あれ?

メールだ。

織田からだ。


織田『そちらはどうですか?』


何のんきなこと言ってるんだ。

こっちはそんなにのんきな状態じゃないのだ。


俺『ぼちぼちやってるよ。どうしたん?』



織田『いいえ、何でもありません。ただなんとなく』

なんだよ、一体。

変なやつだな。





んんんん?何か怪しいぞ。

ひょっとして、こいつ福岡に転勤なんじゃ?

え?もしかして、誰か辞めるとか?

ただ単に、それを俺が知らんだけかもしれん。






ああっ!そうか、清水さんかもしれん。

今朝、清水さんが今朝支店長と不自然な談笑をしていた。

おもむろに応接室から出てきて、妙に大声で笑ったりしてた。


あれ?そういうこと?

そういえば、土日月とこの前3連休とってた・・・。

しかも金曜日は遅刻してきたし・・・・。


え?そういうこと?

清水さんが・・・・。

清水さんはいい人だったのに。

テレビに詳しい人なんだよな。

技術系って言うわけでなく、テレビ番組に詳しいんだよな。

あと、グラビアにも詳しかったよな。

もう、40過ぎてたけど。


会社辞めてどうするんだろ?

住宅ローンもあるって言ってたし。

でも、きっと資産家なんだろうな。

じゃないと、思い切りが良すぎる決断だしな。

そうか、きっと家庭の事情ってやつだろうな。

俺には分からん複雑な事情があるんだろうな。


そうか、清水さんのあとに織田がくるのか。

織田のやつ、心配になったんだな。

清水さんが会社辞めるから仕事放り出しているかもと思ったんだな。

うん、分かる分かる。








なんだ、けっこう織田も小心者だな。








朝、支店長が発表した。


支店長:本日までに内示がなかった人は転勤はありません。


おお、やっぱり俺はないんだ。

そりゃそうだな。別に実績悪くないし、むしろ良い方だし。

動かすメリットないもんな。



ふと周りを見渡すと、伊藤課長の机の上に賃貸情報が乗っているのに気がついた。

ああ、伊藤課長いなくなるんだったよな。

長い間ご苦労さん。  あ、お疲れ様か。


まあ、この人の場合は当然だな。

社歴も、人生も先輩だったら、教えてもらうのが普通だと思うけど、

いっつも俺が教えてばかりだったもんな。

変な先輩だなと思ったもんだよ。

だけど、今考えると常に勉強ってタイプの人だったのかもしれないな。

ある意味前向き。

いや、そんなことないか。



営業は数字の世界だしな。

数字の世界は厳しいよな。

新しいところで頑張ってくれ・・・・・・・・・伊藤課長・・・・・・・・・・・・・だ。



伊藤課長の代役は長崎から来る40代の人だ。

確か細身の割と背が高い人だ。

えーっと、あっそうだ。

橋本さんだった。多分。

橋本さんは会ったことはあるけど話したことはない。

挨拶くらいはしたかもしれんなあ。

いや、してないかも。

かなり薄い存在。

こっちに来たら濃くなると良いなあ。


だけど、この人だって営業なわけだから

きっと、話したらスゴク面白い人かもしれないよな。


うん、そうに違いない。

きっと外にいる時は喋り捲ってて、会社に戻ると疲れ果てて

もう話せなくなっているのかもしれないな。





Fight! 橋本さんっ。









平日のしかも週の真ん中水曜日ともなると仕事はヒマになる。

そうなると、今まではCメールだったやつらがここぞとばかりに電話をかけてくる。

この時期恒例のパターンだ。



あっ、中野からだ。

中野はこのシーズンのみ頻繁にかけてくる、俺にとってはシーズン男だ。


中野:どうよ、今月は?

どうよだってよ。わざとらしい挨拶だなあ相変わらず。


俺 :どうもこうももないよ。さっぱりだよ。


中野:へー、どこも同じやね。

さっさと本題入ろうぜ。こんな会話どうでも良いくせに。


俺 :なんね?今日はそんなことやないやろ?


中野:あー、まーこの時期だからね。何か聞いとらん?

ほらね、きたきた。


俺 :何かって何?


中野:またまたぁ~。知っとるやろ?

そら知っとるやろ。この時期お前はそれしかないやん。


俺 :知らんよ。こっちに情報が入るわけないやん。

   って言うか知っとっても話さんわい。


中野:あっそう。


俺 :それよりそっちが何かしっとるんやろ。

   話したくてうずうずしているくせに。


中野:何かね、織田がそっちに行くみたいよ。


俺 :またあ?

   お前もそんなこと言うのかよ。


中野:またってなんね?

    または、またくさ。


俺 :いやあ、なんとなく。


中野:本当かどうか分からんけどね。

    本当なわけないやろ。


俺 :まあね。


中野:いずれにしろ明後日までにはハッキリするやろ。

っていうか、そんな話とっくにハッキリしとるわい!


俺 :こっちは誰も動かないみたいだけどね。


中野:テリトリーとか関係ないみたいよ。


は?何のこと言ってるんだ?

テリトリーがない担当なんかおる訳無いやんか。


いや待てよ、今度からそういう役が出来るのかもしれん。

うん、確かにそういうのはあるかもしれん。

なにせ、激動の時代だからな。

かりにそんな役が出来たなら、織田より俺でしょ。




分かった、きっとあいつら俺がそうなるのを知っててわざとびっくりさせようと

遠まわしに言ってるんだな。







いわゆるあれだ・・・・・『サプライズ』だ。