
娘を連れて、茶道の師匠を訪ねました。
片道2時間は、1才8ヶ月の娘にはなかなかの長旅ですが、
先生から「連れておいで」と朝お電話をいただき、よし!とすぐ動くことに。
父の代からお世話になり、子供の頃からよく遊びに行かせてもらい、私にとっては何でも相談できるおばあちゃんのような存在。
ただ「お茶って楽しいな~」のひよっこな私を、京都の宗匠につないで下さったのも、ご挨拶やお礼状の書き方からたしなみイロハはみんな先生から教えてもらいました。
今、思えば私を宗匠に預けるなんて恐ろしいこと!なんとありがたや。。当時は若くて茶道の世界の色々なんて知らぬが仏。
先生は私が宗匠のお稽古場に伺う前に、
「空気を読むこと、お行儀を勉強させていただきなさい、お点前は先の先で良いからね。」
「何でも『はい、ありがとうございます』と言えること。低い心でいること。
宗匠や先輩を大切に、感謝で通うこと。
楽しみなさい。」
と、アドバイスいただきました。
80代後半の先生に、お稽古付けていただけるのは、数ヵ月に1、2度ですが、未だに「お点前、順番じゃない、空気を読みなさい。相手を思いなさい。お茶は臨機応変に。」とご指導いただきます。
私には、特に厳しい、、それがまた、ありがたいのです。
5月、
久し振りに伺ったお稽古中、目の前で先生が倒れられ、意識もなくなりました。
救急車に同乗し、病院に向かう緊迫した中、ふっと一瞬目を開けた先生は私の顔を見るなり、酸素マスクをずらして
「せっかく子供を預けて、遠い所まで来たのだから、私のことは良いから、稽古場に戻って、お稽古して帰りなさい。お義母さんや子供が待っているのだから、稽古したら早く帰るんだよ。」
と、一生懸命に言って下さいました。
もちろん、お稽古どころではなく、病院に付き添わせていただきましたが、
待合室にいる間、「まだまだ先生に教わりたいことがある、もっとたくさんお話したい、会わせたい人もいる、まだ生きていてほしい!」としみじみ思いました。
現在は、だいぶお元気になられたのですが、ご高齢のこともあり、ゆったりと過ごされています。
そんな先生が「おいで」と言って下さるのですから、「はい!」と娘と飛んで行きました。
ちゃんと釜に湯が沸き、床には掛け物と秋の花。
長い姉弟子さんが点ててくださるのを、娘もお利口に畳に座ってじーっっと見つめています。
場の雰囲気は、子供の方が感じられるのかもしれません。
私がお辞儀すると、娘も隣りでペコリ。
しばらく静かにお点前を見ていました。
1才8ヶ月で初稽古?✨何よりの、お勉強の場を与えていただきました。
「私が、しっかりしているうちに」と、
先生の大切なお着物や帯を分けていただきました。
「色味が地味なものは、年をとってから着ればいいから。それまで元気に長生きして、お茶を続けなさい。」と、あれこれ沢山。ありがたいことです。
娘も「ばあば、ばあば」となついて、手をつなぎ楽しそうで、
昔、なかなか子供が授からず先生によく電話で相談していた頃を思い出して、こうして子供を見ていただける日が来るなんて、と夢のようです。
「お稽古は、細く長くで良いからね。自分だけの都合で動けない時もある。それでも、1年に1回、2年に1回でもお稽古場に顔を出して、お茶の雰囲気を味わう、糸を切らずに続けなさい。」と、
いつも気遣って下さいます。
大好きな先生、どうかお元気で長生きして下さい。いつかまた、京都にご一緒させていただける日を楽しみに。
