い下積み時代など、ともすれば自虐的な話になりがちだが、そこは芸人、キッチリとユーモア溢れる文章で、時に笑わせ、時に爽やかな感動を呼び起こす

また、彼の本に対する愛情が感じられ、同じ本読みとして強く共感を覚えずにはいられない―



お笑いコンビ「ピース」として活躍する傍ら、舞台の脚本や、文筆業も手がける意外な才人・又吉


青春の雄叫びに胸を揺さぶられる至極のエッセイをぜひ得意げ



活字中毒の料理人-2011120304310000.jpg