けんさま警部の指示により、私は例の女を捜し続けた。
手掛かりは事件の有ったビルの管理人、田中の証言だけだ。
私はもう一度、田中の所を訪ね女の特徴を確認した。
年齢は30代から40代。
上品な黒の着物。
そんな女は、この繁華街にはゴマンといる。
私はふと、田中が言っていた言葉を思い出した。
『見た事のない女。』
確かに田中はそう言った。
ならば、この街にその女はいない。
しかし、けんさま警部はこの街をシラミ潰しに探せと私に命じた。
何故だ?
とにかく、今は女を捜すしかない。
私は夜の街を、あてもなく捜し続けた……。