さて、
取っ手付きの
段ボール箱の中の
茶色い猫は、
とても大人しく車に揺られて
家に向かいました。
膝の上の箱から
ホワッと体温が伝わり、
私は、何とも言えない
気持ちになりました。
そして、20分程で
無事に家に到着しました。
部屋に入り、箱を開けると、
眩しそうに目を細めながら
箱の隅でうずくまって
こちらを見ていました。
車での移動は、半年前の
ブリーダーさんから
ペットショップ以来のはず。
車で大人しかったのは、
緊張して、こわくて
動けなかったからでした。
「は~い!
ここが君の、おうちだよ~」
箱から、ゆっくり出すと、
へっぴり腰で、
ちっちゃな耳を
目一杯後ろにして、
細かった目は大きく見開いて
真っ黒な、真ん丸な瞳で
キョロキョロと
見回したかと思ったら、
ダッシュで
部屋の隅っこに行き、
すぐさま反対側の隅に行き、
これを繰り返すこと数分、
やっと落ち着く場所を
見つけました。
それは、
電子レンジが置いてある
ワゴンの下。
その隙間は、床から10㎝程
背中をこすりながら
ヨチヨチくぐっていきます。
頭を床につけて覗いてみると
一番奥で安心した様子で
くつろいでいました。
「初めての所だもんね‥」
落ち着くまで、
そっとしておく事にして
生活の準備をしました。
猫ちゃん用のトイレに、
お店からもらってきた
ちぎった新聞紙を入れて
見える所に置き、
お水、食事用のお皿と
爪研ぎを用意してから、
まだ名前の無い茶色い猫に
「疲れたね‥にゃんこ」
「ゆっくりおやすみ」と、
挨拶をして
その日は就寝しました。

家に来て間もない頃の
マールちゃん
