#19(1St-ND4ルート【極限脱出9時間9人9の扉】-[ニルス捜索後②]

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※20170722投稿分

#19(1St-4ルート【極限脱出9時間9人9の扉】-[ニルス捜索後②]

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――前回の999。

 

ニルスはいなかった。

更にニルスを探すには、淳平たちがいる大病室のナンバリングドアを進む他なかった。

だが……それには『一宮を犠牲』にしなくてはならなかった――。

 

 

 

 

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※Spoiler warning※

#19-Novel modes- [C_Deck]

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■Cデッキ-[大病室]

C_Deck_Large hospital room

 

 

 

 

【八代】ねえ、ちょっとみんな、なにしてるのよ

 

やはり沈黙を破ったのは八代だった。

 

その言葉を合図に、セブン、サンタ、四葉が動き始めようとする。

――一宮の答えを言い聞かせるように。

 

 

【紫】ちょ、ちょっとまってください、みんな!

落ち着いて考えましょう!

 

 

紫が再び慌て始めます。

 

そりゃそうだ。(1)の数字に関しては仕方ないけど。

四葉はニルスを探すみたいだし、八代はこのまま脱出しそうだし、サンタとセブンは流されそうだし……みんなバラバラだ。

 

 

 

 

【紫】全員で脱出できる方法が必ずあるはずです!

ねえ、そうでしょ淳平くん何とか言ってくださいよ!

【淳平】あ、ああ、そうだな、考えよう……。何か方法を……。

【紫】もう! だったらいいです! 私がなんとかします!

 

 

ああ、淳平くんが情けない……。

淳平が小学校時代どんな少年だったのか、紫の前ではどんな風に振舞っていたのかはまだわかりませんが。

紫に関しては、頑固な不思議ちゃん、ってところでしょうか。

 

淳平はこの不思議ちゃんと一緒に小学校生活を送っていたわけですが、大階段ですぐに紫だと気がつかなかったのと、大学生という年齢上、性格は小学生の頃と変わっているのかもしれません。

 

でも。この船内にいる全員と敵対して孤立する訳にはいかないので、淳平にとっての立ち回り方は、この情けなさが丁度良いのかもしれません。

 

 

 

 

【紫】一宮さん! ほら立ってください! 

あきらめるのはまだ早いですよ!

 

 

一宮に駆け寄る。

諦めモードに突入したのか、心を落ち着けているのか、顔色が悪い一宮の腕を引っ張り起こそうとする紫ですが――。

 

 

【一宮】うっ……

 

 

 

 

 

何故か、一宮が短い言葉を発して前のめりに倒れる。

なんか……様子が……????

 

 

 

 

 

【紫】ねえ、どうしたんですか、一宮さん!

しっかりしてください!!

 

 

激しく一宮の肩を揺さぶって起こす紫。

 

 

【一宮】大丈夫だ……。――これだよ……

 

 

目を開いた一宮は弱弱しく声を発するが、左手に握り締めていたものを紫に見せる。

 

 

 

 

既に液体が抜き取られてるバイアルと注射器。

バイアルの中に入っていたのは薬品だと思われる。

 

その小瓶の表記には【Mandrain-β】と書かれ、淳平にはその読み方が分からなかった。

 

 

【紫】Mandraine-β……? なんですか、これは……

 

 

 流石、雑学ちゃんの紫が【Mandrain-β】を【マンドレイン-ベータ】と、読み上げる。

マンドレイン…? あの毒ナスのマンドレイクですか?

 

 マンドレイクは実際にある植物で、古くは麻酔薬とか鎮痛剤の薬草として使っていたり、戦時中にはモルヒネの代用品として使用されていましたけど、現在では毒性があんまりにも強くて、薬としては中止された植物……だよね?

 

RPGゲームなんかでは、根菜の姿で地面に埋まっていたり、二本足で夜中にであるいて、エンカウントすると悲鳴と毒でフルボッコにされてしまう、あの嫌なモンスターですね。

 

なんで、そんなものがここに……?

 

ベータってことは試験薬とか発展版とか……?

 

 

 

【紫】これを……打ったんですか?

【一宮】ああ……。ただの……麻酔薬だよ……。心配には及ばん……。

 

 

は? 薬品を打った? 

ニルスの捜索中に? 

いやいや、部屋で見つけたからって打ちます?

 

紫の行動を封じるのに自ら打ったみたいですけど、麻酔薬って断言しているし……一宮って薬品や医師の知識か免許でもあるのか?

 

 

んー。この船は病院船『ギガント』を大改造しているが、例え本物であってもレプリカであっても、ゼロの配置するギミックの中にはそういった新旧の知識が必要なものが散りばめられている。

 

実際、プレイヤーたちがそういった個々の知識から都市伝説まで利用してここまで来ているし、淳平が大学生のように、他のプレイヤーも個々に職業があり、日々の生活や過去にその知識を得て今回使用しただけなのかもしれない。

 

そうすると、何らかの知識や資格がある一宮がこれまた過去の遺物か現代品か訳の分からない小瓶を見つけて『物資難の戦時中には、モルヒネの代用品としてマンドレイクを薬草に使っていたのだよ、淳平くん』みたいに、使用した――――のか?ゼロの罠かもしれないのに?

 

 

 

と、いう訳で……一宮が就寝。

生きています。

本当に【Mandraine-β】は麻酔薬なんだな――――。

 

では次回につづく。

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