Ayaka、Yuka、Ayanoのチームが所属する【FReP】の本部のある銀河辺境SOL-3星系最外縁部の
惑星『レグニッツァ』はガスだけで形成され、人が住める環境では無い。
その惑星には衛星が一つある。元は氷の塊と思われていたのだが、後の調査で膨大なレアメタルを含む
鉱物資源が発見されている。
だがこれは公表される事は無かった。星系政府により押さえられ、ある目的の為に中身がまるごとくり
抜かれて大改造されたからだ。
完成後、その施設衛星は『アイオーン』と名付けられ、一人の人物が最高責任者として赴任していた。
コンソールの館内通常回線の受信ランプが青く光り、ディスプレイに文字が浮かぶ。
「お食事の用意が整いました。」
作業がちょうど一段落ついた所だ。たまにはきちんとリビングで食べるか。と思いマイクに向かう。
「わかった。今リビングに行くよ。」
3m四方ほどの壁には3面ディスプレイがあり、その下に様々な計器類、LEDメーターが並んでいる。
コントロール自体は彼の手元にあるポータブルPCに連動していた。
ホッと息を吐き、大きな伸びを一回してから男は手元の電源スイッチを切ると、立ち上がった。
部屋を出た男は通路を歩き始める。
身長は約180cm。非常に細身で髪は耳が隠れる程のブロンドが揺れている。
ざっくりとした黒いケプラー素材のVネックのセーターに年代物のデニム、足元はわざわざ白いスニー
カーを模した磁力靴というラフな格好だ。
リビングに入ると一見可憐な少女に見えるメイド姿のヒューマノイドが微笑みながらランチを運んで来る。
夜には会食の予定があるので、簡単なサンドイッチにサラダとハーブティーだが。
しかし全て合成ではなく『本物』のパンと肉野菜に、ティーも希少な本物の茶葉で入れたものである。
食事が終わる頃を見計らった様に、セキュリティーが来客を告げた。
『Koshiko様がお見えです。お通ししてもよろしいでしょうか。』
「ん?・・・ああ通してくれ」
わざわざ来るとはなんだろう?と首を傾げていると、星間通信の卓の赤いランプが点滅した。
『本社ゲノム研から暗号通信です。パスワード確認後、解析受信開始予定。現在タイムラグ15sec.です。』
スピーカーから人工音声が流れる。
やれやれ。と彼が肩をすくめてパスワードを打ち込みenterキーを押すと、ランプがグリーンに変わり
暗号化された通信パケットの解析受信が始まった。
『私だ。先日の小惑星帯での事件は聞いているだろう。その件で関係者の直接会合が決定したよ。
場所と日時は追って連絡が行くと思う。君にも出席してもらう事になるぞ。お偉方が進捗状況の説明を
どうしても聞きたいとうるさくてな。
それから言うまでも無いが[素体]の管理には万全を期してくれよ。どうやら作戦発動の前倒しが濃厚に
なって来た。まだ時期尚早だと私も言ったんだがね。以上だ。』
相変わらずパケット通信に不慣れな所長の紋切り型の口調に苦笑いを浮かべて、彼は送信卓のパネルを
開いた。すると、ほぼ同時に部屋のドアが開き一人の女性が入って来た。
彼はチラっと目をやると「ちょっと待て」という風に手を上げ送信マイクに向かう。
『この間の件はニュースで知ってます。イヤな予感はしてましたがね。分かりましたよ、今回は逃げる
訳にも行かなそうですから。お会いしたらまた例の店に行きましょう。時間空けておいて下さい。』
「例の店ってなあに?お盛んだこと。」
壁にもたれ掛かって待っていた、全身黒い皮のジャンプスーツに黒のエナメル10cmピンヒール風磁力靴
黒髪のショートボブといういでたちの美女ーKoshikoはニヤニヤしながら言った。
「君も知ってるだろ?焼肉屋の『JOJOガーデン』だよ。」彼女のジョークには慣れっこな様子で受け流す。
「そんな事より、統合参謀本部直属の兵器開発局局長閣下がわざわざこんな僻地に何用ですかな?」
「閣下はやめてちょうだい。」
彼の親しげな軽口にプッと吹きながらも、彼女はすぐに真顔になり向き直った。
「オペレーションの関係機関担当者の直接会合に関する通達で伺いました。Yasutaka館長。」
そして付け加える。「事態はあなたが考えているより深刻よ。」
「連中気が付いたのか?」彼ーYasutakaも真顔になりKoshikoを見つめた。
「いえ、まだそこまでは・・・でも疑い始めてるのは確かね。」
二人は無言のうちに会話をする様にしばらく目を合わせていたが、星間通信の受信信号が鳴った。
『ああ、分かった。私も楽しみにしておくよ、それでは後日。オーバー。』
Yasutakaは通信卓のパネルを閉じ、Koshikoに歩み寄って囁いた。
「LABOに行こう。[素体]を君にも確認しておいて欲しい。」
「ぜひ拝見したいわね。」
「ああそれから私の事を『館長』と呼ぶな。」
「あーら、皆そう呼んでるわよ。いいじゃない。」Koshikoは肩をすくめる。
それに構わずYasutakaは部屋の側面の天井まである書棚のある本を押し込んだ。
すると書棚自体が奥に動いてから横にスライドして、地下への直通エレベーターの入り口が開く。
そのエレベーターで地下5階まで降りてから3重のセキュリティを通過すると、複雑なパスワードと
専用カードキーで開く扉の前に着いた。
パスワードでロックを解除して、カードキーをYasutakaが滑らせると厚さ50cmほどはある扉が開く。
部屋の中には一基2mはあるカプセルが10基程並んでいるが、稼働中のランプがついているのは3基
だけの様だ。
カプセル内は赤い半透明の液体が満たされよく中が見えない。
外には各々プレートがついていた。どうやら名前の様だ。
左からAyaka、Yuka、Ayanoと読める。
ーto be continued
惑星『レグニッツァ』はガスだけで形成され、人が住める環境では無い。
その惑星には衛星が一つある。元は氷の塊と思われていたのだが、後の調査で膨大なレアメタルを含む
鉱物資源が発見されている。
だがこれは公表される事は無かった。星系政府により押さえられ、ある目的の為に中身がまるごとくり
抜かれて大改造されたからだ。
完成後、その施設衛星は『アイオーン』と名付けられ、一人の人物が最高責任者として赴任していた。
コンソールの館内通常回線の受信ランプが青く光り、ディスプレイに文字が浮かぶ。
「お食事の用意が整いました。」
作業がちょうど一段落ついた所だ。たまにはきちんとリビングで食べるか。と思いマイクに向かう。
「わかった。今リビングに行くよ。」
3m四方ほどの壁には3面ディスプレイがあり、その下に様々な計器類、LEDメーターが並んでいる。
コントロール自体は彼の手元にあるポータブルPCに連動していた。
ホッと息を吐き、大きな伸びを一回してから男は手元の電源スイッチを切ると、立ち上がった。
部屋を出た男は通路を歩き始める。
身長は約180cm。非常に細身で髪は耳が隠れる程のブロンドが揺れている。
ざっくりとした黒いケプラー素材のVネックのセーターに年代物のデニム、足元はわざわざ白いスニー
カーを模した磁力靴というラフな格好だ。
リビングに入ると一見可憐な少女に見えるメイド姿のヒューマノイドが微笑みながらランチを運んで来る。
夜には会食の予定があるので、簡単なサンドイッチにサラダとハーブティーだが。
しかし全て合成ではなく『本物』のパンと肉野菜に、ティーも希少な本物の茶葉で入れたものである。
食事が終わる頃を見計らった様に、セキュリティーが来客を告げた。
『Koshiko様がお見えです。お通ししてもよろしいでしょうか。』
「ん?・・・ああ通してくれ」
わざわざ来るとはなんだろう?と首を傾げていると、星間通信の卓の赤いランプが点滅した。
『本社ゲノム研から暗号通信です。パスワード確認後、解析受信開始予定。現在タイムラグ15sec.です。』
スピーカーから人工音声が流れる。
やれやれ。と彼が肩をすくめてパスワードを打ち込みenterキーを押すと、ランプがグリーンに変わり
暗号化された通信パケットの解析受信が始まった。
『私だ。先日の小惑星帯での事件は聞いているだろう。その件で関係者の直接会合が決定したよ。
場所と日時は追って連絡が行くと思う。君にも出席してもらう事になるぞ。お偉方が進捗状況の説明を
どうしても聞きたいとうるさくてな。
それから言うまでも無いが[素体]の管理には万全を期してくれよ。どうやら作戦発動の前倒しが濃厚に
なって来た。まだ時期尚早だと私も言ったんだがね。以上だ。』
相変わらずパケット通信に不慣れな所長の紋切り型の口調に苦笑いを浮かべて、彼は送信卓のパネルを
開いた。すると、ほぼ同時に部屋のドアが開き一人の女性が入って来た。
彼はチラっと目をやると「ちょっと待て」という風に手を上げ送信マイクに向かう。
『この間の件はニュースで知ってます。イヤな予感はしてましたがね。分かりましたよ、今回は逃げる
訳にも行かなそうですから。お会いしたらまた例の店に行きましょう。時間空けておいて下さい。』
「例の店ってなあに?お盛んだこと。」
壁にもたれ掛かって待っていた、全身黒い皮のジャンプスーツに黒のエナメル10cmピンヒール風磁力靴
黒髪のショートボブといういでたちの美女ーKoshikoはニヤニヤしながら言った。
「君も知ってるだろ?焼肉屋の『JOJOガーデン』だよ。」彼女のジョークには慣れっこな様子で受け流す。
「そんな事より、統合参謀本部直属の兵器開発局局長閣下がわざわざこんな僻地に何用ですかな?」
「閣下はやめてちょうだい。」
彼の親しげな軽口にプッと吹きながらも、彼女はすぐに真顔になり向き直った。
「オペレーションの関係機関担当者の直接会合に関する通達で伺いました。Yasutaka館長。」
そして付け加える。「事態はあなたが考えているより深刻よ。」
「連中気が付いたのか?」彼ーYasutakaも真顔になりKoshikoを見つめた。
「いえ、まだそこまでは・・・でも疑い始めてるのは確かね。」
二人は無言のうちに会話をする様にしばらく目を合わせていたが、星間通信の受信信号が鳴った。
『ああ、分かった。私も楽しみにしておくよ、それでは後日。オーバー。』
Yasutakaは通信卓のパネルを閉じ、Koshikoに歩み寄って囁いた。
「LABOに行こう。[素体]を君にも確認しておいて欲しい。」
「ぜひ拝見したいわね。」
「ああそれから私の事を『館長』と呼ぶな。」
「あーら、皆そう呼んでるわよ。いいじゃない。」Koshikoは肩をすくめる。
それに構わずYasutakaは部屋の側面の天井まである書棚のある本を押し込んだ。
すると書棚自体が奥に動いてから横にスライドして、地下への直通エレベーターの入り口が開く。
そのエレベーターで地下5階まで降りてから3重のセキュリティを通過すると、複雑なパスワードと
専用カードキーで開く扉の前に着いた。
パスワードでロックを解除して、カードキーをYasutakaが滑らせると厚さ50cmほどはある扉が開く。
部屋の中には一基2mはあるカプセルが10基程並んでいるが、稼働中のランプがついているのは3基
だけの様だ。
カプセル内は赤い半透明の液体が満たされよく中が見えない。
外には各々プレートがついていた。どうやら名前の様だ。
左からAyaka、Yuka、Ayanoと読める。
ーto be continued