*妄想話です

 

やんわり櫻葉の、小さな妄想です。

どうぞご自分の体調に合わせて、大丈夫そうでしたらお進みくださいね

 

 

 

 

 

 

ん… ここは… どこだ?

 

目の前には大勢の人、人、人。

少しざわざわとしながら みなこちらを注目している。

 

 

ライブ?

いや、違う。

うちわもペンライトもひとつも見えないし、大好物の「きゃー♡」も聞こえず。

客層もいつもと少し違う。

 

 

辺りを見回してみる。

駅? どうやらここは 大きな駅前のロータリーのようだ。

 

 

そして俺は、肩からたすきをかけて立っていた。

 

 

 『千葉15区 櫻井翔』

 

 

そっか、俺 立候補したんだっけ。

東京でも群馬でもなく、千葉から。

 

 

 

 

スタッフに促されるまま おそるおそる選挙カーの上に上がると。

意外にも既視感。

ライブでさんざん乗ってたフロートとかトロッコとかに似てるかも。

 

おかげで 少し冷静になれた。

 

 

この状況、おそらく俺は 有権者のみなさんに向けて演説をするために来てるんだろう。

なのに… 参ったな、ひとつも言葉が出てこない、頭は真っ白、カンペすら見当たらない。

こんなの、 一度『やる』と決めたら準備万端 全力で、を常々信条としている俺らしくないことこの上ない。

 

 

内心あわあわとしていたものの、そこは だてに長年アイドルやってきた訳じゃない。

右へ左へ手を振って、にこやかに余裕たっぷり"風"のスマイルを送りながら ひとまず この場をごまかしているうちに 漢·櫻井、ここはなんとか乗り切ってやる と俄然燃えてきた。

 

とはいえ、困った状況は少しも変わっていないわけで、はて どうしたものかと考えていると

 

 

「しょーちゃーーーーん!」

 

 

大きく手を振って こちらへぱたぱたと走ってくる赤いパーカ。

 

 

 

ああ、助かった。俺の守護天使。

 

みんなが固まって動けなくなってる時も、どんより淀んだ空気の時も、笑顔ひとつで吹き飛ばしてくれるのは、いつも彼。

 

 

マナブのロケからそのまま応援にきてくれたんだ。

えーじさんとさわべも ぐいぐい引っ張られて 所在なさげについてきてる。(相変わらず仲がよすぎるのが、ちょっとイラっとするが)

 

 

雅紀の笑顔を見て、すっといつも通りやれる自信がわいてきた。

雅紀がいてくれさえすれば、俺は何でもできる気がするんだ。

 

 

 

落ち着いてもう一度見渡すと、今までアウェイ感しか感じていなかった群衆の中にも 見知った顔をみつけることができた。

 

 

あそこでぶんぶん手を振ってくれているのは お義母さん。

顔や体形も似てるけど 手の振り方までそっくり。おかげで緊張していた口元が緩む。

お店忙しいのに来てくれたんだ。

 

 

その近くには… イナバサンご夫妻も見えた。

いいね、俺たちも あんな風にずっと一緒に支え合っていきたいよね。

 

 

ああ、いつもお世話になっている農家のみなさんも駆けつけてくれてる。

明日も朝早いのに 野菜を振っての応援、ほんと有難いね。

日頃から 雅紀がいい関係を作ってくれている賜物だな。

 

 

 

そうだった。

俺はこの人たちの笑顔を守るために ここに立っているんだ。

 

 

 

やがて、スタッフたちに『遅くなってごめんなさい、お待たせしましたー』なんてグータッチしながら雅紀が選挙カーに上がってくる。

 

だいこんを花束のように抱えて(全国生産量第2位)、誰もが思わずつられて微笑んでしまう 穏やかな笑顔で、俺の隣で控えめに手を振る。

 

それを確認した途端、言葉がふつふつと湧いてきた。

 

 

 

 

『皆様、本日はお忙しい中 お集まりいただき本当にありがとうございます ーーー

 


あ、あそこの柱の陰に 松本の潤氏もいるよ。

ふふふ、本人隠れてるつもりみたいだけど、サングラスにハットに眼鏡は逆に目立つし。

すっかりまわりを女性たちに囲まれてるし。

 

 

『この度 千葉15区から立候補させていただきました櫻井翔です ーーー

 

 

さとしくんとにのも発見。

ふたりとも 寝起きで出てきました、みたいなラフさ。もう寒いのにいつものサンダルだよ。

ブレないねー、にのなんて 洋服のCM出てるんじゃなかったっけ? スポンサーに怒られたりしないかね?

 

 

みんなが背中を押してくれてる。

嵐公認、て勝てる気しかしないじゃないか。

 

 

 

『わたくしが最初に ここ千葉の魅力を教えてもらったのは10年ほど前のことでした。

 

大好物の貝を焼き、

マリンスポーツを楽しみ、

遊んだ疲れを癒す 温泉もある、

水平線に沈む夕日、落とし穴から見る花火…

そんな どきどきするような初めてをくれたのが千葉の海でした。

 

それからというもの、

山に入ってたけのこを掘ったのも、

掘りたてを 皮のついたまま七輪で焼いて はふはふ食べたのも、

次の年の収穫を願って しいたけの菌を植え付けたのも 千葉の山でした。

 

そして四季折々の産物、

こくがあって大粒の落花生を、

元気がばりばり出るような自然薯を、

香り高い果汁たっぷり 瑞々しい梨を、

そして相葉雅紀を生んだのも(笑) この千葉の大地ですーーー

 

 

わーーーっと大拍手でわく聴衆。

 

そっと背中に置かれた 温かく心強い手。

目と目を合わせて、微笑み合う。 

 

 

 

『都市圏や東京にも 黄色い電車で通勤通学できる地便を持ちつつ、

豊かな恵みをもたらしてくれる この海を、山を、大地を、

 

『皆さまの、

『そして 俺の、俺たちの千葉を ---』

 

 

 

 

わたくし 櫻井翔に、

と 言いかけたところで

 

 

 さくらいさーん、打合せお願いしまーす、

 

 

無粋な 大きなノックの音で目が覚めた。

… うとうとしていたか。

 

 

そうだ、今日は選挙特番の仕事だった。

スタッフの声に 今行く、と慌てて応える。

 

 

 

 

 

まだ少しぼんやりしている頭を振って 幸せな夢の名残を振り落とす。

あたりを見回すと。

 

 

ただ がらんと大きな控室に

ひとりぼっちの俺。

 

 

 

 

 

 

 

* 選挙前に上げるつもりが、気づけば11月も半ば

(気持ちは十分にありつつ) 結成日もデビュー日もすっとばして(汗

通常営業 というには あんまりなインターバル、コロリンでございます

 

そもそも「俺たちの千葉」と言わせたい、それだけで考えた夢オチ妄想、

今までなら、ラスト 相葉さんがやさしく揺り起こして いってらっしゃい、とちゅーのひとつもして送り出すところでしたが…

今回は寂しがらせてやりましたよ。ふふふ。

 

*タイトルは小野小町の和歌からいただきました

  恋ひわびぬ(/思ひわび) しばしも寝ばや 夢のうちに

  見ゆれば逢ひぬ 見ねば忘れぬ

あの人が心から片時も離れない、想い疲れてまどろんだ 夢の中にも現れて 逢えれば嬉しいし、現れなければ そのひと時だけは忘れられる、というような意味でしょうか。

『夢にまで出てこなければ 忘れられるのに』というような訳を見て、切ねーなー(泣)と心に残りました

 

好きだから夢でも見ていたい、でも手の届かない人をずっと想っているのは時に寂しく苦しかったりする。1000年以上も昔の大歌人に共感。

 

* V6のお兄さん方…今までずっと6人で楽しませてくれてありがとうございました。

 

わたくしごときは なんも言えねーですが。

勤続20年くらいって いろいろ考えてしまう時期なのだろうなぁ、なんて思うようになりました。

定年まで勤めあげる人、その中で上を目指す人、独立する人、転職する人… 私たちのような会社員ですらそうなのだから

少し前まで 20年も、おじさんと自虐するような年齢まで 同じグループで活動する前例がなかった 人気商売アイドルグループ、

今 安定しているように見えても、先のことを思うと不安になったり 動かなければ変わらなければ、と思ったりすることも多いかもしれない。

 

だからこそ、一旦立ち止まって5人で考えてみることを選んだ嵐さんたちには、

もう一度一緒に歩き出すやり方を模索して欲しいと心から願ってます。

5人の姿が見たいよ。 こっちは応援する準備、できてっぞ!