長い、長い1日。 | まるまるまーしゃの大冒険!

長い、長い1日。

昨夜22時半頃、
うちに遊びにきていた妹を、
まーしゃの散歩がてら駅まで送る途中の出来事でした。


道の向こうへ渡るのに信号待ちをしていた時、
突然”ドンッ!!”という鈍い音が。

音のした方向へ目を向けると、
下半身の自由がきかなくなった黒猫ちゃんが、
前足2本だけで必死に動いていました。

でも、そこは片側だけでも4車線もあるかなり大きな道。
しかも、8車線×8車線がぶつかる交差点のど真ん中。
その場を動かずにいるのも、動いてしまうのもどちらも非常に危険な場所。

交差点からその姿は見えているものの、
助けにいくことも出来ずに、
ただ、ただもう一度轢かれないように祈るばかり。

フラフラしながらも、
必死に腰を引きずりながら安全な場所を探して歩く黒猫ちゃん。
途中、もう一度だけ他の車に少し当たってしまったけど、
なんとか交差点を渡りきり、
歩道の脇にある植木の茂みに隠れていました。

信号が変わり駆け寄ると、
茂みの中でジーッと静かにしていましたが、
夜だし黒猫だしで、どんな状態かを伺うことができません。

まーしゃが緊急の時ように!とケータイに登録してあった、
緊急病院に即電話して診てもらえるようにお願いをするも、
こちらは”往診”という形なので、病院に連れてこられても困るとのお返事。
いわゆる救急車のような車の中で処置をするので、
周りに車停められるところはありますか?
野良猫である事を伝えると、お金はどうするんですか?
処置した後のことは?

などと色々聞かれたにも関わらず、
今は他の動物の処置中のため、あと1時間はかかります。と・・・。
では他に診てもらえる病院を教えて下さい。
とお願いしても、「僕は医師じゃないのでわかりません。」

・・・・・・・・・・・・・。

獣医じゃなくてもさ、そのくらい調べておいて下さいよ。
緊急の時の番号ですよね、コレ。


電話番号は知らないけど、
夜間救急専門の動物病院が、そこから車で5分くらのところにあるのを知っていたので、
そこまでタクシーで運ぼうという事になりました。
この時、男性(オジサマ)一人、連れの女性一人、お一人でいらっしゃった女性一人、
私達の5人でした。

生身で抱きかかえるのには色んなリスクが伴うため、
コンビニへ走りバスタオルとゴミ袋を買い、
それにくるんで搬送することに。

男性と連れの女性がタクシーに乗って下さり、
もう一人の女性は”私、バイクなのでちょっと追いかけてみます。”と。
私はとりあえず妹を送り、まーしゃを一度家に連れて帰りました。

この時、私は病院に向かうことを約束していた訳ではなかったので、
正直、その後病院に行くか迷いました。
まーしゃがいるのでその後元気になっても、引き取ってあげられる訳ではない。
保険のきかない動物病院で、どこまで面倒みてあげられるのだろうか。
また、最悪亡くなってしまった時に悲しい思いをしたくない。

でも、事故現場をはっきりと目撃し、
苦しみながらも必死で安全な場所へと避難する痛々しい姿が
しっかり目に焼きついてしまい、
病院へ行くのも勇気がいるけれど、このまま行かないのも猫ちゃんの容態が気になる。

そして、私になにが出来るだろうか。。。

と頭の中では考えていても、
体は勝手に動いていました。
一度家に帰り、まーしゃを置いて、
お金をある程度用意して、走って病院へ向かいました。

先に到着されていた3名が、
ちょうど先生から説明を受けているところでした。
この時23:30。

野良猫なので、どんな病気を持っているかも分からないし、
事故の傷が治ったとしても、その後の生活はどうするのか。
などの説明があり、
ひとまずレントゲン検査などで事故で負ったであろう傷のみを見て頂く事に。

20分くらいで終わりますといわれた検査も、
結局1時間かかり、再度呼ばれたのが0:30過ぎ。

容態は、かなりの重傷でした。
先生は当初、”足は折れてなくてねんざ程度だと思います!”
とおっしゃってたそうですが、
事故直後の姿を見ている私としては、そんな訳ないよね・・・。
と心のなかで思っていましたが、
やはり案の定、骨盤骨折と右後ろ足の麻痺がもう始まっているとの診断でした。

恐らく、立てるようになる可能性は極めて少ないでしょう。
その時点の検査レベルでは、
心臓や肺など、上半身にはほとんど損傷がありませんでしたが、
尿も出ないので、膀胱が破裂していたり、尿管・尿道が切れてしまったか、
などの症状も考えられますとのこと。

この時点で、処置をして野生に返すという選択肢がなくなってしまったので、
残る選択肢は二つ。

このような状態を理解した上で、引き取ってくれる方を探す。

お薬で安らかに眠らせてあげる。





そこから時間を頂き、4人で2時間ちかく話合いました。

まず4人とも、家庭環境等から引き取ることは出来ないので、
助けてあげたいなら里親を探さなければならない。
ただ、もともと野良猫なので猫エイズとか先天性の病気とかを持っている可能性もある。
現段階でそこまでの検査はできないし、
今後歩行が困難であるという状況も全て理解していただいた上で、
最後、この子が命をまっとうするまで面倒みてくれる人でないとならない。

しかも、この救急病院は夜間専門で、
朝の5:00でcloseしてしまうので、それまでに引き取ってもらうか、
その後は武蔵小杉にある総合病院にスタッフが戻るので、
その時に一緒に連れて帰り、日中やってる動物病院がオープンするのを待って、
引き取るか。

病院に同行していた女性のお知り合いで、
傷ついたワンちゃんを保護し、里親さがしをされている方がいるので、
相談してみたい!!

と申し出てくれたのですが、
はたして、1日2日で簡単に見つかるのか!?
本当にそんな大役をかって出てくれる方がいるのか。

私達としても、最大限やれることはやってあげたい!!
と皆が思っていましたが、
1日、2日と日にちが経つにつれて情が湧き、
やっぱり引き取り手がないので・・・・。
なんてことの方が辛いのではないか。

でも、いくら野良猫とは言え、
この子の命の長さを、たまたま保護した私達が決めてよいものなのか。


最後に、
「私が引き取って、数日様子を見ます。家では飼えないけれど、
実家とか彼の実家とかにも相談してみます。」
とバイクで追いかけてきて下さった女性が申し出てくださいましたが、
その場でおうちに連絡するも、
やはりご家族の理解が得られませんでした。



安らかに、眠ったように息を引き取った黒猫ちゃん。
2008年5月28日 午前2時でした。
 
病院でカルテを作る際に名づけた名前は、”クロちゃん”。

最後まで助けてあげられなくてごめんね。

獣医さんが身体を綺麗にしてくださり、
傷のついた足にはかわいいバンド(包帯のようなもの)も付けてもらい、
タオルにくるみ、箱に寝かせてもらいました。

バイクできていた女性が、
「うちの猫が去年亡くなったとき、家まで引き取りにきて火葬してくれるところがあったので、
そこに連絡してやってもらいます。お骨は家の庭の木の下に埋めますね。」
とおっしゃって下さったので、
マンション暮らしの私達は、お言葉に甘えさせていただきました。




たまたまその場に居合わせた私達4人。

名もしらぬ野良猫を助けたい!という気持ちだけで動きました。
結果として、クロちゃんを助けることは出来なかったけど、
あのまま見ぬふりをしていても、遅かれ早かれ命は落としてしまったでしょう。
レントゲンを取ったら、胃にも腸にも何も入ってなかったので、
獣医さん曰く、2日くらいは何も食べてなかったんだね。と。

お腹も空かせたまま、道端で一人生涯を終えるのではなく、
こうやって、何人もの人に心配してもらい考えてもらい、
名前も付けてもらえただけでも、クロちゃんは幸せだったんではないでしょうか。

と獣医さんよりお言葉を頂き、
偽善者ぶる気も毛頭ないけれども、
あの時、私達4人に出来る、考えられることは全て尽くしたと思います。


この東京のど真ん中で、
見知らぬ人同士が、交通事故にあった野良猫を助けようとしたこと。
我ながら、すごく素敵なことだと思いました。

私も含め、皆さんが口を揃えておっしゃっていたのが、
「自分ひとりではどうすることも出来なかったと思う。
皆さんがいてくれて心強かったです。」と。

今回のクロちゃんの事故により、
人間として学ばせて頂く部分がたくさんありました。

”人生に無駄なことはない。全て必然である。”

と考える私にとって、すごく意味のある1日となりました。

クロちゃんのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。


今日はかなり長くなりましたが、
お付き合い頂きありがとうございました。